<理工共通>量子物理化学
理工学部 - 物質生命理工学科
SCT64900
コース情報
担当教員: 星野 正光
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 月4
形式: 対面授業
レベル: 200
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
リアクションペーパー
定期試験
定期試験期間中
中間試験
授業期間中
小テスト等
その他
ここで「小テスト等」は講義中,または宿題として行われる演習を指す。出席状況,毎回行うリアクションペーパー,小テスト(演習課題)の提出状況と解答内容,中間・期末試験の結果で総合的に評価する。なお,正当な理由なく,1)講義に4回以上欠席した場合,2)中間試験・期末試験のどちらか,あるいは両方を受験しない場合には不合格となる。また,講義に出席しても演習問題やリアクションペーパーが白紙,または内容が不十分な場合にも欠席とする場合がある。詳細は初回講義でアナウンスする。
詳細情報
概要
近年,我々の自然界を構成する物質世界や物質間どうしの相互作用や化学反応のメカニズムの探索・研究が原子・分子レベルで可能となり,原子・分子1個を対象としたミクロな視点を養うことが必要とされている。しかし,目で見ることのできない原子・分子が関わるミクロな世界には我々の常識(古典的な考え方)が通用せず,量子論的な考え方が必要不可欠である。そこで本講義では,将来的に化学反応や物質科学を理解する上で最も重要かつ基本的な水素原子と簡単な分子を対象として,波動関数,エネルギー状態,分子結合といったミクロな世界の性質を量子論的・分子論的アプローチから理解することを目的とする。特に本講義では,前半で量子物理化学の基本的な説明(波動関数,シュレーディンガー方程式の解き方,水素原子の性質,多原子分子の考え方など)から専門用語に慣れ,後半では「定性的分子軌道法」と呼ばれる直感的に紙と筆記用具を使っておおよその分子の形状やその性質を説明する考え方を学ぶ。複数回の演習問題やリアクションペーパー等を通じて,暗記ではなく「使える」科学的な考え方を学ぶ。 本講義科目は,理工学部カリキュラム・ポリシー1において,科学・技術の諸問題を物理学・化学・数学を用いて原子・分子のミクロな視点から解決する能力を習得することを目指す。また本講義科目では,与えられた結果のみを暗記するのではなく,数式を用いて根本的な考え方から理解することも目的の一つとしており,基本的な数学の知識(行列,三角関数,微分積分,複素関数等)を必要とする。履修希望者の分野は問わないが,科目ナンバリングPHY200台であることを踏まえ,基礎物理学・基礎化学を理解し,現代物理の基礎,原子分子科学,物理化学,量子力学等の物理系や化学系の関連科目を履修済み(あるいは履修中,履修予定)であることが望ましい。 本講義は原則対面の講義形式で実施される。ただし,講義資料の配布,および演習問題の課題提出の一部はMoodleを使って行う予定である。Moodleの登録キーに関する情報は,初回授業の1週間前までにLoyola「授業掲示」に掲出する。
目標
本講義科目は,理工学部ディプロマ・ポリシーおよび物質生命理工学科ディプロマ・ポリシー2・3に関連して,多様化する現代社会の抱える科学・技術の諸問題を原子・分子のミクロな視点から眺め,応用・解決する能力の習得を主な目的とする。具体的には, 1)物質を構成する原子や分子の性質を理解する上で最も重要な「シュレーディンガー方程式」や「波動関数」,「エネルギー固有値」といった専門的な言葉の意味とその使い方に慣れ,それらの意味や使い方を通じて目には見えない原子・分子の電子状態と分子結合の組み立て方を理解し,ミクロな視点から自然科学の基本的な考え方を養うことを目指す。 2)基本的な数学(行列,三角関数,微分積分,複素関数など)を使い,量子化学における基本理念を暗記ではなく数学的な厳密さも合わせて学び,その意味をきちんと理解することで,今後,物質科学や化学反応を取り扱う上で最も重要な原子・分子の電子状態,化学結合のメカニズム,およびその実験方法に関する基礎を理解する。
授業外の学習
本講義では,基礎科目の内容の復習に加え,多くの学生にとって初めて触れる概念が多く含まれるため,事前配布の講義資料の予習が不可欠である。また,講義内容に関する理解を深めるために演習問題やリアクションペーパーが毎回出題される。演習問題やリアクションペーパーの内容は,以降の講義や中間試験・期末試験の出題内容にも関わる重要な問題や考え方を含むので,次回の講義までに必ず理解しておくこと。 【予習】 事前にMoodle上から配布された講義資料に目を通し穴埋め箇所の予想し,新たな専門用語や基礎科目で扱った関連内容については,事前に参考図書等で調べておく(70分/回)。 【復習】 講義終了後は,授業中に提示された演習問題やリアクションペーパーに解答し,講義中に理解できなかった内容や追加で説明された補足事項などについても自分で調べて,Moodle上からアップロードして提出する(120分/回)。 また,中間試験・期末試験それぞれの前後についても,試験準備と問題の解き直しに対して同等の時間を要する。
所要時間: 190分
スケジュール
- ガイダンス・序論:講義の実施方法のガイダンスに加え,本科目の意義,古典論と量子論の考え方の違い等について講義形式で説明する ※Moodleを講義資料配布やリアクションペーパー・演習課題提出で利用するので,必ず講義開始前までにIDと PWを取得すること ※以下のスケジュールは予定であり,進捗状況や理解度に応じて変更の可能性がある
- シュレーディンガー方程式と波動関数(1):シュレーディンガー方程式の導出過程,波動関数の意味
- シュレーディンガー方程式と波動関数(2):井戸型ポテンシャル問題(1次元,2次元)の解き方とその解の意味
- シュレーディンガー方程式と波動関数(3):井戸型ポテンシャル問題(3次元)の解き方とその解の意味
- シュレーディンガー方程式と波動関数(4):水素原子への拡張
- シュレーディンガー方程式と波動関数(5):多電子原子への拡張と近似法
- シュレーディンガー方程式と波動関数(6):分子への拡張
- 中間試験(前半7週間で扱った内容) ※具体的な実施方法・実施内容については講義時間中にアナウンスする
- 分子軌道(1):水素分子イオンと定性的分子軌道の組み立て方
- 分子軌道(2):等核2原子分子の分子軌道の考え方
- 分子軌道(3):異核2原子分子の分子軌道の考え方
- 分子軌道(4):原子価結合法を用いた3原子分子AH2の分子軌道についての定性的理解とウォルシュダイアグラムを使った結合角の考え方
- 分子軌道(5):sp混成軌道とその基本的な考え方と分子軌道の組み立て
- 分子軌道(6):実験的に原子・分子のエネルギー準位や分子軌道を観測する手法である光電子分光実験の解説と量子物理化学についての総括
教科書
本講義科目は,特定の教科書は指定せず,書店等で数多く出版された「量子化学」・「量子力学」に関する一般的な内容を網羅的に扱う。参考図書によって大きく内容は異ならないことから,自分にあったテキストを選んで読むことでより理解が深められると思われる。必要な参考図書については,第1回の講義でも適宜紹介する予定である。
参考書
量子化学(基礎からのアプローチ)
著者: 真船文隆
出版社: 化学同人・2008年
(化学入門コース6)量子化学
著者: 大野公一
出版社: 岩波書店・1996年
量子化学の基礎
著者: 類家正稔
出版社: 東京電機大学出版局・2012年