労働法研究 I-A
博士前期課程法学研究科
MLLW7441
コース情報
担当教員: 富永 晃一
単位数: 1
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 火2
形式: 対面授業
レベル: 500
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 不可
評価方法
授業参加
その他
・参加者の希望に応じてレポート・口頭発表などの表現課題を課すことがある(必須とはしない。参加者からの希望があった場合の措置である)。その場合,授業参加(の一部)として考慮する。
詳細情報
概要
・個別的労働関係法を中心に,労働法の骨格を概観し,法学的な論点を把握することを目的とする。学部段階で労働法を履修した場合には,本科目を履修する意味はあまり大きくないので,労働法研究 I-Bだけを履修することも選択肢に入ると思われる。 ・具体的には,各回,予習として資料等を講読し,内容を当日の授業で確認した後,内容について質疑応答・ディスカッションする形式で進める。質疑応答等にあたっては,学習した内容を,何らかの(自分なりの)仮説ないし理論に帰納してみることを推奨する。受講者の希望により,レポート課題を設定することがある。 ・上記の内容は,法的知識と分析力の涵養を通じて,労働法関係において基礎知識の獲得・深化,高度な法的能力および雇用問題の分析力の養成に資するものである。これは,教育研究上の目的及び人材養成の目的にいう「社会で生起するさまざまな問題を論理的に再構成し,より高度な問題を処理できる実務能力」の獲得,並びに,カリキュラム・ポリシーにいう「学部で修得した法学・政治学全般の基礎知識の深化」「高度な法的能力および政治の分析力の涵養」「専門的視点および分析力の深化」に資するものである。
目標
・個別的労働関係法に関する概観的な知識を得た後,論文購読を通じて,資料読解能力を涵養するとともに,労働者保護の具体的手法の異同の検討等を通じて,体系的モデル化(理論化)の能力を伸ばすことを目的とする。 ・上記は,労働法関係におけるディプロマポリシーの実現,すなわち労働法に関する「高度な専門知識を修得し,使いこなす能力」の養成に資するものである。 ・具体的な目標は,下記のとおりである。 ①論文(判決)を読解して問題提起・分析・結論/主張を読み取ることができる ②その分析・結論/主張の当否を評価できる ③その論文で得られた知見を自分の仮説・理論の中に位置づけ,(口頭又は文章で)表現することができる。
授業外の学習
予習(概ね各回95分~150分程度)が必要となる。 (内容)講読文献の読解(問題提起・分析・結論/主張の読み取り),講読文献の分析・結論/主張の評価。 復習(概ね各回95分~150分程度)を行うことが求められる。 (内容)自分の研究関心(仮説・理論)への位置づけ・表現(整理メモやレポートの執筆)等である。
所要時間: 190分
スケジュール
- (※以下の予定はすべて仮の予定であり,受講者の希望やその他の事情に応じて各テーマの内容・回数・時期等を変更することがありうる) ガイダンス兼文献講読(1)「ガイダンス」「労働法の意義と歴史・労働法の体系」「労働契約・雇用契約とその他の役務提供契約」 (内容) ・授業の進め方の説明等。講読予定文献を調整する。また,労働法の簡単なガイダンスを行う。 (目標) ・授業の進め方を理解し,次回の講読予定文献等を決める。
- 文献講読(2):(仮)「労働条件の決定枠組み(強行法規,労働協約,就業規則,個別労働契約)」 (内容) ・労働条件を決定する法的枠組みを理解する。併せて,労働条件変更に関する法理を概観する。 (目標) ・労働法の基本構造を知り,説明できるようになる。労働条件がどのように定まるのか,決定の枠組みを知り,説明できるようになる。
- 文献講読(3):(仮)「労働者性」「使用者」 (内容) ・個別的労働関係法・集団的労働関係法上の労働者性,及び個別的労働関係法上の使用者性について概観する。 (目標) ・労働基準法(労災保険法)上の労働者概念と,労働組合法上の労働者概念の違いを理解する。 ・労働契約法上の使用者概念,労働基準法(労災保険法)上の労働者概念の定義の相違,直接の契約当事者以外の者が契約責任を負う使用者性と認められる場合について説明できるようになる。
- 文献講読(4):(仮)「個別的労働法総論」「採用:募集,採用内定,採用,試用,契約締結上の過失等」 (内容) ・採用に関する法理を概観する。 (目標) ・採用時の差別禁止・プライバシー保護等の規制について説明できるようになる。また,労働契約の成立に関する判例法理を理解する。
- 文献講読(5)「労働契約上の権利・義務」「労働憲章」 (内容) ・労働契約上の主たる義務・付随義務,労働憲章等について知識を得る。場合により,賃金についても前倒しして検討する。 (目標) ・労働契約上の基本的権利義務・付随義務,労働憲章について理解し,説明できるようになる。
- 文献講読(6)(仮)「賃金」 ・シンガー・ソーイング・メシーン事件,日新製鋼事件,住友生命保険事件 ・目標:賃金の概念,賃金への労基法上の規制等を理解し,説明できるようになる。
- 文献講読(7)(仮)「労働時間」「休暇・休業」 ・三菱重工長崎造船所事件,大星ビル管理事件, ・目標:労働時間の概念,労働時間への労基法上の規制等を理解し,説明できるようになる。
教科書
購読文献は,開講時に受講者と相談して決定する。
参考書
・受講者の問題関心に応じて紹介する。下記はあくまで例示である。 ・日本の労働法の特徴については,濱口桂一郎『若者と労働』(中央公論新社,2013)が読みやすく示唆に富む。
労働法(第5版)
著者: 荒木尚志
出版社: 2022
労働法(第10版)
著者: 水町勇一郎
出版社: 有斐閣,2024