言語学特殊講義Ａ(GB概説)
博士前期課程言語科学研究科
MFLG7140
コース情報
担当教員: 石井 透
単位数: 4
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 火4, 火5
形式: 対面授業
レベル: 500
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
レポート
小テスト等
詳細情報
概要
現在の生成文法では,ミニマリスト・プログラムを理論的指針として研究が進められています。しかし,ミニマリスト・プログラムのみを見ていても,その本質を理解することが出来ないために,オリジナルな研究へと結び付けるのが難しいというのが現状だと思われます。ミニマリスト・プログラムの本質を理解するには,どのような概念的・経験的要請に基づいて理論が進展してきたということを理解することが必要です。さらに,ミニマリスト・プログラムの指針に基づいて書かれている論文であっても,それ以前の研究成果が基盤となっている以上,以前仮定されていた理論的枠組みの理解が不可欠となります。ミニマリスト・プログラムではMergeという操作のみによって構造が組み立てられると考えられています。しかし,そこに至る理論的背景や経験的証拠についての理解がなければ,真に理解したことにはなりません。 Chomsky (2021, 2023)において,Duality of SemanticsはMergeの適用条件の一つとして提案されています。この授業では,拡大標準理論の枠組みでDuality of Semanticsに関して詳細に議論しているChomsky (1972)を取り上げ,理論的推移を概観し理解を深めたいと思います。そして,Duality of Semanticsを裏付ける証拠としてのImproper Movementに関する文献も扱います。Improper Movementは,A/A’位置の区別が前提となっていますが,日本語のScramblingについての文献を取り上げ,A/A’位置についての理解を深めたいと思います。さらに,Duality of SemanticsとExternal Merge/Internal Mergeとの関係,及びScramblingとラベル理論についても取り上げる予定です。
目標
ミニマリスト・プログラムにおいて併合(Merge)という操作の適用条件としてのDuality of Semantics及びA/Aバー位置について理論的背景や経験的証拠について理解を深めることを目標とします。
授業外の学習
授業を受ける前に,授業進度に応じてテキストを各自で読んで下さい。
所要時間: 190分
スケジュール
- Duality of Semantics (1): Chomsky (1972)
- Duality of Semantics (2): Chomsky (1972)
- Duality of Semantics (3): Chomsky (1972)
- Duality of Semantics (4): Chomsky (1972)
- Duality of Semantics (5): Chomsky (1972)
- Duality of Semantics (6): Chomsky (1972)
- Improper Movement (1): May (1979)
- Improper Movement (2): May (1979)
- Improper Movement (3): Fukui (1993)
- Improper Movement (4): Fukui (1993)
- Improper Movement (5): Fukui (1993)
- Scrambling and A/A' Distinction (1): Saito (1992)
- Scrambling and A/A' Distinction (2): Saito (1992)
- Scrambling and A/A' Distinction (3): Saito (1992)
- Scrambling and A/A' Distinction (4): Saito (1992)
- Scrambling and A/A' Distinction (5): Saito (1992)
- Scrambling and A/A' Distinction (6): Saito (1992)
- Scrambling and Labeling (1): Saito (2016)
- Scrambling and Labeling (2): Saito (2016)
- Scrambling and Labeling (3): Saito (2016)
- Scrambling and Labeling (4): Saito (2016)
- Scrambling and Labeling (5): Saito (2016)
- Scrambling and Labeling (6): Saito (2016)
- Duality of Semantics and External/Internal Merge (1): Chomsky (2007)
- Duality of Semantics and External/Internal Merge (2): Chomsky (2007)
- Duality of Semantics and External/Internal Merge (3): Chomsky (2007)
- Duality of Semantics and External/Internal Merge (4): Chomsky (2007)
- Duality of Semantics and External/Internal Merge (5): Chomsky (2007)
教科書
以下の文献を使います。
"Deep structure, surface structure, and semantic interpretation" in Studies on semantics in generative grammar
著者: Chomsky, N.
出版社: Mouton, 1972.
Must COMP-to-COMP movement be stipulated? Linguistic Inquiry
著者: May, R.
出版社: MIT Press, 1979.
A note on improper movement, The Linguistic Review
著者: Fukui, N.
出版社: De Gruyter, 1993.
参考書
Long distance scrambling in Japanese, Journal of East Asian Linguistics
著者: Saito, M.
出版社: Springer, 1992.
(A) Case for labeling: Labeling in languages without φ-feature agreement, The Linguistic Review
著者: Saito, M.
出版社: De Gruyter, 2016.
“Approaching UG from Below,” in Interfaces + Recursion = Language?
著者: Chomsky, N.
出版社: Mouton de Gruyter, 2007.