キリスト教と音楽芸術I
神学部
THE50250
コース情報
担当教員: 森 裕子
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 火3
形式: 対面授業
レベル: 200
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
リアクションペーパー
レポート
その他
出席を毎回確認する。欠席が4回を超える場合には,原則として成績評価の対象となりません。
詳細情報
概要
この授業では,バロック音楽の巨匠として知られる,ヨハン・セバスチャン・バッハの音楽を通して,キリスト教と音楽の深い関わりを考察します。バッハは,「福音の生きた声 viva vox evangelii 」 にこころの耳を傾けるルター派の伝統に深く根ざして生きた音楽家であり,聖書に基づく宗教曲の傑作を多数,作曲しました。この授業では,最初にバッハの生涯にわたる音楽活動が,ルター派の伝統の中に深く根ざしていることを確認した後,バッハの『マタイ受難曲』,すなわちマタイ福音書に基づくイエスの受難物語の音楽を,その全曲にわたって,聖書の観点と音楽の観点から,分析的に聴くことになります。こうしてバッハがマタイ福音書の記すイエスの受難をどのように理解していたか,それをどのように音楽的に表現し,聴衆にどのように聞いてもらいたいと考えたかについて考察することを試みます。講義の中では,必要に応じて,聖書の基礎知識,また聖書とキリスト教の伝統に基づくイエス論,さらにはルター派教会の音楽伝統,受難曲の歴史などについても,その都度,説明していきます。
目標
この講義においては最初に,カンタータと呼ばれる,オーケストラ付き宗教声楽曲を2曲聴いた後,『マタイ受難曲』を,毎回少しずつ,そして最終的には全曲を聴くことになりますが,その鑑賞に際しては,BGM としてではなく,こころの耳を澄ませて真剣に聴くことが求められます。こうしてバッハの音楽が招くままに,言葉の内容,受難物語を味わう経験をしていただきたいと考えています。この授業は,こうした音楽聴の経験を提供することで,受講者各自が,音楽による信仰表現について考察する糸口をつかむことを目指しています。
授業外の学習
二回に一度,二回分の授業について,その内容をまとめ,またその内容に基づいて受講生が考察したことを書いて,Moodleに提出していただきます。したがって,毎回,授業内容を復習しておく必要があります。
所要時間: 190分
スケジュール
- 導入:マルティン・ルターの宗教改革における音楽の位置 ルター派教会のコラールについて
- バッハの歴史上の位置 ルターの時代からバッハの時代につながるルター派音楽の伝統
- バッハの言う『整った教会音楽』についての考察 バッハ作曲カンタータ147番『こころと口と行いと生き方がイエス・キリストの証しとなるように』
- バッハの時代のライプツィヒで行われた主要礼拝の流れ バッハ作曲カンタータ80番『私たちの神は堅固な砦』①その元になったルターのコラール
- バッハ作曲カンタータ80番『私たちの神は堅固な砦』②バッハの音楽に見られるバッハの信仰
- バッハ『マタイ受難曲』への導入 イエスの受難の物語,受難曲というジャンルの歴史
- バッハの『マタイ受難曲』の全体的構成と特徴
- 以下,『マタイ受難曲』の各部分についての,聖書的背景とバッハの音楽表現 『マタイ受難曲』第一部①:最後の晩餐の場面
- 『マタイ受難曲』 第一部②:イエスが逮捕されるまでの出来事
- 『マタイ受難曲』 第二部①:ペトロとユダ
- 『マタイ受難曲』 第二部②:イエスの十字架刑判決
- 『マタイ受難曲』 第二部③:ゴルゴタ,イエスの死
- 『マタイ受難曲』 第二部④:イエスの死後の出来事
- バッハにおける,ルター的遺産と啓蒙主義思想の間の葛藤
教科書
毎回,担当教員が用意するプリントを配布します。その他,授業の流れの中で必要に応じて,参考文献を紹介します。
参考書
聖書
マタイ受難曲
著者: 礒山雅
出版社: ちくま学芸文庫,2019年
最後のイエス
著者: 佐藤研
出版社: ぷねうま舎,2012年