キリスト教教育ゼミナールI

博士前期課程神学研究科

MTTH7482

コース情報

担当教員: 原 敬子

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 木3

形式: 対面授業

レベル: 500

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

14%

リアクションペーパー

42%

レポート

44%

その他

出席を毎回確認する。欠席が4回を超えた場合には,原則として成績評価の対象としない。成績は期末レポート,リアクションペーパー,授業態度などによって総合的に評価する。 本科目の到達目標は,宗教リテラシーと神学的実践を理解し,授業内容や関連する先行研究に基づいて宗教や宗教性に関する議論を自身の力で組み立てることができるようになることである。本科目の課題については,一人一人の人間経験に訴える問いであるため,生成 AI を利用して作成した場合その目標は達成できない。したがって,リアクションペーパー,最終レポ ートのいずれにおいても利用は一切禁止する。 自らの経験から生み出される「言葉」を大切にしてほしい。もし,どうしてもChatGPTや生成AIが考察する「宗教性」が気になるようであれば,一度そこにかけて,それへの批判的考察を行うこと。

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詳細情報

概要

「信教の自由」(憲法20.1)は保障されているとはいえ,日本の学校教育においては,宗教教育が大きな議論の場に上がったことはかつてない。教育基本法第15条において「宗教に関する寛容の態度,宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は,教育上尊重されなければならない」とはいえ,その2項では「国及び地方公共団体が設置する学校は,特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」と介入の余地はない語り口になっている。 しかし,令和4年の安倍元首相銃撃事件(旧統一教会問題)以来,宗教リテラシーの必要性,宗教をもっと知るべきだという声は次第に高まっており,その理論と方法を学びたいとする学校教育に関わる教員の意識も変化をしている。さまざまな宗派の宗教系,キリスト教系私立学校の教員と公立学校の教員がともに学び合える土壌の創生は不可能だろうか。 本授業では,非信仰者にとっては「宗教リテラシー」,信仰者にとっては各宗派における「神学的実践 theological praxis」とも呼ぶべき思考実験の場を設定し,必要な文献の読解を繰り返しながらディスカッションを行う。このプロセスによって受講者自身が自らの現場においていかにして宗教的実践知を深化させ,他者とともに宗教的情操に根ざした共同体づくりが行えるかを考察できるようにしていく。

目標

到達目標は,各自の研究分野において必要なレベルに応じて次の段階を目安とする: A)「宗教とは何か」という問いを歴史的,地理的に知る→対話 B)「宗教とは何か」という問いを自分を取り巻く地域と合わせて知る→対話 C)「宗教とは何か」という問いを内なる超越的観念から探究する→対話 D)内なる超越的観念の探究と「信」の次元との関わりを考察する→対話 E)「信」の次元と参与(責任)の問題を論じる→対話 どの段階においても「→対話」が可能かどうかによって到達レベルの確認が可能である。受講生にとって「→対話」が可能かどうかは各自判断して欲しい。 本授業の到達目標は,上記A)〜E)の段階があるということを各自認識することである。このような認識の上で宗教に公共性の議論を行うことができるようになることが憂業の到達目標である。 なお,A)〜E)の段階目安は現在探究中の目安なので今後変わる可能性はある。

授業外の学習

1)授業で用いるテキストを前もってMoodleに上げるので,必ず読んでくること。そして,授業の後は,読解→講義→ディスカッションを振り返り,自らの意見をリアクション・ペーパーにまとめること。このサイクルを繰り返していく。 2)最後に提出するレポート作成は第一回の授業にて説明するが,授業内での発表→ディスカッション後,さらに考察し,最終レポートとして提出いただく。宗教リテラシーと神学的実践のアクティブラーニングを入れ込んだレポート作成となる。

所要時間: 予習・復習に190分以上

スケジュール

  1. はじめに,オリエンテーション ー宗教リテラシーと神学的実践のフィールド設定 ー最終レポート作成に向けた授業展開の説明
  2. 公共圏とは何か ーハーバーマスの公共性の構造転換
  3. 公共圏と宗教 ー磯前順一の公共圏なき公共宗教論
  4. 公共圏とキリスト教 ー中川明の「異人/妖怪」
  5. 第16回シノドスにおけるシノダリティ① ー「信仰の感覚」
  6. 第16回シノドスにおけるシノダリティ② ー「シノダリティとは何か」
  7. 第16回シノドスにおけるシノダリティ③ ー2021-2024全会期を通して行われた司牧的展開と神学理解
  8. フィールド発表会① ー発表とディスカッション
  9. フィールド発表会② ー発表とディスカッション
  10. フィールド発表会③ ー発表とディスカッション
  11. 宗教リテラシーと神学的実践① ージェイムズ後の「宗教的経験」
  12. 宗教リテラシーと神学的実践② ーコンガール後の「聖霊の神学」
  13. 宗教リテラシーと神学的実践③ ー宗教心理学と神学との現代的出会い
  14. まとめ,ディスカッション

教科書

授業で使用するテキストはほとんどMoodleにPDFをあげる予定。宗教や祈りに関する文献表はこちらの添付を参考にすること。

  • 『〔第二版〕公共性の構造転換ー市民社会の一カテゴリーについての探究』(1990年)

    著者: ユルゲン・ハーバーマス著/細谷貞雄,山田正行訳

    出版社: 未来社,1994年

  • 『公共宗教論から謎めいた他者論へ』

    著者: 磯前順一

    出版社: 春秋社,2022年

  • 『妖怪の棲む教会ーナイスを越え教会の明日を求めて』

    著者: 中川明

    出版社: 夢窓庵,2002年

参考書

カトリック中央協議会のHP内【第16回シノドス】に関する文書↓ https://www.cbcj.catholic.jp/catholic/holyyear/synod2023/

  • 『神を考えるー現代神学入門』(1990年

    著者: D・ゼレ著/三鼓秋子訳

    出版社: 新教出版社,1996年

  • 『内面への旅ー宗教的経験について』(1975年)

    著者: D・ゼレ著/堀光男訳

    出版社: 新教出版社,1983年

  • 『実践する神秘主義ー普通の人たちに贈る小さな本』(1915年)

    著者: イヴリン・アンダーヒル著/金子麻里訳

    出版社: 新教出版社,2015年

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