現代哲学研究I
博士前期課程文学研究科 - 哲学専攻
MPPH7410
コース情報
担当教員: 長町 裕司
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 火3
形式: 対面授業
レベル: 500
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
レポート
その他
毎回,当該のテキスト範囲を担当するレポーター(ReferentIn)と共に,前回のディスカッションを通じての中心諸ポイントをまとめて次回のゼミナールの最初に提示する報告者(ProtokollantIn)を決める。この担当も含め,授業参加度を評価に加える。テクストは,ドイツ語原典からのものと邦訳を授業開始時にコピーしてゼミナール参加者に配布する。
詳細情報
概要
この文献研究(ゼミナール)では,マルティン・ハイデガー(1889 - 1976)の膨大な講義録及び生前未公刊だった論考も含めその全集版から精選したテキストを,毎年,読解・解釈・論議し究明することを目指す。ここ数年度は,20世紀を通じて今日に至るまで,哲学と神学のみならず,人文諸科学や心理学・精神医学に多大なる影響を及ぼしたハイデガーの(根元的な次元で)〈現象学的〉思惟の展開を,ハイデガーの講義録を中心に研究し,20世紀後半以降の現象学の流れからの哲学的問題設定への展望をも探求してきた。 テーマとしては,1) 〈時間〉理解の現象学上の進展 2) 現象学と形而上学 3) ドイツ観念論の遺産の現象学的解体と再構築 4) ハイデガーの現象学的思惟と《神》への問い 5) ニーチェの遠近法的思惟と現出論的真理 6) 中期から後期へのハイデガーの思索圏,と順次進展してゼミナーのためのテキストを指定する。テキストの原典講読を中心とするので,ドイツ語の知識と理解が大いに役立つが,『ハイデガー全集(全 102巻,創文社刊行)』のすぐれた邦訳もあるので,広く現代哲学に関心を有する(他研究科や他大学の)大学院生の参加も含めて,大いに議論できる授業内容としたい。 2024度は春・秋学期共に上記 6) の思索的問題圏域に焦点化して,1930年代から後期思索圏(第二次世界大戦後の1950年代後半以降)へと大きな変転を遂げるハイデガーの存在の思惟の歩みを追究してゆくことにする。この春学期には 最初にフライブルク大学での1929 / 30年冬学期講義 Die Grundbegriffe der Metaphysik, Welt - Endlichkeit - Einsamkeit【形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限性 - 孤独】 ( GA 29/30)より Vorbetrachtung(予備考察)の部分を取り上げて考究し,ハイデガー中期の思索を準備するいわゆる〈形而上学(への省察)期〉における哲学的境地を問題化しておくことにしたい。その上で,フライブルク大学退職後のハイデガーが同大学にて1951 / 52年冬学期と1952年夏学期に行った二部から成る特別講義 Was heisst Denken ?【何が思惟を命じるのか?=思惟とは何の謂いか?】(GA 8)をじっくりと吟味し,後期ハイデガーにおいて開顕する思索のあり方を共同で探求してゆくことにする。
目標
・ハイデガーの哲学的思索の根本問題と現象学的思惟の方途(その遂行のあり方)へ の覚醒・啓発・体得を目指す。 ・テキストの厳密な理解と解釈を通して,ゼミナール参加者各自が創造的に参与し, 自らの哲学的思惟の発展にとって糧となるよう錬成を積むことが求められる。 ・西洋の哲学史全体,特に形而上学の歴史に対するハイデガーの思惟と現象学の挑戦 的意義を吟味し,今日的な精神状況の中で〈思惟に習熟すること〉を開拓できるよ うにする。 ・ゼミナール参加者相互が徹底さもって議論・論争し,各自の専門分野との関連を活 性化できるよう,日本語で論理性と明確な主張内容をもった言語表現力を養う。 ・二次文献の活用の仕方,欧米文献による研究状況についても見識を養う。
授業外の学習
毎回のゼミナールで扱うテキスト箇所の読解と問題点を準備して授業に臨むことが要求される。ハイデガーの諸講義は,初心者にもよく理解できるように,丁寧に「現象学の遂行」へと導いてゆくが,同時に通常の論理性では歯が立たない深遠な思惟の根本問題へと通じてゆくので,ゼミナール参加者各自がテキストと真剣に向き合って格闘する態度が大切となる。
所要時間: 復習に65分,予習に125分を目安とする。内容については授業時に指示する。
スケジュール
- 導入部 : ハイデガー,その後期へ思索圏への道 ― 授業の進め方,学期末レポートについて/ テクスト 『形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限製 - 孤独』〈予備考察部〉の講読 (1)
- テクスト 『形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限製 - 孤独』〈予備考察部〉の講読 (2)
- テクスト 『形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限製 - 孤独』〈予備考察部〉の講読 (3)
- テクスト 『形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限製 - 孤独』〈予備考察部〉の講読 (4)
- テクスト 『形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限製 - 孤独』〈予備考察部〉の講読 (5)
- テクスト 『形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限製 - 孤独』〈予備考察部〉の講読 (6)
- テクスト 『形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限製 - 孤独』〈予備考察部〉の講読 (7)
- テクスト 『形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限製 - 孤独』〈予備考察部〉の講読 (8)
- テクスト 『思惟とは何の謂いか』1951 ~1952年 冬学期講義の講読 (1)
- テクスト 『思惟とは何の謂いか』1951 ~1952年 冬学期講義の講読 (2)
- テクスト 『思惟とは何の謂いか』1951 ~1952年 冬学期講義の講読 (3)
- テクスト 『思惟とは何の謂いか』1951 ~1952年 冬学期講義の講読 (4)
- テクスト 『思惟とは何の謂いか』1951 ~1952年 冬学期講義の講読 (5)
- テクスト 『思惟とは何の謂いか』1951 ~1952年 冬学期講義の講読 (6)
- 月中旬以降に授業で提示された課題について,参考文献を読んで,レポートを提出を準備する(ゼミナールの総括と学期末課題レポートの確認)。
教科書
ハイデガーの(所謂)形而上学期から中期を経ての後期思索圏への歩みを顕著に呈示する諸講義からのテクストを本年度は精選した。この春学期には,ハイデガーが哲学の自己理解から思惟の根本動性をどのように思索し直しているかに焦点化している。
『形而上学の根本諸概念 : 世界 - 有限製 - 孤独』(フライブルク大学正教授時代講義1929 / 30年冬学期,GA 29/30) [Die Grundbegriffe der Metaphysik. Welt - Endlichkeit - Einsamkeit(Wintersemester 1929 / 30, hrsg. von F. W. von Hermann), Vittorio Klostermann Vrlag, 1983 / 1992 ]
著者: マルティン・ハイデガー(著) /川原 栄峰・セヴェリン・ミュラー(訳)
出版社: 創文社,1998年6月
『思惟とは何の謂いか』(1951 / 52年冬学期,1952年夏学期 特別講義, GA 8)
著者: マルティン・ハイデガー(著) /(訳)
出版社: 創文社 1997年7月
Was heisst Denken ? ( Einzelausgabe )
著者: Martin Heidegger
出版社: Max Niemeyer Verlag, Tübingen 1997
参考書
以下は,本年度春学期のゼミナールに関連して推挙できる近年の文献からの例示である。
『解体と遡行: ハイデガーと形而上学の歴史』
著者: 村井 則夫(著)
出版社: 知泉書館,2014年11月
Heideggers Wege. Studien zum Spätwerk
著者: Hans - Georg Gadamer
出版社: Verlag Mohr Siebeck GmbH & Co. K, 1991 / 1996
RE-INTERPRETATION, HEIDEGGERS ' Was heisst Denken' ― Das Wiedergewonne Mysterium der Logik
著者: Christos Voudouris
出版社: Independently published, 1/2024