民法基礎演習
専門職学位課程法学研究科
LWS61800
コース情報
担当教員: 永下 泰之
単位数: 1
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 水1
形式: 対面授業
レベル: 700
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 不可
評価方法
授業参加
15%
レポート
70%
その他
法科大学院の成績評価基本原則による。 平常点30%の内訳は,①授業への参加(質疑応答)15%,②課題への取組み15%とする。
15%
詳細情報
概要
春学期の民法基礎Ⅰおよび民法基礎Ⅳ並びに秋学期の民法基礎Ⅱ(本演習開始時点でなお開講中)の授業内容を前提とした法学未修者対象の演習(主として事例問題の検討を通じた質疑応答形式の授業)である。本演習では,法学未修者が学習にあたりその内容を理解することが比較的難しいと思われる事項や今後の学習における応用発展問題の基礎となる問題を取り上げて検討する。 なお,第2回において,判例研究を1回行う予定である。判例研究を通じて,判決の読み方や当事者の主張の持つ意味を詳細に検討するものである。
目標
各回の授業で取り扱った事項や内容についての基本的知識を修得したうえで,⺠法総則,物権法における各種制度・条文の趣旨・要件・効果,これら諸制度や条文の相互関係について深い理解を獲得し,事案解決のための応用力を養うことが最終到達目標である。
授業外の学習
講義前には,レジュメ・事例問題(TKCにアップロード)に目を通し,関連する分野についての基礎知識を確認するとともに,事例問題を検討すること。講義後は,各回のテーマに応じて,基本書等で確認して知識の定着を図ること。 予習・復習時間とも毎週授業時間と同等の時間が必要となる。
所要時間: 予習・復習には,190分以上の学習時間を要する
スケジュール
- 不法行為をめぐる問題 〔授業内容〕 不法行為の成立要件や効果に関する重要論点が多数含まれている事例問題を検討することにより,不法行為に関する理解を深める。 〔到達目標〕 ◯民法709条の各成立要件について,正確に説明することができる。 ◯使用者責任・監督者責任について,判例の立場を説明することができる。 ◯被害者の素因競合事例における減額の可能性に関する各種の考え方を説明することができる。
- 物権変動1:判例研究 〔授業内容〕 物権変動における背信的悪意者に関する裁判例を検討する。 〔到達目標〕 ◯判決文における当事者の主張を正確に把握するとともに,判決の意図・意義を正確に理解することができる。 ◯背信的悪意者について正確に理解し,適切に説明することができる。
- 物権変動2:対抗要件・背信的悪意者 〔授業内容〕 物権変動における対抗要件主義にまつわる事例問題を検討する。 〔到達目標〕 ◯物権変動における対抗要件主義とはどのような制度であるかを,意思主義との関係を含めて説明することができる。 ◯背信的悪意者について正確に理解するとともに,具体的事案のなかから考慮要素を抽出して当てはめることができる。
- 賃貸借をめぐる法律関係 〔授業内容〕 賃貸借契約における賃貸目的物の譲渡,賃借権の譲渡・賃借物の転貸があった場合に関する法律関係を中心にして,問題を検討する。 〔到達目標〕 〇不動産賃借権の対抗力に関する⺠法および特別法上の規律の内容について,説明することができる。 〇二重賃貸借の場合にどのように優劣が決せられるかについて,説明することができる。 〇賃貸不動産の譲渡に伴う賃貸人の地位の移転がどのような場合に生ずるかに関する改正⺠法上の規律の内容について,賃貸人の地位を移転する合意の有無,賃借権の対抗力の有無に留意しながら説明することができる。 〇賃借権の譲渡・賃借物の転貸とはどのようなものであるかについて,例を挙げて説明することができる。 〇適法な賃借権の譲渡・賃借物の転貸がされた場合の法律関係について,説明することができる。 〇賃借権の無断譲渡・賃借物の無断転貸がされた場合における法律関係を説明することができる。
- 抵当権における物上代位 〔授業内容〕 抵当権に基づく賃料債権への物上代位,賃料債権の譲渡・差押えと物上代位の優劣,賃料債権の第三債務者からの相殺と物上代位の優劣について検討する。併せて,動産売買先取特権に基づく物上代位についても取り上げる。 〔到達目標〕 〇抵当権について物上代位が認められるのはどのような場合かについて,判例・学説における議論の概要とその問題点を,具体例に即して説明することができる。 〇賃料債権に対する物上代位が認められるか,認められるとすればその根拠は何かを,平成15年の担保法改正を踏まえ,具体例に即して説明することができる。 〇賃料債権に対する物上代位と担保不動産収益執行に基づく賃料の取立てとの関係を説明することができる。 〇抵当権に基づく物上代位権を行使するについて,⺠法304条1項ただし書きの「払渡し又は引渡しの前に」という意義を,先取特権における物上代位と対比して,具体例に即して説明することができる。
- 譲渡担保をめぐる法律関係 〔授業内容〕 譲渡担保について考察する。譲渡担保の基本的な法律構成を確認したうえで,動産譲渡担保を中心に問題を検討する。 〔到達目標〕 〇譲渡担保とはどのような制度であるか,譲渡担保が認められるのはどのような場合かを,具体例に即して説明することができる。 〇譲渡担保が設定された場合に,当事者間において権利がどのように帰属するかについて基本的な考え方の対立を説明することができる。 〇譲渡担保の設定後,被担保債権の履行期到来前に,譲渡担保権設定者または譲渡担保権者の債権者は譲渡担保の目的物を差し押さえることができるか,差し押さえた場合に譲渡担保権者または譲渡担保権設定者はそれぞれどのような法的主張が可能であるかを,説明することができる。 〇譲渡担保の設定後,被担保債権の履行期到来前に,譲渡担保設定者または譲渡担保権者が,譲渡担保の目的物を第三者に処分した場合の法律関係を,具体例に即して説明することができる。 〇譲渡担保の被担保債権の履行期が到来した後に,譲渡担保権者はどのような方法によって満足を受けることができるかを,説明することができる。 〇譲渡担保の被担保債権の履行期が到来した後に,譲渡担保権者がいつまで譲渡担保の目的物を取り戻すことができるかを,判例・学説の状況を踏まえて説明することができる。
- 詐害行為取消権 〔授業内容〕 詐害行為取消権が問題となる事例問題を検討することにより,詐害行為取消制度について理解を深める。 〔到達目標〕 ◯詐害行為取消制度を説明することができる。 ◯「通謀的害意」とはなにかについて,説明することができる。 ◯「債務者」・「受益者」・「転得者」を適切に摘示することができる。 ◯詐害行為取消権の対象である行為について,具体例に即して説明することができる。
- 期末試験 〔到達目標〕 ◯民法に関する判例・学説について基本的な理解をするとともに,近年の議論状況についても把握する。 ◯比較的込み入った事案につき,判例・学説をふまえた分析・検討を行うことができる。
教科書
民法基礎Ⅰ・民法基礎Ⅱ・民法基礎Ⅳで使用中の教科書
参考書
書籍情報はありません。