生成AI時代における「データ駆動型のリーン事業創造」
応用データサイエンス学位プログラム
MADS7500
コース情報
担当教員: 渡辺 悟
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 火6
形式: 対面授業
レベル: 500
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 不可
評価方法
出席状況
授業参加
リアクションペーパー
レポート
その他
※出欠条件について 基本的には14回講義全てに参加していただくこと(欠席・遅刻・早退などのやむを得ない場合は,必ず授業開始前に分かり次第連絡のうえ,別途設定する課題提出を所定期限までに完了させること。その場合は半分出席扱いとみなすなどの措置を講ずる。なお,欠席を3回以上した場合は原則不合格とする) 毎回授業では,復習として冒頭で前回(主要骨子)の振り返りをおこなう。欠席分のキャッチアップとして,他受講者との連携や,授業後の講師への質問などの努力をすること。本クラスでは,数名で1組のホームチームを組成する予定。ホームチームの他受講者を中心に声がけして欠席時の内容をフォローしてもらうこと。 ※生成AIの利用について 課題(リアクションペーパー,レポート,ピッチブック等)への取り組みにおいて,生成AIが出力した文章,プログラムソースコード,計算結果等の単なる転載は,本人が作成したものとしては認められません。内容や位置付けによっては,そのような行為は,不正や剽窃に該当することを自覚したうえで,「生成AIの出力内容」と「自身の見解等の表現」は峻別して記載することを原則とします。また,生成AIを利活用した場合は,当該ページや文末に「使用した生成AI の種類 」,「文章等を生成した年月日」,「用いたプロンプトの文言( AIにどのように指示したか)」 等の情報記載を必須とします。
詳細情報
概要
新規事業や起業に関する主要な理論であるリーンスタートアップを中心に事業創造の理論や実論を学びます。効果的・効率的に事業創造プロセスを推進するための必要知識やスキルに触れつつ,データと生成AI(デジタル)を有効活用するデータ駆動型の事業創造の可能性を探索します。 1回〜10回の理論編では,生成AIの社会的インパクトや利用可能性,スタートアップのラウンドや成功要件,アントレプレナーに求められるスキル・ナレッジやマインド,データ駆動型運営の前提となるデータ駆動型経営の実情などを学びます。11回から13回目までの実践編では,デザイン思考系の顧客分析などの補助ツールを利用しながら,リーンスタートアップのサイクルに基づいて自身のビジネスアイデアを検討し,事業案の骨子として言語化に挑戦してもらいます。全講義終了後のレポート課題として,自身のビジネスアイデアをピッチブックとして資料化することに取り組んでもらいます。 また,講義の予習・復習,講義中,事後課題の全てにおいて,積極的に生成AIをパートナーとして利活用することを前提にします。それらを通じて,生成AI時代に,その可能性と限界,リターンとリスクを体感して深く理解し,正しく恐れて使えることを目指します。 以上を通じて,生成AI時代において,事業創造の成功確率を高めるための顧客・価値創造,ビジネスモデル構築,経営資源の確保・充実等について,自ら考えて事業創造の”推進”や”助言・支援”ができるための”基礎”を習得していただくことを目指します。 ビジネスで生成AIをもっと利活用したい方,データサイエンスのスキル/知見を活かした事業創造に興味がある方,起業や新規事業創造に将来取り組んでみたい方などにお勧めです。創業や新規事業開発などの事業創造に興味・関⼼のある⽅だけでなく,企業内で幹部層を⽬指す⽅のスキルアップ/キャリアップに必要となる素養を学べる内容となっています。幅広い皆さまの受講をお待ちしています。 ※生成AIの利用について 教育における生成AIの利用について,本学においては,次の三つの指針のもとにおこなわれるべきと位置付けております。 A) 進行中の技術としての仕組みや限界について,教職員・学生ともに学ぶ必要がある。 B) 倫理的・法的・社会的側面の理解を深め,節度ある利用について学内外での議論を深めていく。 C) それぞれの学問的活動や日常生活はもちろん,「他者のために,他者とともに」の精神のもと,他者に寄り添い,よりよい世界を目指す実践への活用を積極的に検討する。 当該指針に基づき,本講座では第3回目に生成AIの機能的な特徴や限界,倫理的・法的・社会的側面における課題,利活用のメリットやリスクについて,社会的動向などの一般論を学習した上で,授業内での利活用の位置付けを理解し,適切な理解のもとで,「正しく恐れたうえで,”協働相手”としての利活用を積極的に試行錯誤する」ことを目指します。生成AI時代に,個人や組織がこの技術の可能性を最大限に有効活用し,いかに社会的な価値創造に繋げるべきなのか,身をもって体験・体現していきましょう。
目標
❶生成AI時代における事業創造の基礎知識と実践力の向上 リーンスタートアップを中心に,新規事業創造の主要な理論を学びながら,データ駆動型のアプローチや生成AIを利用した実践的な事業創造プロセスの推進方法を習得します。理論編での知識をもとに,実践編と最終レポートで具体的な事業アイデアへと結びつけることができるようになることを目指します。 ❷データと生成AIを利活用したビジネス実践力の向上 生成AIの概論から具体的なビジネスへの適用までを学び,データと生成AIを戦略的にビジネス活用することで事業創造プロセスがどのように変化するかを理解します。生成AIを使った顧客分析やアイデア出しの方法を実践的に学び,これらのツールを自身のビジネスアイデアや事業計画に活かすスキルを養います。 ❸ゼロイチ人材に必要となる総合的素養の理解 ゼロからイチを創出する人材(≒アントレプレナー(起業家))が,事業創造/推進するために必須となる会計・財務の考え方などのナレッジを学びます。また,事業創造/推進の過程で問われるリーダシップなどのマインドについても理論や実務家の実論などを通じて学びます。自らのビジネスアイデアを言語化し,ピッチブック/新規事業企画を作成する実践活動を通じて,事業構想力や企画・提案力,説明力などのスキルを磨きます。
授業外の学習
●以下を予習・復習の位置付けとして実施いただきます。当人の理解度によりバラツキが想定されますが,平均で200分程度を見込んでいます。 1)リアクションペーパーとして,①授業での気づき・学び(内省)と②今後のビジネス・学業で活かせそうなこと(抽象化・持論化)について,400字以上のテキストを提出します。毎回,授業前日の月曜日正午が提出期限です。提出期限を過ぎての提出は提出とみなしません。 2)2回目以降,授業の最後に「キークエスチョン(3〜5)」を提示します。次回授業において理解していることを前提に扱う基礎的な語彙・理論などを取り上げます。参加者間に想定される基本知識のバラツキを補正することが主眼です。理解不足の自覚がある方は,その問いに対する解を自身のメモとして用意してください(提出は不要)。他者に説明できる理解水準であれば対応は不要です。 3)主に実践編を中心に,ご自身のアイデア/見解などを所定のテンプレートにて作成し,提出してもらう場合があります。当該課題を要請する場合,授業の最後に「次回に向けた取り組みと」して,取り組み内容やテンプレートについて,案内をします。実施の場合,授業前日の月曜日正午が提出期限です。事前の事情説明等もなく,提出期限を過ぎての提出は提出とみなしません。 ※参加される受講者の知識・スキル水準や参加者数,授業の進捗度合い等々の状況を鑑みて課題の質・量等は柔軟に変更します ※生成AIについて 課題(リアクションペーパー,レポート,ピッチブック等)への取り組みにおいて,生成AIが出力した文章,プログラムソースコード,計算結果等の単なる転載は,本人が作成したものとしては認められません。内容や位置付けによっては,そのような行為は,不正や剽窃に該当することを自覚したうえで,「生成AIの出力内容」と「自身の見解等の表現」は峻別して記載することを原則とします。また,生成AIを利活用した場合は,当該ページや文末に「使用した生成AI の種類 」,「文章等を生成した年月日」,「用いたプロンプトの文言( AIにどのように指示したか)」 等の情報記載を必須とします。なお,ChatGPTに入力した内容は学習データとして用いられるため,個人情報や機密情報は入力しないようお願いします。技術的進展,社会的動向が日進月歩で変化するため,詳細の運用は,各授業において言及をします。教育における生成AIの利活用はまさにいま,あり方の模索の真っ只中にあります。当講座の受講者には,その解を共に創造する姿勢で臨まれることを期待します。
所要時間: ・開催回や自身の知識理解度などによって異なるが,平均200分程度を見込む
スケジュール
- ガイダンス&イントロダクション 授業の全体像,各回の内容・進め方・ルール,到達目標と成績評価基準などを説明する。生成AIを用いた顧客分析やアイデア出しなどを実践し,生成AIの登場によって事業創造プロセスに大きな変化が生じつつあることを体感する。 ※以下は予定です。授業の進捗状況等により各テーマの回数・内容が変更となる場合がありえます(ただし,大幅変更はありません)
- 生成AI概論(1/2) 生成AIが社会にもたらすインパクト(シンギュラリティや社会構造転換など),その動向をふまえたビジネスチャンスの変遷可能性,組織や人はそのような大変化を機会に変えてゆくのかを学ぶ。
- 生成AI概論(2/2) 生成AIのビジネス利活用の現状を俯瞰的に理解する。実際の業務で利用促進するための具体的な適用可能性やリスク,その先の講義での利活用について考える。オプトアウト設定やハルシネーション,プロンプトエンジニアリングなどの実践活用に必要となる考え方・やり方の具体論を学ぶ。
- 事業創造概論(1/2) 事業創造の一形態であるスタートアップ(ベンチャー)の歴史や社会的意義,資金調達状況や起業数/廃業数などのスタートアップ界隈の動向と今後,界隈の必須語彙(PMFやGTM,TAM・SAM・SOMなど)について理解を深める。その上で,スタートアップの成長段階を考察する。成長フェーズを語る(シード→アーリー→ミドル→レイター)の定義,資金調達面での段階を語るラウンド(エンジェル→シード→シリーズA〜C)の定義,を理解したうえで,それぞれの段階で必要となる人・組織などの経営資源調達・運用の要諦,成功確率を高めるために必要となる成功/失敗要因などを学ぶ。
- 事業創造概論(2/2) 事業創造の一形態である,新規事業創造について,スタートアップ(ベンチャー)との違い,推進プロセスに関する理論,先進企業の取り組み事例などを学ぶ。その上で,新規事業創造の推進プロセスごとの進め方の要諦,生成AIの活かし方,典型的な課題などについて,理解を深める。織などの経営資源調達・運用の要諦,成功確率を高めるために必要となる成功/失敗要因などを学ぶ。
- ゼロイチ人材概論(1/3) 事業を創造するという,ゼロからイチを創出する人材(≒アントレプレナー(起業家))に必要となるマインド(アントレプレナーシップ)に関する理論,実際の著名起業家や新規事業創造界隈の有名人などの実論,などの理解を深める。そのうえで,汎用性の高いリーダーシップとアントレプレナーシップとの相違点・共通点,そのようなマインドの汎用性や磨き方などを考察する。
- ゼロイチ人材概論概論(2/3) ゼロイチ人材(≒アントレプレナー(起業家))に必要となるナレッジのうち,重要性と課題感の高いカネに関する要諦を学ぶ。具体的には,BS(貸借対照表)・PL(損益計算書)・CS(キャッシュフロー計算書)などのアカウンティング(会計)の基礎と決算書の読み方を理解する。
- ゼロイチ人材概論概論(3/3) ゼロイチ人材(≒アントレプレナー(起業家))に必要となるナレッジのうち,重要性と課題感の高いカネに関する要諦を学ぶ。具体的には,ROE/ROA,ROIC,NPV,IRRなどのファイナンス(財務)の基礎と使い方を理解する。
- データ駆動型経営概論(1/2) 事業創造をデータ駆動型で推進するための前提となるデータ駆動型経営の基礎について理解を深める。具体的には,データ駆動型経営の定義,企業の推進状況,推進上の課題などの概論と,データ駆動型経営に関する先進的企業の取り組みなどの実論を学ぶ。
- データ駆動型経営概論(2/2) 事業創造をデータ駆動型で推進するための前提となるデータ駆動型経営の基礎について理解を深める。具体的には,データ駆動型経営を実現するために必要となるデータサイエンス推進プロジェクトの必要性やその推進ステップ,データ駆動型に人や組織を変革する際の阻害要因と対策などの実論を学ぶ。
- 事業創造実論編(1/3) これまでの学習事項を利活用しつつ,事業創造プロセスの主要箇所を擬似体験し,理解の深化,実践力の強化を図る。具体的には,”リーンスタートアップ”で規定されたフィードバックループの三要素(構築・計測・学習)のうち,アイデア(顧客課題)を製品とするための”構築”に必要となる考え方ややり方を学ぶ。実際にそれを考えるための思考ツールとしてValue Propositon Canvas(VPC)を用いて自身の事業案の言語化に挑戦する。
- 事業創造実論編(2/3) これまでの学習事項を利活用しつつ,事業創造プロセスの主要箇所を擬似体験し,理解の深化,実践力の強化を図る。具体的には,”リーンスタートアップ”で規定されたフィードバックループの三要素(構築・計測・学習)のうち,製品をプロトタイプ化したうえで顧客の受容性をデータ化するための”計測”に必要となる考え方(KGIとKPI,CSFなど)ややり方を学ぶ。実際にそれを考えるための思考ツールとしてBalanced Score Card(BSC)用いて自身の事業案の言語化に挑戦する。
- 事業創造実論編(3/3) これまでの学習事項を利活用しつつ,事業創造プロセスの主要箇所を擬似体験し,理解の深化,実践力の強化を図る。具体的には,”リーンスタートアップ”で規定されたフィードバックループの三要素(構築・計測・学習)のうち,規定したKGI /KPIのデータ収集・分析し,更なる事業アイデアの更新/方向転換をするための”学習”に必要となる考え方ややり方を学ぶ。また,リーンスタートアップにおいて,より多くのヒト・カネなどの経営資源調達に必要となる”ピッチブック”の項目や項目記述の要諦を理解する。
- 講座のまとめ 学習内容の振り返りを踏まえ,起業の技法やマインド,関連するスキルをどのように自身のキャリア展開やスキルアップなどに生かすのかを学ぶ。レポート課題の案内を行う。
教科書
教科書については原則,各自のペースで講義終了までに読了するべく,自己学習を進めていただきます。講義で読了が必要となる箇所がある場合,該当箇所を授業の最後に「次回の予習」として取り組みの案内をします。
リーン・スタートアップ
著者: エリック・リース(訳:井口 耕二)
出版社: 日経BP社,2012年
生成AI時代のプロダクトマネジメント
著者: シビー・シー,ケイトリン・カイ,イーウェン・ロング(訳:曽根原 春樹)
出版社: 翔泳社,2024年
あわせて学ぶ 会計&ファイナンス入門講座
著者: 田中 慎一,保田 隆明
出版社: ダイヤモンド社,2013年
参考書
書籍情報はありません。