近代哲学文献研究V

博士前期課程文学研究科 - 哲学専攻

MPPH7350

コース情報

担当教員: 川口 茂雄

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 月3

形式: 対面授業

レベル: 500

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

25%

授業参加

75%

詳細情報

概要

Paul Ricoeur「Préface à Bultmann」を読む。 ポール・リクールの『Le conflit des interprétations』(1969年)に収録された論稿「Préface à Bultmann」(初出1968年)を読む。『Le conflit...』は全体としては未邦訳である。 この「ブルトマンへの序文」は,20世紀ドイツの代表的プロテスタント神学者の一人である,ルドルフ・ブルトマンの主要著作のフランス語訳書に寄せる序文として書かれたものである。 リクールはここで,ブルトマンのいわゆる「非神話化」の仕事への皮相な誤解をしりぞけ,その射程(と限界)を適確に紹介することを試みている。そうしたことから,一見,もっぱら神学・聖書学の論稿であるようにも見える。しかし内実においては,この「序文」は,フッサールの現象学,ハイデガーの解釈学・存在論についてのリクールの理解をかなり踏み込んで表現しており,「解釈学」とはどのような哲学的スタンスであるのかを知るためのいわば格好の入門的文章にもなっている。 リクールの思想の展開・時期区分という面で言えば,1960~65年頃のやや方法論的に曖昧であった「象徴の解釈学」路線を放棄して,以後のリクール哲学を印づける「テクストの解釈学」という方向性が確立されたことを燦然と示す論文の一つがこの「ブルトマンへの序文」だという側面もある。「著者の意図」ではなく「テクストの客観性〔対象性〕」に依拠する,リクール解釈学の基本的なスタンス――これは歴史学や芸術学etc.にも応用可能である――を,ぜひ有意義に読み取っていただければと思う。 ソシュール的言語学と後期ハイデガーの言語論とが急速に受容され,独自な開花をさまざまな仕方で見せつつあった1960年代フランスの,時代の証言という感のあるテクストの一つでもある。実存主義的なものと構造主義的なものとが入り混じる,スリリングなテクストと言える。 とはいえ,「序文」という性質から,語学的・文法的にはそれほど難解ではない。地道に辞書を引いていただければ対応可能であろう。 原著はフランス語で,未邦訳であるが,英語訳を使用しての受講も可能とする。 受講者の研究の進展に役立つようこの授業を活用いただければ結構である。

目標

・哲学テクストの表現・語彙・論理に習熟する。 ・現代哲学の主要トピックを把握する。 ・解釈学・現象学をめぐっての哲学的な視野を取得する。 ・専門的なフランス語(あるいは英語)の運用能力を高める。 ・口頭での哲学的な説明・討議を,緻密に日本語でおこなう能力を高める。

授業外の学習

語学的な予習(外国語テクストの読解)と,内容面での復習が重要である。 (とくに修士一年目の方々は,この授業にかぎりませんが,修士一年目に何百回辞書を引く動作をおこなったかで,その後の研究人生のための知的体力が大きくちがってくる,とのイメージをもって,がんばってください。)

所要時間: 190分

スケジュール

  1. イントロダクション 授業の進め方について ※以下は予定であり,授業の進捗状況により各テーマの回数は変更することがあ りうる
  2. 読解と議論(1)「Pour présenter...」
  3. 読解と議論(2)「Il y a toujours...」
  4. 読解と議論(3)「Essayons, en un sens...」
  5. 読解と議論(4)「Il y a donc herméneutique...」
  6. 読解と議論(5)「Or, parmi ces...」
  7. 読解と議論(6)「Cette situation herméneutique...」
  8. 読解と議論(7)「Cela, c'est le fruit...」
  9. 読解と議論(8)「Il me semble que...」
  10. 読解と議論(9)「C'est ici que la question de la démythologisation...」
  11. 読解と議論(10)「Nous sommes maintenant...」
  12. 読解と議論(11)「Si donc Bultmann pense...」
  13. 読解と議論(12)「Loin donc que l'objectif et l'existentiel se contrarient...」
  14. 今学期のまとめ

教科書

(テクストはコピーを配布する。)

  • Le conflit des interprétations

    著者: Paul Ricoeur

    出版社: Seuil, 1969

  • The conflict of interpretations

    著者: Paul Ricoeur

    出版社: Northwestern University Press, 1974

参考書

  • リクール読本

    著者: 鹿島徹・越門勝彦・川口茂雄(編)

    出版社: 法政大学出版局・2016年

  • 現代フランス哲学入門

    著者: 川口茂雄・越門勝彦・三宅岳史(編)

    出版社: ミネルヴァ書房・2020年

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