専門文献研究D

概要

ヴィクトル・ユゴーの詩『サタンの終わり』(1886)を講読します。未完に終わったものの,そこに表明されている思想の深さから,『静観詩集』や『諸世紀の伝説』に並ぶユゴーの代表作と呼んで言い過ぎではないでしょう。ユゴーの死の翌年にようやく出版されたこの長詩は,1855年から1860年にかけて書き継がれました。1860年は,ユゴーがあの大作『レ・ミゼラブル』執筆に再着手した年にあたります。つまり多くの研究者が指摘するように,神に反抗して転落し,その後救済への道を辿る「サタン」の姿は,悪から善へと転回するジャン・ヴァルジャンの運命にいわばそっくり置き換えられているのです。本詩集を講読することで,亡命期のユゴーの思想的展開をより深く理解できることでしょう。 200ページにもおよぶ本作品を１学期で通読することは困難ですが,詩の結びにあたる「L'Ange liberté」を中心に３分の1ほどを抜粋して読むことで,ユゴーの世界観(とりわけその革命観)に少しでも迫ることにしましょう。

目標

１)韻文のフランス語の規則と特徴とを踏まえ,適切に読解できるようになる。 ２)社会的政治的背景を押さえながら,文学テキストをその周辺状況を含め包括的に理解できるようになる。

授業外の学習

毎回の授業で次回の講読箇所を決めますので,担当者は辞書等で綿密に調べながら訳文を作成してきてください。担当者による解釈を踏まえ全員で議論を行なうため,担当者以外の履修者も必ずテキストを読み,自分なりの問題意識を持って講義に参加してください。

所要時間: 予習・復習にそれぞれ2時間程度