ポルトガル語史2

博士前期課程言語科学研究科

MFLG7792

コース情報

担当教員: 黒澤 直俊

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 木4

形式: 対面授業

レベル: 500

アクティブラーニング: なし

他学部履修:

評価方法

出席状況

5%

授業参加

25%

レポート

30%

授業内期末試験

授業期間中

40%

詳細情報

概要

この授業はポルトガル語学を専攻する院生を対象に開講されているが,関連分野を専攻したり,ポルトガル語の歴史的背景などに関心のある者を広く対象としたい。秋学期の,このポルトガル語史Ⅱでは,受講者の関心を考慮しつつ,ポルトガル語史上の特定のテキストを取り上げて,考察することを考えている。この授業によって,それぞれが関心を持っているポルトガル語のテキストについて,自力で解読し読みこなすための基礎力を養成することを目的とする。以下の授業計画に挙げた内容は取りあげることのできる可能性のリストと考えられたい。

目標

この授業によって,それぞれが関心を持っているポルトガル語のテキストについて,自力で解読し読みこなすための基礎力を養成することを目的とする。

授業外の学習

授業で扱われる素材に関して,事前に目を通し,必要に応じて関係事項を調べるなどする必要がある。

所要時間: 190分程度の予習と復習を必要とする

スケジュール

  1. 授業ガイダンス:授業の進め方や予習や復習など学習の方法。中世以降のポルトガル語を解読するために手元に置いて参照すべき辞書や文献などについて紹介する。
  2. 中世カンティーガの世界:中世ロマンス語の詩は音楽と結びついたものが多い。歌であったり,曲をバックに朗読されたりするものだが,そのうちポルトガル語で作られたもの,当時はガリシア語と呼ばれていたが,そのテキストをカンティーガと呼ぶ。どんな内容なのか,当時の曲はどれくらい知られているのかなど見てみよう。
  3. ポルトガル語の初期の文法家:Fernão de Oliveiraの1536年のGrammatica da lingoagem portuguesa と1555年にFernando Oliveiraの名で出版されたArte da Guerra do Mar『海戦論』を取り挙げ考察してみたい。この著者は人物としてかなり興味深いと思われる。
  4. ジル・ヴィセンテ:16世紀はポルトガルにとって栄光の時代と言えるが,1502年から1536年まで作品を上演した宮廷戯曲作家のGil Vicenteジル・ヴィセンテのテキストを取り挙げ,考察してみたい。テキストは作家の没後1562年に全集が刊行されているが,1536年からポルトガルでは異端審問所による検閲が始められていて,実は作家のテキストもその対象であり,数ある作品の中で信頼度の高い作品は一点だけであると言われている。
  5. 年に刊行されたOs Lusíadas『ウズ・ルジアダス』によってLuís de Camõesカモンエスは不朽の名声を文学史上に残したと言えるが,生前はその恩恵に浴したとは言い難い。とはいえ,そのテキストは現代から見ても名作であることは変わりない。テキストを具体的に見てみたい。
  6. イエズス会の日本語研究:16世紀末から17世紀初めにかけて出版された『日本大文典』や『日葡辞書』は日本にキリスト教を布教しようとしたイエズス会が日本語修得のために著したものだが,当時の日本語を知るための貴重な資料でもある。日本語研究の分野では「南蛮語学」と通称されているが,どのように研究されているのか見てみたい。
  7. フロイスの『日本史』:ルイス・フロイスはイエズス会の宣教師で,日本語を高いレベルまで修得し,『日本についての覚書』とでも訳すのが適切な,この書を著した。戦国武将や,その後の一般的なイメージとは異なる,極悪非道で邪悪な「秀吉」の姿が描かれている。日本史の研究資料であるが,言語学や文献学の立場からこのテキストについて考えてみる。
  8. ポルトガル語の歴史における再ラテン語化:14世紀頃までと16世紀以降のポルトガル語を特徴づける大きな違いに15世紀あたりからのルネッサンスの影響によって,古典語としてラテン語の影響が及んだことがあげられる。ポルトガル語が大きく変わったと言われるが,具体的にはどういう点なのかを考えてみたい。
  9. 近年の統語論研究:統語論の分野はポルトガルでもブラジルでも研究が盛んである。大部分が生成文法理論に基づき,かつミニマリストプログラムに依拠しているので,専門外にはわかりにくいという欠点がある。とはいえ,代表的な研究を集めたものやマニュアル,ハンドブックは出版されているので,手掛かりはある。授業ではポルトガル語学における生成系の研究史から掘り起こし,現在までを概観したい。
  10. 新国家体制Estado Novoとサラザール:74年までの独裁政権は1926年の軍事クーデターを発端とし32年にサラザールが首相に就任し,33年に発布された憲法に基づく。同時代のナチスドイツやイタリアファシズムとの関係,スペインのフランコ独裁体制の成立など第二次世界大戦前夜の激動の時代であった。その頃のポルトガルは,アフリカやインド,東チモール,マカオまで含んだ植民地帝国であったことも忘れてはならない。
  11. セバスティアン王の実像:ポルトガルにはセバスティアニズムと呼ばれるメシア思想がある。1578年に北アフリカに出兵戦死したセバスティアン王が実は生きていて,やがてポルトガルを救うために戻って来るというのだ。王は子供の頃から特殊な教育を受け,狂信的だったというのが従来の見方だが,最近では当時の国際情勢に通じた,周到な戦略家であったということがわかって来ている。近年の研究を見てみよう。
  12. ロマン主義から自然主義へ:文学史として現代ポルトガル文学を見るときの出発点としてカミロ・カステロ・ブランコ(1825-1890)とエサ・デ・ケイロス(1888-1928)がいる。それぞれロマン主義と自然主義に分類されるが,どんな作家でどのような作品を残しているのか。代表的なものは何なのかを見てみたい。
  13. ラテン語からポルトガル語へ:ロマンス諸語は話し言葉のラテン語=俗ラテン語が変化したと説明されている。ラテン語がロマンス語に転化したのは6世紀から8世紀とされ,ラテン語でまとまったテキストが出て来るのが紀元前3世紀なので1000年程度の文献記録があることになる。ラテン語の後半の時代は後期ラテン語と呼ばれ,スウェーデンのEinar Löfstedtによる重要な研究がある。
  14. 現代ポルトガル文学の2大作家:ポルトガル語作家でノーベル文学賞を受賞したのは1998年のジョゼ・サラマゴが唯一であるが,2010年に没するまでサラマゴとアントニオ・ロボ・アントゥネスは現代ポルトガル文学の2大作家であったと言える。二人の作風に特徴的なのは何か,どんなことが作品世界として語られているのかを考えてみたい。

教科書

教材は授業レジュメや著作権上問題のない文献などで上智大学のOneDriveを通じて共有配布する。

    参考書

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