企業環境法
専門職学位課程法学研究科
LWS54300
コース情報
担当教員: 筑紫 圭一
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 木1
形式: 対面授業
レベル: 700
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 不可
評価方法
リアクションペーパー
10%
レポート
70%
小テスト等
20%
その他
法科大学院の成績評価基本原則による。期末レポート70点,平常点30点とする。平常点の内訳は,①小テスト20点,②授業への参加・取組み10点とする。
0%
詳細情報
概要
企業の活動は一般論として環境負荷が大きく,その法的責任が歴史的に拡大してきた。本講義では,企業に対する法的統制の現状と課題を分析・検討する。とくに,規制者である行政の視点を踏まえつつ,被規制者である企業の視点に重きを置いて,現行の環境法制を検討することとしたい。
目標
具体的な環境紛争事例について,的確な法的分析を行うことができるようになる。
授業外の学習
本講義では,多くの学生にとって初めて触れることとなる概念が多くあるため,事前配布の講義資料の予習が不可欠である。以降の講義やレポート課題の出題内容に関わる重要な内容を含むので,次回講義までに必ず理解しておくこと。また,予告なく小テストを行うため,授業で扱った内容を毎回よく復習することが求められる。 ・事前講義資料の予習(100 分程度) ・前回授業の際に理解・解答できなかった内容を中心に復習する(90 分程度)
所要時間: 授業 1 回あたり 190 分以上
スケジュール
- 第1回 企業環境法の内容と特徴,企業と環境に関する基本的な考え方 [授業内容] 企業環境法の現状と課題を概説する。 [到達目標] ○企業環境法の概要とねらいを把握している。
- 第2回 日本の公害史と企業の民事責任① [授業内容] 日本の公害史について概説したのち,具体的事例(水質汚濁事例)の分析を通じて企業の民事責任を検討する。 [到達目標] ○判例理論の到達点を理解し,具体的事例の分析を行うことができる。
- 第3回 日本の公害史と企業の民事責任② [授業内容] 日本の公害史について概説したのち,具体的事例(大気汚染事例)の分析を通じて企業の民事責任を検討する。 [到達目標] ○判例理論の到達点を理解し,具体的事例の分析を行うことができる。
- 第4回 景観問題と企業の民事責任 [授業内容] 景観保護に関する法制度を概観したのち,景観問題に係る企業と周辺住民の紛争を素材として,企業の民事責任を検討する。 [到達目標] ○判例理論の到達点を理解し,具体的事例の分析を行うことができる。
- 第5回 土壌汚染問題と企業の民事責任 [授業内容] 土壌汚染問題の現状と関連する法制度を概観したのち,具体的事例の分析を通じて企業の民事責任を分析する。 [到達目標] ○土壌汚染に係る規制制度と裁判例の動向を理解している。
- 第6回 環境問題を起こした企業に対する刑事制裁① [授業内容] 環境問題を引き起こした企業に対する刑事制裁について,関連する法制度と裁判例を説明し,具体的な事例を分析する。公害罪法を重点的に扱う。 [到達目標] ○環境刑法の概要を理解し,公害罪法の意義と限界を理解している。
- 第7回 環境問題を起こした企業に対する刑事制裁② [授業内容] 環境問題を引き起こした企業に対する刑事制裁について,関連する法制度と裁判例を説明し,具体的な事例を分析する。個別環境法規の刑罰規定を重点的に扱う。 [到達目標] ○行政上の義務履行確保制度の特徴,個々の環境法規における刑罰規定の特徴と内容を理解している。
- 第8回 企業と行政規制① [授業内容] 環境規制の仕組みを概観したのち,具体的事案を素材として,規制に違反した企業がどういった対応を受けることになるかを検討する。実際の違反事例と処分例が多い廃棄物処理法を素材に検討する。 [到達目標] ○環境規制の基本的仕組み,廃棄物処理法の概要,規制執行に際して考慮される事項を理解している。
- 第9回 企業と行政規制② [授業内容] 実際の環境紛争事例を素材として,行政側から適法性を欠くと思われる対応を受けた場合に,企業側としてとるべき法的対応を検討する。 [到達目標] ○行政手続法,行政事件訴訟法,国家賠償法の概要を理解し,事案に応じて適切な法的対応を考えることができる。
- 第10回 企業と行政規制③ [授業内容] 実際の事案を素材として,合理性を欠くと思われる環境規制が新たに導入された場合に,どのように訴訟で争うべきかを検討する。 [到達目標] ○行政訴訟や国賠訴訟の概要を理解し,事案に応じて適切な訴訟戦略を立てることができる。
- 第11回 企業と行政規制④ [授業内容] 2000年代に続発した大企業の公害関係法令違反事例を取り上げ,その内容・要因・改善策を具体的に検討する。 [到達目標] ○環境法違反が発生する要因を理解し,問題解決の手法を様々な観点から検討することができる。
- 第12回 企業と行政規制⑤ [授業内容] 企業活動と行政上の環境損害回復制度(各種基金・補償制度,環境保険など)の概要を理解し,実際の適用が問題となる事例を分析する。 [到達目標] ○行政上の環境損害回復制度の内容・意義・限界を理解している。
- 第13回 企業の自主的環境対策とその促進 [授業内容] 企業の自主的な環境対策の現状を概観し,それを促進するための手法を具体的に検討する。 [到達目標] ○ソフトロー(環境投資,取引慣行,ISO,環境ラベルなど)の意味と内容を理解している。
- 第14回 地方自治体と企業間の公害防止協定 [授業内容] 地方自治体と企業の間で締結する公害防止協定の内容と役割を解説した上で,具体的な紛争事例の分析を踏まえて,その意義と限界を検討する。
- 第15回 期末レポート 上記の到達度を総合的に確認するため,期末レポートの提出を求める。
教科書
使用しない。講義資料は適宜配布する。テキスト・参考書も適宜紹介する。
参考書
『十訂ベーシック環境六法』
著者: 大塚・北村ほか
出版社: 第一法規・2022年