商法演習
専門職学位課程法学研究科
LWS69101
コース情報
担当教員: 早川 咲耶
単位数: 1
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 火1
形式: 対面授業
レベル: 700
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 不可
評価方法
定期試験
定期試験期間中
70%
小テスト等
30%
その他
法科大学院の成績評価基本原則による。平常点評価30%の内訳は,原則として合計2回の小テストの結果による。詳細は,授業の初回に案内する。このほか,授業の出席状況のうち正当な理由のない欠席については,減点対象とする。
0%
詳細情報
概要
会社法について入門的な知識があることを前提に,コアカリキュラムの要求する達成度に到達するよう講義と質疑応答を交えて授業する。
目標
商法・会社法の基礎的な理解を踏まえ,商法・会社法の基本的な条文を手掛かりに,事例に対して商法・会社法の観点から適切に検討をし,条文を根拠とした解決を論じることができるようになる。
授業外の学習
各回の授業について授業資料を事前に配布し,その授業資料において予習の対象となる教科書の該当箇所や裁判例を示すので,十分に予習して授業に臨むことが求められる。
所要時間: 200分
スケジュール
- 新株予約権(1) 〔授業内容〕 新株予約権はどのようなものであるのかを経済的意義を踏まえて理解する。新株予約権が使われる場面を理解した上で,会社法上のルールについて募集株式の発行に関するルールと対比しつつ学習する。 〔コアカリキュラム〕 ○新株予約権とはどういうものか,およびその仕組み(発行時の払込みと権利行使に際しての払込みの区別,行使期間,取得条項など)について条文に即して説明することができる。 ○新株予約権の利用方法を説明することができる。 ○新株予約権の発行の方法について,募集手続による場合と無償割当てによる場合とがあることを理解し,その異同について条文を挙げて説明することができる。 ○公開会社と非公開会社とを区別して,募集新株予約権の発行手続き(募集事項の決定・申込み・割当て・払込み)を,決定権限を持つ機関に触れながら,条文を挙げて説明することができる。 ○新株予約権の発行が有利発行(「特に有利な条件」「特に有利な金額」)に当たるか否かの区別はどのように行われるべきか,オプション評価理論に触れながら説明することができる。
- 新株予約権(2):敵対的買収の防衛策 〔授業内容〕 新株予約権に関する法律問題が発生する場面のうち,敵対的買収など支配権争奪に関する場面における法ルールの解釈・適用について学習する。 〔コアカリキュラム〕 ○新株予約権とはどういうものか,およびその仕組み(発行時の払込みと権利行使に際しての払込みの区別,行使期間,取得条項など)について条文に即して説明することができる。 ○新株予約権の利用方法を説明することができる。 ○新株予約権の発行の方法について,募集手続による場合と無償割当てによる場合とがあることを理解し,その異同について条文を挙げて説明することができる。 ○公開会社と非公開会社とを区別して,募集新株予約権の発行手続き(募集事項の決定・申込み・割当て・払込み)を,決定権限を持つ機関に触れながら,条文を挙げて説明することができる。 ○新株予約権の発行が有利発行(「特に有利な条件」「特に有利な金額」)に当たるか否かの区別はどのように行われるべきか,オプション評価理論に触れながら説明することができる。
- 組織再編(1) 〔授業内容〕 組織再編に関する諸ルールを主として合併に即して理解する。当事者・利害関係者の利害状況を踏まえて各ルールの機能を理解するとともに,具体的な場面においてルールを解釈・適用できるようにする。 〔コアカリキュラム〕 ○吸収合併および新設合併とはどのようなものか,説明することができる。 ○合併においては,事業譲渡と異なり,消滅会社の権利義務の全部が当然に存続会社または設立会社に承継されることを,理解している。 ○吸収合併契約に定めなければならない事項(会社法749条1項)の概要を説明することができる。 ○吸収合併において,消滅会社の株主に交付される対価(吸収合併における合併対価)とすることが認められる財産の種類について,新設合併における合併対価と対比しつつ,説明することができる。 ○吸収合併契約の承認決議の決議要件を理解し,そのような要件が求められる理由について,説明することができる。 ○合併において,債権者異議手続が定められている理由について説明することができる。 ○債権者に異議を述べる機会を付与するため,合併当事会社はどのような事項を公告し知れている債権者に各別に催告しなければならないかを理解し,合併当事会社が,知れている債権者への各別の催告を要しないのはどのような場合かについて,説明することができる。 ○債権者が異議を述べることのできる期間内に吸収合併に異議を述べたとき,会社はどのような措置をとらなければならないか,およびそのような措置をとらなくてもよいのはどのような場合か,について理解し,債権者が異議を述べることができる期間内に異議を述べなかった場合の効果について,説明することができる。 ○吸収合併の効力はいつ発生するかについて,新設合併の場合と対比しつつ,説明することができる。 ○消滅会社の吸収合併による解散の登記の効力(会社法750条2項)およびそのような処理がされる理由について説明することができる。 ○吸収合併において,事前開示(会社法782条,794条)および事後開示(会社法801条3項4項)が求められる理由,ならびに存続会社において開示期間の終期が効力発生日から6箇月経過した日とされている理由について,説明することができる。 ○簡易合併とは何かを理解し,存続会社において同制度が認められている理由について,理解している。 ○特別支配会社(会社法468条1項)および略式合併とは何か,及び消滅会社または存続会社において略式合併制度が認められている理由について理解している。 ○合併の無効を主張するためには合併無効の訴えという方法によらなければならないことを理解し,合併無効の訴えの,原告適格・被告・提訴期間,および無効判決の効力について,説明することができる。 ○どのような事由が合併の無効原因となるかについて説明することができるとともに,合併比率の不公正が合併無効原因となるか否かについて,判例・学説を踏まえて,説明することができる。
- 組織再編(2) 〔授業内容〕 組織再編に関するルールのうち第10回で扱えなかったもの,組織再編に関するルールのうち,会社分割,株式交換・株式移転に固有のルールを理解する。組織再編について,具体的な場面を想定して適切な解決をもたらすための解釈・適用の技術を身につける。 〔コアカリキュラム〕 ○反対株主に株式買取請求権が認められる理由,ならびに株主が株式買取請求権を行使するための要件(会社法785条2項の反対株主となるための要件)および買取りの手続について,説明することができる。 ○株式買取請求権が行使された場合,株式会社は,反対株主の株式を「公正な価格」で買い取らなければならないが,ここでいう「公正な価格」の意味について,会社法制定前の「(吸収合併契約の)承認ノ決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」と対比しつつ,説明することができる。 ○会社分割とは何かを説明することができ,吸収分割と新設分割の異同について理解している。 ○いわゆる物的(分社型)分割と人的(分割型)分割の異同について説明するとともに,会社法の下で,人的分割と同等の効果をどのような方法で実現することができるか,理解している(会社法758条8項・760条7項)。 ○吸収分割契約に定めなければならない事項(会社法758条1項)の概要を説明することができる。 ○分割会社の債権者の中で,債権者異議手続が必要な債権者とは,どのような債権者かを理解している。 ○各別の催告を受けるべき不法行為債権者に対する催告がなされなかった場合の法的効果について説明することができる。 ○吸収分割の効力はいつ発生するかについて,新設分割の場合と対比しつつ,説明することができる。 ○どのような事由が会社分割の無効原因となるかについて,具体例を挙げて説明することができる。 ○株式交換および株式移転とはどのようなものか,説明することができる。 ○株式交換契約に定めなければならない事項(会社法768条1項)の概要について説明することができる。 ○株式交換・株式移転により完全子会社となる会社の債権者の中で,債権者異議手続が必要な債権者とは,どのような債権者かを理解している。 ○株式交換により完全親会社となる会社において,債権者異議手続が必要な場合は,どのような場合かについて理解している。 ○株式交換の効力はいつ発生するかについて,株式移転の場合と対比しつつ,説明することができる。 ○どのような事由が株式交換・株式移転の無効原因となるかについて,具体例を挙げて説明することができる。 ○いわゆる交付金合併および三角合併とはどのようなものかを理解し,三角合併を行うための子会社による親会社株式の取得禁止の例外について,説明することができる。
- 組織再編(3) 〔授業内容〕 事業譲渡に関する諸ルール(会社法総則におけるルール,商法総則での営業譲渡に関するルールを含む)を裁判例等も踏まえて理解する。 〔コアカリキュラム〕 ○会社法総則における事業譲渡の意義と会社法第二編第七章の事業譲渡の意義に関する,最高裁判所の判例および学説の状況について,説明することができる。 ○事業譲渡の対象となる事業を構成する権利義務の承継(特定承継)について,会社の合併における権利義務の一般承継(包括承継)と対比しつつ,説明することができる。 ○事業の譲渡会社の競業禁止の範囲について理解し,事業の譲渡会社が競業を禁止される理由について説明することができる。 ○事業の譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合に,譲受会社も譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済しなければならないとされる(会社法22条1項)理由について説明するこことができ,譲受会社が「譲渡会社の商号を引き続き使用する場合」に該当する例と該当しない例を具体的に挙げることができる。 ○事業の譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合でも,譲受会社が譲渡会社の事業によって生じた債務の弁済責任を例外的に負わない場合について理解している。 ○事業の譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合に,譲渡会社の事業によって生じた債権につき譲受会社にした弁済の効力について,説明することができる。 ○事業の譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合であっても,譲渡会社の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは,譲渡会社の債権者に対し弁済責任を負うものとされる理由について理解している。 ○事業の重要な一部の譲渡に当たらない場合とはどういうものかを理解し,株式会社が事業の全部または重要な一部を譲渡する場合,株主総会の特別決議を要し,「反対株主」に株式買取請求権が認められている理由を説明することができる。 ○略式事業譲渡とは何かを理解している。 ○必要な株主総会決議を経ない事業譲渡の効力について,判例・学説を踏まえて説明することができる。 ○他の会社の事業全部の譲受けの場合に,原則として株主総会の特別決議を要し,反対株主に株式買取請求権が認められている理由を説明することができる。 ○簡易の事業全部の譲受けについて理解している。
- 組織再編(4),組織変更,解散・清算 〔授業内容〕 組織再編等に関するまとめとして,組織再編・事業譲渡に関するルールを買収法制の観点から整理する。また,定款変更,組織変更,解散・清算に関するルールを概観する。 〔コアカリキュラム〕 ○他の会社から事業を取得する方法として,どのようなものがあるか,また,それぞれの手法のメリット・デメリットについて説明することができる。 ○定款変更の方法,および発行可能株式総数を増加させる定款変更の場合の規制について,理解している。 ○組織変更とは何かについて,持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)間の会社の種類の変更がそれに含まれないことにも留意しつつ,説明することができる。 ○組織変更が利害関係者(社員・株主,債権者のほか,株式会社から持分会社への組織変更の場合には,さらに新株予約権者等が考えられる)の利害にどのような影響を及ぼすかを理解し,組織変更に必要な手続の概要を,株式会社から持分会社への組織変更の場合と持分会社から株式会社への組織変更の場合とに分けて,説明することができるとともに,組織変更が違法に行われた場合に,その効力を争う方法について説明することができる。 ○解散および清算とは何か,ならびに解散と清算の関係を理解している。 ○株式会社の解散事由を理解している。 ○解散判決が認められる要件(会社法471条6号,833条)を理解している。 ○「休眠会社」とは何かを理解し,そのみなし解散の制度(会社法472条)の趣旨について説明することができる。 ○解散株式会社がすることができない行為を理解している(会社法474条)。 ○株式会社を清算しなければならない場合を理解している。 ○清算株式会社が有する能力について説明することができる。 ○清算株式会社の機関について理解している。 ○清算株式会社における債務の弁済および残余財産の分配に関する会社法の規律の概要を理解している。 ○清算株式会社の清算事務が終了したときの手続について理解している。 ○特別清算手続の特徴,他の倒産処理手続との相違点について理解している。
- 会社法総則についての諸問題 〔授業内容〕 第6回までの授業内容を復習した上で,会社法総則に関するルールのうち,商号・商業使用人等に関するルールについて学習する。 〔コアカリキュラム〕 ○商号とはどういうものか,説明することができる。 ○商号単一の原則について,個人商人と会社との違いを説明することができる。 ○商号選定自由主義の意義とその例外(会社法6条2項,3項,7条,8条,不正競争防止法2条1項1号2号,3条,4条,14条参照)について説明することができる。 ○自己の商号を使用して事業または営業を行うことを他人に許諾した会社の責任(いわゆる「名板貸人の責任」)について,その趣旨と責任の成立要件および効果を説明することができる。 ○支配人制度の趣旨,ならびに支配人の選任およびその代理権の消滅を登記しなければならない理由について,説明することができる。 ○支配人の代理権の範囲,および会社が支配人の代理権に加えた制限を第三者に対抗することができないのはどのような場合か,について説明することができる。 ○支配人について会社法12条1項に列挙されている競業等の禁止の内容が,代理商や株式会社の取締役の競業避止義務の内容と異なっている理由について,説明することができる。 ○表見支配人制度の趣旨,および表見支配人制度が適用されるための要件について,説明することができる。 ○会社法14条1項の「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」の代理権の範囲について,支配人の代理権と対比しつつ,説明することができる。 ○物品の販売等を目的とする店舗の使用人の代理権の範囲について理解している。 ○代理商(会社の代理商)とはどういうものか,商業使用人(会社の使用人)と対比しつつ説明することができる。 ○商業帳簿とはどういうものか,および商法総則において商業帳簿に関する規定が設けられている理由,並びに規定の概要を説明することができる。
- 期末試験 〔期末試験〕 第7回までの内容を踏まえ,本講義の対象分野に関する事例問題を出題する。正確な理解に基づき事例を分析する能力,法規範を適切に解釈・適用する能力,思考過程を適切に表現する能力が身に付いているかを確認する。
教科書
自身が利用している教科書でかまわない。
商法判例集(第9版)
著者: 神作裕之=藤田友敬
出版社: 有斐閣・2023年
参考書
会社法(第4版)
著者: 田中亘
出版社: 東京大学出版会・2023年
会社法 [第3版] *第4版が2024年春に刊行される可能性あり
著者: 髙橋 美加=笠原 武朗=久保 大作=久保田 安彦
出版社: 弘文堂,2020年