国際環境法

専門職学位課程法学研究科

LWS54400

コース情報

担当教員: 堀口 健夫

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 木1

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: あり

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

30%

レポート

70%

その他

授業参加・平常点と期末レポートにより評価する。詳しくは初回で説明する。

0%

詳細情報

概要

越境大気汚染の防止,海洋生物資源の保存,地球温暖化の防止等,今日我が国が直面している環境問題の中には一国では対処できない問題が様々に存在しており,それらに対処するための国際法の規則や制度が発展してきている。この授業では,こうした環境分野の国際法(=国際環境法)の基本枠組や主要論点を講義する。環境分野においては,伝統的な国際法の理論や制度が問い直されつつあり,その意味においても,国際環境法の特性の理解を深めることは,より広く国際法秩序に対する理解を深めることでもある。また環境条約の目的の実現は各国の国内法制における実施に大きく依存していることから,そうした国際法と国内法との連関も検討の射程に入れつつ授業を進めていく。具体的には以下の「授業計画」に沿って進めていくが,参加者の関心等に応じて若干の変更はありうる。 なお授業では,毎回事前に配布するレジュメを用いる(ロヨラの授業掲示板等にアップする予定である)。

目標

・国際環境法の規範形成や実施の特色は何かといった法の基本構造に関わる問題について,知識の習得と論点の検討を行う。 ・国際環境法と国内環境法との関係について理解を深める ・越境汚染問題や海洋環境保護,地球温暖化防止といった個別の環境分野における国際法制度について,知識の習得と論点の検討を行う。 ・以上の検討を契機に,より広く国際法全般に対する理解を深める。

授業外の学習

毎回事前に配布されるレジュメを参考に,予め関連箇所に目を通して,自分なりに内容や疑問点等を整理したうえで授業に臨んでほしい。また,授業の進捗や理解度等をふまえ,教員より具体的な予習・復習課題を提示する場合もある。

所要時間: 予習復習あわせて190分を目安とする

スケジュール

  1. イントロダクション 講義内容や参考文献等を説明する。また国際環境法の全体像を解説する。 〔到達目標〕 ○ 国際環境法の構造・特質に関する全体像を把握する。 ○ 国際環境法の発展史の概観を理解する。 ○ 環境分野における国際法と国内法の関係の概観を理解する。
  2. 越境汚染問題(1) 越境汚染のケースを想定し,被害国(或いは加害国)として,一般国際法上どのような主張が可能か検討する。越境汚染に関わる国際法上の実体的・手続的義務を検討すると同時に,それらの義務違反の帰結を規律する国家責任法上の論点等を学ぶ。また国際環境問題への対処における,一般国際法上の制度の限界についても考える。 〔到達目標〕 ○ 越境汚染の事案に関わる一般国際法上の権利義務を検討する。 ○ 国際法上の義務違反の帰結を一般的に規律する国家責任法の制度を理解し,論点を検討する。 ○ 国際裁判等の紛争処理手続に関する論点を検討する。
  3. 越境汚染問題(2) 同上
  4. 環境条約を通じた国際規範の発展(1) 主に条約を基礎とした国際環境法の規範形成の特色について講義する。法源や条約法に関わる論点を検討する。 〔到達目標〕 ○ 国際法一般の規範形成の方式をふまえたうえで,環境分野における特色を理解する ○ 環境分野における法源や条約法に関わる論点を検討する。 ○ 環境条約の設立する条約機関(締約国会議等)による規範形成の現状を把握したうえで,論点を検討する。
  5. 環境条約を通じた国際規範の発展(2) 同上
  6. 環境条約の実施(1) 各締約国における環境条約の実施の特色と論点について講義する。国際法と国内法との関係や,履行確保の制度について検討する。 〔到達目標〕 ○ 環境条約の義務の履行として,各国の国内法制における規制が求められることが多いという環境分野の特質と,そこに含まれる問題を検討する。 ○ 国際環境法の実施における国内裁判所の役割について検討する ○ 環境条約で発展している履行確保の制度の特色を理解し,論点を検討する。
  7. 環境条約の実施(2) 同上
  8. 海洋環境の保護(1) 海洋汚染や海洋生物資源(魚・鯨等)に関する国際法について講義する。海洋環境保護のための国際法上の実体的・手続的義務を検討するほか,国家管轄権(=各国が自国国内法を定立・執行する権利)の配分の問題や,国内法制における実施についても検討する。 〔到達目標〕 ○ 海洋環境保護に関わる国家の権利義務を検討する。 ○ 海洋法秩序における国家管轄権の配分の特色と論点を検討する。 ○ 日本における国内実施の現状と論点に関する理解を深める。
  9. 海洋環境の保護(2) 同上
  10. 海洋環境の保護(3) 同上
  11. 生物・生態系の保護 より広く生物・生態系の保護に関わる国際条約(ワシントン条約,ラムサール条約,世界遺産条約,生物多様性条約)をとりあげ,それらの規制の特色と論点について講義する。またここでは,武力紛争時におけるそれらの条約の効力も検討する。 〔到達目標〕 ○ 上記の諸条約により領域国の主権がいかに制限されているかを検討する。 ○ 上記の諸条約と海洋生物の保全との関わりについても理解する。 ○ 武力紛争の発生が上記の諸条約の効力に与える影響を検討する。
  12. 宇宙環境の保護 スペースデブリ問題への対応を手がかりに,宇宙環境の保護に関わる規則の発展状況と,従来地球環境保護の文脈で発展してきた国際法の適用可能性について講義する。 〔到達目標〕 ○ スペースデブリ問題に対する国際法の発展状況を理解する。 ○ 宇宙法の基本原則や関連規則の理解を深める。 ○ 越境損害防止義務などの適用可能性について検討する。
  13. 気候変動への対処(1) 気候変動に対処するために締結された条約(パリ協定など)の内容を検討するとともに,気候変動による海面上昇が提起しうる国際法上の論点について講義する。 〔到達目標〕 ○ 京都議定書とパリ協定との規制方式の違いを理解する。 ○ 海面上昇による領土の水没が国家としての地位や海域に与える影響を検討する ○ 避難民の保護に関わる国際法規則を検討する
  14. 気候変動への対処(2) 同上

教科書

国際条約集は必ず手元に用意すること。

  • 国際条約集

    出版社: 有斐閣

参考書

  • 国際環境法講義(第2版)

    著者: 西井,鶴田編

    出版社: 有信堂高文社

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