環境汚染の生態リスク
博士前期課程地球環境学研究科
MGGE7560
コース情報
担当教員: 田中 嘉成
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 土3
形式: 対面授業+オンライン授業(オンデマンド授業,同時双方向型授業(Zoomなど)) /Alternating face-to-face & A
レベル: 600
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
リアクションペーパー
レポート
その他
リアクションペーパーの課題は,毎回,講義中に出題します。1週間以内にMoodleにワード・ファイルとして提出すること(字数制限600字)。 アクティブ・ラーニングを1回行います。その成果をレポートにまとめて,講義終了時に提出してください(字数制限各1,200字)。
詳細情報
概要
人類は物質文明を築きあげ,さらに維持発展させるために様々な化学物質を作り出してきた。それらの化学物質の中には,生態系や人の健康を蝕む有害なものも少なくない。社会経済システムの持続可能な発展を成し遂げていくためには,人の福祉に貢献する便益の高い物質を,環境へのリスクを管理しながら利用していくことが必要である。この講義では,そのような環境リスク学の基礎となる化学物質の環境毒性,環境中の動態(化学物質の環境中での挙動),リスク管理手法について学ぶ。化学物質の環境毒性は,おもに生態系への影響と人健康への影響に二分されるが,この講義では前者に力点をおきながら,環境毒性全般について,その作用メカニズム,定量化法,影響評価法について概説する。
目標
化学物質の環境問題の本質を把握すること,生態系や人体における化学物質の毒性発現のプロセスを十分に理解することを到達目標とする。これらは環境汚染に関連する環境リテラシーの重要な構成要素となる。なぜなら,環境改善のために調査し分析する対象(当該テーマでは化学汚染)の本質を正確に理解しなくては,それらの環境リスクを解析・評価し,有効な対処法を提言することはできないからである。
授業外の学習
通常の授業時間とは別に,個別指導を行う。
所要時間: 履修生は,予習及び復習に毎回概ね190分の時間を費やすこと。
スケジュール
- 現代社会と環境汚染 講義概要:化学物質の環境リスクの3要素(有害性情報,曝露情報,リスク推定) アクティブ・ラーニングのためのグループ分け
- 有害化学物質の人および野生生物への影響(1) ‐環境毒性学入門 生物や培養細胞を使った様々な毒性試験法の解説,データ解析法,エンドポイント
- 有害化学物質の人および野生生物への影響(2) ‐環境リスクの管理 化学物質の環境基準値(予測無影響濃度PNEC等)の算定方法
- 発ガンのメカニズムと発ガン性の評価 癌が生じる過程の説明,変異原性および遺伝毒性の解説
- 定量的環境リスク評価(発がんリスク) 確率的環境リスク評価としての発ガンリスク評価方法の解説
- 特定のテーマに関する討論とプレゼンテーション(アクティブ・ラーニング)
- 化学物質の生物濃縮 化学物質が人や生物体内に蓄積される過程,モデル化の方法を解説.
- 重金属とPOPs(残留性有機汚染物質)による地球環境汚染 重金属類の毒性発現様式を概説し,その広域影響を解説.
- 化学物質の複合影響 複数の化学物質が同時に汚染した場合の複合影響の毒性評価法および規制を解説
- 特定のテーマに関する討論とプレゼンテーション(アクティブ・ラーニング)
- 農薬と洗剤の生態系への影響 農薬や洗剤,その他の家庭系化学物質の化学的特性と生物や人健康への影響を解説
- 性と繁殖を乱す内分泌かく乱物質 内分泌撹乱化学物質の作用機構と,自然環境への影響,評価手法
- 生態リスク評価 :化学物質の生物個体群や生態系への影響を評価 生態学モデル,種の感受性分布,生物廃水試験(WET)について解説する.
- 特定のテーマに関する討論とプレゼンテーション(アクティブ・ラーニング)
教科書
最新の研究論文の紹介と解説を主に行うため,特定の教科書は指定しない。
参考書
その他の参考書や文献は,講義中に紹介します。
入門 環境汚染のトキシコロジー
著者: ザクレウスキー
出版社: 化学同人
化学物質のリスク評価がわかる本
著者: 化学物質評価研究機構
出版社: 丸善出版
Fundamentals of Ecotoxicology: The Science of Pollution, 4th edition
著者: M. C. Newman
出版社: CRC Press