ドイツ文化研究IIIa
博士前期課程文学研究科 - ドイツ文学専攻
MHGL7650
コース情報
担当教員: 佐藤 直樹
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 金4
形式: 対面授業+オンライン授業(オンデマンド授業,同時双方向型授業(Zoomなど)) /Alternating face-to-face & A
レベル: 500
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業内期末試験
授業期間中
詳細情報
概要
美術における「古典」という概念は,「規範」や「頂点」「不変的価値」というイメージと結びつきつつ受容のプロセスで展開していくものであり,時代ごとに異なる受容現象であるとするのが最近の一般的な見方である。つまり,古典を定式化したものではなく,多様に捉えようとする考え方だ。しかし,18−19世紀のヨーロッパにおいては,《ベルヴェデーレのアポロ》や《ラオコオン》のような,古典古代の決定的なアイコンが存在していた。ヴィンケルマンは,ギリシャ美術が堕落したものがローマ芸術であるとする発展的見解を発表し,美術史の学問としての成立に大きな貢献をする。本講義では,ルネサンスの古代発見から17世紀および18世紀の古典主義に至るまで,古典古代を手本とした美術作品を軸に丁寧に検証し「古典とは何であったか」を明らかにしていきたい。
目標
ルネサンスおよびヴィンケルマンとゲーテの時代を中心に,美術における「古典」という曖昧な概念を自分なりにイメージできるようになることが本講義の目的である。それはドイツにおける美術史学の誕生を見つめることにもなる。同時に,多くの美術作品を通して現代の美術史学における古典概念も学ぶことができる。
授業外の学習
ギリシャ・ローマの主要な美術作品を美術史の概説書などの図版を見てイメージしておくことが望ましい。
所要時間: 授業の予習と復習に190分程度
スケジュール
- 美術史学における古典とはなにか? サルヴァトール・セッティスの論考を中心に
- ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマンの『ギリシャ美術模倣論』について1
- ヴィンケルマンの体験した古代美術とラファエッロ1
- ヴィンケルマンの体験した古代美術とラファエッロ2
- ラファエル・メングスとベルテル・トーヴァルスンの古典主義
- 美術アカデミーと美術教則本による古代の身体研究
- ラファエッロの見た夢ーナポレオン占領下のウイーンとナザレ派
- 《ベルヴェデーレのアポロ》の理想的身体の伝播と展開
- ルネサンスの画家たちが見たローマと古代美術研究
- アントニオ・カノーヴァの古典主義研究ーナポレオン占領下のローマ
- 英国でのラファエッロ受容と古典主義
- 複製版画による古代彫刻とラファエッロの伝播と受容
- 反古典主義としてのラファエッロ前派
- 「古典なるもの」(das Klassische)のグローバル化ー古典とはヨーロッパだけのものなのか?
- 試験
教科書
教科書は特にありませんが,次の和書が参考書になります。 佐藤直樹『東京藝大で教わる西洋美術の見かた』世界文化社,2021年
参考書
『東京藝大で教わる西洋美術の見かた』
著者: 佐藤直樹
出版社: 世界文化社,2021年
『〈古典的なるもの〉の未来』安達薫訳
著者: サルヴァトーレ・セッティス
出版社: ありな書房,2012年
『ギリシャ美術模倣論』田邊玲子訳
著者: ヴィンケルマン
出版社: 岩波文庫,2022年