国際関係研究:中東

博士前期課程グローバル・スタディーズ研究科 - 地域研究専攻

MFAS7440

コース情報

担当教員: 臼杵 陽

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 月5

形式: 対面授業

レベル: 500

アクティブラーニング: なし

他学部履修:

評価方法

出席状況

30%

授業参加

20%

リアクションペーパー

30%

レポート

20%

詳細情報

概要

中東は歴史的にかつ空間的に重層構造をもつ社会である。したがって中東を理解するには通時的な視点と共時的な視点をあわせもつ必要があ る。本講義では通時的には,中東の歴史のなかにおいてイスラエルとパレスチナとの間の紛争,つまりパレスチナ問題の起源をどのように捉える べきかを概説する。共時的には中東という地域概念,宗教・宗派,民族やエスニック集団の複雑な相互関係をどのように理解すべきなのかを解説 する。また,ユダヤ教,キリスト教,そしてイスラームという三つの一神教が,中東という歴史の<場>においてどのような関係を取り結んできたか を解説する。まず,前近代を三つの一神教にかかわる諸問題に関してテーマごとに学び,近代以降は第一次世界大戦まで,とりわけ東方問題,ナショナリズム,そして宗教・宗派的紛争の問題を中心に議論していくことになろう。 パレスチナ/イスラエル地域の歴史を概観するに当たって,それ自体にすでに世界大の課題が含みこまれてしまっている。したがって,受講に 際しては一地域の歴史を学ぶというよりも,グローバルな歴史を構成する一部として,一神教の「聖地」をめぐる「歴史的な現在」を捉えてほし い。

目標

中東の歴史は重層的である。したがって,年代を覚えていくような理解の仕方ではとうてい太刀打ちできない。それぞれの時代の相は何なのか を意識しつつ,現代の宗教・民族・国家が織りなす現実を投影して過去を見ているのだという自らの置かれている観点をはっきりと自覚して,前近 代と近現代の歴史と同時に現代の政治・社会をも学んでいくことになる。 したがって,毎日の新聞やテレビなどのマスメディアでの現代中東政治に関するニュースなどを通した情報を踏まえて,現代中東の政治や社会 を自ら積極的に調べていく姿勢をもってほしい。

授業外の学習

毎日,テレビ・新聞・インターネットなどのメディアを使って,中東イスラーム関係のニュースや情報を得るように心がけてください。そうすることで, 中東やイスラームを遠い地域の出来事ではなく,できるだけ身近なものとして感じる想像力を養ってください。

所要時間: 190分

スケジュール

  1. イントロダクション 中東地域の政治と社会 を学ぶにあたって 教科書の目次をざっと目を通しておこう。
  2. 西洋/東洋,オクシデント/オリエントという 二分法 オリエンタリズムあるいは東洋(オリエント)のイメージについて考えてみよ う。東洋とはどこなのか?
  3. 近東,中近東,中東,イスラーム世界という 地域概念 「東」という文字のつく,似て非なる三つの地域名称に疑問をもとう。日本は 「極東」にあることも同時に考えてみよう。
  4. 中東の地域紛争と「境界」 誰が中東地域の国家の国境線を引いたのだろうか?そしていつ現在の国家 ができたのだろうか?
  5. 言語と宗教によるアラブ世界のマイノリティ (少数派) 中東での多数派とは誰だろうか?イスラームの下での少数派のあり方を考 えてみよう。
  6. 三つの一神教の相互関係 三つのアブラハム的(セム的)一神教とはいったい何だろうか?三つの一神教は何が共通点なのだろうか? イスラームから見たユダヤ教およびキリスト 教 についても考える。
  7. ヨーロッパによるイスラーム世界包囲網 東西貿易で誰が得をしていたのだろうか?イスラーム世界は近代になってな ぜ没落したのだろうか?
  8. イスラーム帝国としてのオスマン朝下のミッ レト制 と宗教・民族紛争の起源としての「東方問 題」 宗教共同体の自治はイスラームの寛容のおかげか?イスラームの寛容とは 何か?そいて ヨーロッパ列強によるオスマン帝国への侵略についても考えてみよう。
  9. アラブ・ナショナリズムとイスラーム改革運動とヨーロッパにおける反ユダヤ主義とシオニズム アラブ人は昔から存在していたわけではない?ではいつから?また,キリスト教社会でなぜユダヤ人が嫌われるようになったのか考えてみよう。
  10. 転換点としての第一次世界大戦-イギリス の「三枚舌」外交 中東にとっての第一次世界大戦の意味を考えてみよう。現代中東政治はこ の戦争によって決まったからである。 また,1917年バルフォア宣言 現在にまで禍根を残した,イギリスによるこの無責任な政治的宣言の何が問 題なのか?
  11. 「危機の20年」-両大戦間期のイギリスによるパレスチナ委任統治,そして ナチス政権成立以降のパレスチナと英米の 対応 「アラブとユダヤ」の対立の構図がこの時期にどのように固定化していったの かを考えてみよう。 そしてナチスのユダヤ人追放政策とシオニスト指導部の思惑とは何なっだのか?
  12. 第二次世界大戦,ホロコースト,国連 パレスチナ分割決議案,そして イスラエル国家建設 トルーマン米大統領のユダヤ難民に関する決定が,イスラエル建国を生み出し,アラブ・イスラエル紛争を 決定づけた。
  13. 中東戦争あるいはアラブ・イスラエル紛争の 激化とパレスチナ難民問題 の発生 中東戦争をめぐる敵・味方関係がどんなものだったのか,そして なぜパレスチナ難民は故郷に戻れなくなったのだろうか?を考えてみよう。
  14. まとめ―オスロ合意後の21世紀の現在の状況からパレスチナ問題とアラブ・イスラエル紛争,あるいはパレスチナ・イスラエル紛争を改めて考えてみよう。

教科書

臼杵 陽『世界史の中のパレスチナ問題』講談社現代新書2189,2013年

  • 『中東和平への道』

    著者: 臼杵 陽

    出版社: 山川出版社,世界史リブレット52,1999年

  • 『「中東」の世界史』

    著者: 臼杵 陽

    出版社: 作品社,2018年

  • 『「ユダヤ」の世界史』

    著者: 臼杵 陽

    出版社: 作品社,2019年

参考書

書籍情報はありません。

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