生態人類学
博士前期課程グローバル・スタディーズ研究科 - 地域研究専攻
MFAS1030
コース情報
担当教員: 大石 高典
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 月3
形式: 対面授業
レベル: 500
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
レポート
その他
試験は行わない。学期末に,授業内容を踏まえたレポ―ト提出を課す。授業参加については,授業で取り扱う文献についての発表の内容や討論への貢献などをもとに評価を行う。
詳細情報
概要
生態人類学は,人間集団と環境の相互関係を徹底した参与観察を通じて理解しようとする学問である。この授業では,生態人類学的研究の実際について,担当講師が中部アフリカ・カメルーンの熱帯林で行ってきた研究成果を輪読し,関連する文献も参考にしながら批判的に検討することを通じて学ぶ。生態人類学の基本概念に加えて,フィールドや研究対象の選定,研究テーマと調査の方法の検討,フィールドワークで得られるデータの分析と解釈,論文の執筆方法,対象社会からの要求への応答などを講ずる。これらは,臨地研究を志す参加者が,研究内容を具体化するうえで参考になるはずである。
目標
生態人類学の基本的な考え方やアプローチの方法,アフリカ熱帯林に生きる人々の生活世界,生態人類学的研究と現代的諸課題との関わりについて理解を深める。受講者各自による発表と,他の参加者との対話の中で自身の研究関心をより具体的に表現できるようになる。現地調査での具体的な資料収集の方法,得られるデータの定性・定量的な分析と論文執筆への活かし方についても意識して学び取る。
授業外の学習
各回の授業で取り上げる教科書の章や関連する論文・民族誌について読み込み,ノートを作っておく。そのノートをもとに授業で議論を行う。毎回の輪読対象箇所について,担当者はレジュメを作成する。
所要時間: 190分
スケジュール
- ガイダンス(生態人類学とは何か,授業概要と目的,進め方などを共有/参加者全員の自己紹介)
- アフリカ熱帯林の歴史:アフリカの自然と生業・文化の多様性のなかで(参考:『森棲みの社会誌』1~2章)
- テキスト序章「揺れる境界ー自然/生業/社会のねじれ」~第1章「ドンゴ村へ」の読解と検討(カメルーンの研究史,調査地の選び方,アフリカ農村社会の特徴)
- 第2章「「原生林」のなかの近代ー廃村の歴史生態学ー」および関連論文の読解と検討(民族植物学と歴史生態,農耕民と狩猟採集民の移動・移住の特徴)
- 民族誌映画の鑑賞とディスカッション
- 第3章「森の「バカンス」ー二つの社会的モード」および関連論文の読解と検討(農耕民と狩猟採集民の社会的インタラクション)
- 第4章「「ゴリラ人間」と「人間ゴリラ」ー人間=動物関係と民族間関係の交錯と混淆」および関連論文の読解と検討(農耕民=狩猟採集民関係と民族動物学)
- 森と村をつなぐ犬(参考:『犬からみた人類史』9章)
- 霊長類学と生態人類学(トークセッション)
- 第5章「バカ・ピグミーによる換金作物栽培と民族間関係」および関連論文の読解と検討(狩猟採集民の農耕化・定住化とその要因)
- 第6章「嗜好品が語る社会変化ー精霊儀礼からディスコへ」および関連論文の読解と検討(嗜好品と先住民社会)
- 第7章「周縁化されるバカ・ピグミーー森のなかのミクロな土地収奪」および関連論文の読解と検討(土地をめぐる紛争)
- 西アフリカからの移民のライフヒストリーからみたカメルーンの熱帯林(熱帯林伐採事業と地域社会)
- 終章「開かれた境界ー自然/生業/社会の広がり」の読解と検討
- 全体の総括
教科書
教科書の読解・検討が主要な内容になるので,必ず入手しておくこと。
『民族境界の歴史生態学—―カメルーンに生きる農耕民と狩猟採集民』
著者: 大石高典
出版社: 京都大学学術出版会,2016
参考書
森棲みの生態誌――アフリカ熱帯林の人・自然・歴史 I
著者: 木村大治・北西功一(編)
出版社: 京都大学学術出版会,2010
森棲みの社会誌――アフリカ熱帯林の人・自然・歴史 II
著者: 木村大治・北西功一(編)
出版社: 京都大学学術出版会,2010
犬から見た人類史
著者: 大石高典・近藤祉秋・池田光穂
出版社: 勉誠出版,2019