環境訴訟
専門職学位課程法学研究科
LWS54200
コース情報
担当教員: 越智 敏裕
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 木2
形式: 対面授業
レベル: 700
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 不可
評価方法
授業参加
15%
リアクションペーパー
15%
レポート
70%
その他
LS成績評価基準による。
0%
詳細情報
概要
民法及び行政法についての基礎的理解を有する受講者を対象に,主要な環境訴訟類型の判例・事例検討を通じて,様々な分野・段階における環境紛争を司法審査により解決する手法,すなわち環境訴訟の理論と実務を学ぶ。 授業では,主として個別的な環境紛争解決を念頭に置くが,環境訴訟とりわけ環境行政訴訟の政策形成機能にも着目する。その際には,必要に応じ比較法としてアメリカの環境訴訟に触れる。 訴訟の前提となる法制度や環境問題についての概説・確認は講義形式で行うが(一部は受講者の独習に委ねる),具体的な事例・裁判例の検討については,受講者の予習を前提として多方向的な授業を行う。なお,関連科目との役割分担及び時間的制約から,原発等一部の訴訟分野は取り扱わないか,軽く触れるにとどめる。
目標
主要な環境訴訟類型における高度の法的処理能力を養う。
授業外の学習
個別法の構造はテキストの学習で各自予復習を,訴訟部分は復習を中心に,それぞれ行ってほしい。
所要時間: 200分程度
スケジュール
- ~2. 水俣病国家賠償訴訟~環境訴訟の構造と概観・水質汚濁防止法と訴訟 環境法の原点である水俣病事件について第3次訴訟を中心に検討する。さらに,環境問題の解決における三権のあり方と司法審査の位置づけを踏まえた上で,環境諸分野における民事訴訟と行政訴訟の交錯状況,すなわち人格権・環境権等の権利概念を基礎とする民事訴訟と,行政による事前の環境規制を基礎とする行政訴訟の役割分担について整理する。また,環境訴訟と環境法政策・行政手続の関係に触れ,環境訴訟における長期的・全体的・複眼的視点の必要性を説明する。あわせて,水質汚濁防止法の理解を前提に,同法を巡る訴訟を概観する。 〔到達目標〕 三面関係紛争の理解,規制権限の不行使に関する基本的理解,水質汚濁防止法制の基本的理解,受忍限度論の位置づけ,定型的環境紛争に関する基本的理解
- 水俣病国家賠償訴訟~環境訴訟の構造と概観・水質汚濁防止法と訴訟(2) 同上
- ~4. 環境訴訟法総論(1)環境民事訴訟①・② まず,身近な生活妨害として,日照侵害,近隣騒音,道路騒音訴訟,景観訴訟を取り上げ,国家賠償を含む環境民事訴訟の理論と裁判例を概観する。騒音・日照規制等の概要及び受忍限度論を理解した上で,受忍限度論における行政法令違反の位置づけ等考慮要素の分析・検討を行う。 〔到達目標〕 国道43号線判決の理解,国賠法2条の「瑕疵」と受忍限度論の関係,抽象的差止請求,共同不法行為論の基本的理解,景観利益の法的保護性,成立要件,効果,国立最判の射程に関する基本的理解
- 環境訴訟法総論(2)環境民事訴訟② 同上
- ~6. 環境訴訟法総論(3)環境行政訴訟①・② まちづくり紛争,公共事業訴訟を題材に,環境行政訴訟の理論と裁判例を概観する。 〔到達目標〕 環境行政訴訟の理論(処分性,原告適格,裁量審査,訴訟類型),土地収用法(特に20条3号)の基本的理解
- 環境訴訟法総論(4)環境行政訴訟② 同上
- ~8.大気汚染訴訟(1) 大気汚染防止法の理解を前提に,大気汚染を巡る訴訟につき,四日市訴訟,道路公害訴訟を中心に概観する。 〔到達目標〕 大気汚染防止法,疫学的因果関係,共同不法行為論の基本的理解
- 大気汚染訴訟(2) 同上
- 廃棄物訴訟 廃棄物処理法の理解を前提に,廃棄物処理を巡る訴訟を概観する。 〔到達目標〕 産業廃棄物処理法制の確認,産業廃棄物処理業・施設を巡る民事訴訟・行政訴訟の基本的理解
- 土壌汚染訴訟 土壌汚染対策法の理解を前提に,土壌汚染を巡る環境訴訟,関連する環境企業法務を概観する。 〔到達目標〕 改正土対法の内容と意義,残された課題,汚染リスクと不動産取引に関する基本的理解
- ~12.自然保護法・環境影響評価法と訴訟(1) 自然保護法(自然公園法)を概観するとともに,民事訴訟,行政訴訟及び住民訴訟による自然保護訴訟の可能性と方向性(法政策)について検討する。また,環境アセスメントをめぐる法的論点もあわせて検討する。 〔到達目標〕 生物多様性保護法制,自然公園法の諸制度と課題,自然保護訴訟の意義と限界についての基本的理解
- 自然保護法・環境影響評価法と訴訟(2) 同上
- 公害紛争処理,環境ADR,近時の法改正事項 公害等調整委員会・公害審査会等,環境訴訟におけるADRの位置づけを,幾つかの裁定事例等を題材に理解する。また,近時の法改正事項のポイントを理解する。 〔到達目標〕 公調委等の公害紛争処理制度,公健法による行政上の救済制度の基本的理解,代表的事例の理解
- 環境訴訟の展望と法政策・行政手続,レビュー・セッション 民事訴訟・国賠訴訟・行政訴訟・住民訴訟や環境ADR等様々な環境紛争解決手法それぞれの役割分担を検討する。さらに,個別的環境紛争の解決を主目的とする環境訴訟の政策形成機能にも着目しつつ,一般的環境問題の解決を主目的とする環境法政策との関係及び両者の位置づけについて再確認する。最後に,環境分野における行政過程への参加と環境訴訟・環境法政策との関係及び課題について触れる。 〔到達目標〕 総復習,環境訴訟と環境法政策の関係等についての基本的理解
- 期末レポート 個別具体的な環境紛争事例を素材として,これを法的に解決するための訴訟理論の理解と応用能力を問う。 〔到達目標〕 水濁法・大防法・土対法・廃掃法・容リ法・自公法を中心とした具体的な紛争事例(行政訴訟・民事訴訟)につき,学説・裁判例を踏まえた処理ができるようにする。
教科書
毎回使用するので必ず持参してください。
環境訴訟法第3版(予定)
著者: 越智敏裕
出版社: 日本評論社/2024
参考書
別冊ジュリスト『環境法判例百選・第3版』(有斐閣,2018) 大塚直『環境法BASIC第4版』(有斐閣,2023) 大塚直『環境法第4版』(有斐閣,2020) 北村喜宣『環境法第6版』(弘文堂,2023) 大塚直+北村喜宣+高村ゆかり+島村健(編)『十訂ベーシック環境六法』(第一法規,2022年)