宣教学
神学部
THE51020
コース情報
担当教員: 原 敬子
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 火3
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
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詳細情報
概要
■「(第二バチカン公会議において)もはや宣教は教会のひとつの活動ではなく,教会の存在そのものを表すようになった」(デイヴィッド・ボッシュ著『宣教のパラダイム転換(下)』より)。ボッシュのこの言葉は非常に意義深い。キリスト教二千年の歴史において,宣教のダイナミズムが時代によって変化してきた全体を一言で描写している。本講義は,ボッシュの呈示するこの一言を映画を通して理解することを目指している。 ■ボッシュのいう「パラダイム転換」とは,未来に向かって「パラダイムを転換する」という能動的な行為を示すのではなく,すでに転換した「パラダイムを認識する」という受動的な行為である。キリスト教の長い歴史を振り返ると,パラダイムが転換した時期が確かに存在したことがわかる。では,変動の激しい現代にあって,私たちは,どのようにして今,転換しつつあるパラダイムを知ることができるのだろうか。映画における効用の一つは,歴史を再解釈しつつクリエイトする映画監督の技術を学ぶことにある。五感の活用を通してパラダイム転換を探究する助けとなる。 ■人間が自分自身を知るために,生きた経験を自分で内省するという方法があるが,キリスト教がキリスト教自身を知るためにも同じ方法が必要である。自己定位を明確にし,自らの在りようを内からの反省と言語化によってみていかなければならない。批判的な精神で自らを省みるシステムがなければ,本来与えられた使命は形骸化し,刷新されることもないであろう。映画を観るという作業は歴史の再解釈と自分自身への向き合い方についても一つの示唆を与えてくれるであろう。キリスト教ミッションの全体像を把握したいという方,さらには,単なる映画好きという方にもわかりやすく解説をほどこしていきたいと考えている。
目標
■教会が,主体として,自らの存在意義を探究し,他者に対して自己を開示してきた宣教の歴史を把握する。ミッションが,主体的に,教会自らを語る語法であるという全体像を理解した上で,現代,第二バチカン公会議以降のミッシオ・デイとしての宣教/ミッションを受講者がどのようにして創造的に生きることができるかを探究する。 ■ある意味で「ミッション」とは教会が自らの存在意味を明示するための神学的語法とも言えよう。宣教という語が意味する範疇を知り,それらを統合的に神学の活動として内面化していくことは,《神学の勉強をする》から《神学する》という態度への転換を図ることでもある。「ミッション」という語が包括する人びとの生活経験におけるダイナミックな側面に注目するため,本講義を実践基礎神学の入門編として位置づけていきたい。
授業外の学習
■授業内で毎回テーマごとに参考資料を配布するので,その資料を読み,課題として与えた質問を考察する。
所要時間: 予習・復習190分以上
スケジュール
- 導入(講義の進め方):ユダヤーキリスト教と映画『天地創造』(ジョン・ヒューストン監督)
- 新約聖書1:イエスという人間:『ベン・ハー』(Ben-Hur)ウィリアム・ワイラー監督
- 新約聖書2:イエスという物語:『パッション』メル・ギブソン監督
- 新約聖書3:パウロにおける宣教:『パウロ』アンドリュ・ハイアット監督
- 宣教の歴史的パラダイム1(中世):『薔薇の名前』ジャン=ジャック・アノー監督
- 宣教の歴史的パラダイム2(中世):『ブラザー・サン シスター・ムーン』フランコ・ゼフィレッリ監督(『フランチェスコ』リリアナ・カヴァーニ監督)
- 宣教の歴史的パラダイム3(中世後期):『ジャンヌ・ダルク』(リュック・ベンソン監督)
- 宣教の歴史的パラダイム4(大航海時代1):『アジアの瞳』(ジョアォン・マリオ・グリロ監督)
- 宣教の歴史的パラダイム5(大航海時代2):『ミッション』(ローランド・ジョフィ監督)
- 現代とキリスト教1(社会,生命倫理):『オール・アバウト・マイ・マザー』(ペドロ・アルモドバル監督)
- 現代とキリスト教2(霊性):『大いなる沈黙」(フィリップ・グレーニング監督,ドキュメンタリー)
- 現代とキリスト教3(教会):『聖なる犯罪者』(ヤン・コマサ監督)
- 現代とキリスト教4(信仰):『サイレンス』(マーティン・スコセッシ監督)
- ディスカッション:キリスト教映画・ミッションの過去,現在,未来,まとめ
教科書
講義内でMoodleを使って配布する。
参考書
講義内で文献表をMoodleを使って配布する。
『宣教のパラダイム転換』(上・下)
著者: デイヴィッド・ボッシュ
出版社: 新教出版社・2001