環境法基礎
専門職学位課程法学研究科
LWS54000
コース情報
担当教員: 筑紫 圭一
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 木4
形式: 対面授業
レベル: 700
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 不可
評価方法
レポート
授業内期末試験
授業期間中
小テスト等
その他
法科大学院の成績評価基本原則による。
詳細情報
概要
本講義では,環境法総論,環境法政策,環境訴訟に関する導入講義を行う。環境法総論としては,日本における環境法の発展経緯とともに,環境法の目的や基本的な考え方を説明する。環境法政策に関しては,様々な環境法政策アプローチ(強制的アプローチ,経済的アプローチ,情報的アプローチなど)に着目し,それぞれの特徴と導入可能な場面を説明する。また,いくつかの個別法を取り上げ,環境法の基本的な構造も解説する。環境訴訟の回においては,主要な環境判例を読み,その基本的な論点を説明する。なお,受講生の理解度を把握するため,小テストを2回実施するとともに,課題レポートの提出を1回求める。
目標
到達目標は,「環境法政策」「環境法実務演習」「環境訴訟」など,上位科目の履修に必要な基礎知識を身につけることである。
授業外の学習
本講義では,多くの学生にとって初めて触れることとなる概念が多くあるため,事前配布の講義資料の予習が不可欠である。以降の講義やレポート課題の出題内容に関わる重要な内容を含むので,次回講義までに必ず理解しておくこと。また,予告なく小テストを行うため,授業で扱った内容を毎回よく復習することが求められる。 ・事前講義資料の予習(100 分程度) ・前回授業の際に理解・解答できなかった内容を中心に復習する(90 分程度)
所要時間: 授業 1 回あたり 190 分以上
スケジュール
- 第1回 イントロダクション 〔授業内容〕 ・日本における環境法の発展経緯とともに,規制の役割を説明する。 ・コモンズの悲劇,コースの定理など,環境経済学の議論を説明する。 〔到達目標〕 ○日本における環境法の展開を説明することができる。 ○環境経済学の基本用語の意味を理解し,その内容を説明することができる。
- 第2回 環境法総論① 〔授業内容〕 ・日本の環境法体系について解説する。政省令など,行政立法が果たしている役割についても説明する。 ・公害対策基本法と環境基本法を対比しながら,環境法の目的や基本理念を説明する。 ・環境法の基本的考え方(汚染者支払原則,拡大生産者責任,予防原則など)の意義と内容について解説する。また,それらの考え方を反映している制度をいくつか取り上げ,説明を加える。 〔到達目標〕 ○環境基本法を頂点とする日本の環境法体系について説明することができる。 ○公害対策基本法と環境基本法の異同を具体的に説明することができる。 ○環境法の基本的考え方について,その意義や適用例を具体的に説明することができる。
- 第3回 環境法総論② 〔授業内容〕 ・国の環境法と自治体の環境条例との関係について説明する。環境条例に関する裁判例を解説する。 ・環境権・自然享有権・環境配慮義務の意義・内容について説明する。 〔到達目標〕 ○環境条例による規制が必要とされる背景や理由を理解している。環境条例の適法性に関する代表的な裁判例の内容を理解している。 ○環境権・自然享有権の内容と提唱された背景を理解している。環境配慮義務の内容と実定法上の根拠を説明することができる。
- 第4回 環境法政策① 〔授業内容〕 ・環境法政策アプローチ(強制的アプローチ,経済的アプローチ,情報的アプローチなど)を概観し,それぞれの内容と特徴を説明する。 ・各アプローチの適用例を紹介するとともに,その理由を説明する。 〔到達目標〕 ○強制的アプローチの基本的仕組みと適用に適した場面・問題を十分に理解している。 ○その他のアプローチについても,その内容と適用例を十分に理解している。
- 第5回 環境法政策② [授業内容] ・強制的アプローチの基本的仕組みとして,環境基準と排出基準について説明する。 ・排出基準と総量規制との関係について説明する。 〔到達目標〕 ○環境基準と排出基準の法的性格について説明することができる。 ○排出基準と総量規制との関係を説明することができる。
- 第6回 環境法政策③ 〔授業内容〕 ・地球温暖化対策法を取り上げ,情報的アプローチが重視されてきたことを解説する。 ・今後活用が期待されている経済的アプローチの具体的内容を説明する。 〔到達目標〕 ○日本の温暖化政策の特徴を説明することができる。 ○現在検討されている経済的アプローチの内容を具体的に説明することができる。
- 第7回 個別環境法① 〔授業内容〕 ・汚染防止法制(大気汚染防止法)の目的や仕組みを説明する。 ・主要な法改正の内容とその経緯・背景を解説する。 〔到達目標〕 ○大気汚染防止法のVOC規制と有害大気汚染物質対策の内容とその背景にある環境の基本的考え方を理解している。 ○移動排出源規制の仕組みを十分に理解している。
- 第8回 個別環境法② 〔授業内容〕 ・汚染防止法制(水質汚濁防止法)の目的や仕組みを説明する。 ・主要な法改正の内容とその経緯・背景を解説する。 〔到達目標〕 ○水質汚濁防止法の内容とその背景にある環境の基本的考え方を理解している。 ○法執行上の特徴と問題点を十分に理解している。
- 第9回 個別環境法③ 〔授業内容〕 ・汚染防止法制(土壌汚染対策法)の目的や仕組みを説明する。 ・主要な法改正の内容とその経緯・背景を解説する。 〔到達目標〕 ○土壌汚染対策法の内容・改正とその背景にある環境の基本的考え方を理解している。 ○同法に係る紛争事例とその論点を十分に理解している。
- 第10回 個別環境法④ 〔授業内容〕 ・自然公園法や自然環境保全法の目的や仕組みを説明する。 ・主な法改正の内容とその経緯・背景を解説する。 〔到達目標〕 ○自然公園法と自然環境保全法の目的と規制制度について説明することができる。 ○自然公園法2002年・2009年改正について理解している。
- 第11回 個別環境法⑤ 〔授業内容〕 ・環境影響評価法の目的や仕組みを説明する。 ・主な法改正の内容とその経緯・背景を解説する。 〔到達目標〕 ○環境影響評価法の目的と規制制度について説明することができる。 ○同法の改正と残された課題について理解している。
- 第12回 個別環境法⑥ 〔授業内容〕 ・廃棄物・リサイクル法制(循基法,廃棄物処理法,容リ法)の目的や仕組みを説明する。 ・主要な法改正の内容とその経緯・背景を解説する。 〔到達目標〕 ○循基法,廃棄物処理法,容リ法の仕組みを十分に理解している。 ○廃棄物処理法主要改正の内容を十分に理解している。
- 第13回 環境訴訟① 〔授業内容〕 ・環境紛争の構図(二面関係・三面関係)について説明する。 ・四大公害訴訟の内容と意義について解説する。 ・環境民事訴訟の論点と主要判例について解説する。 ・環境民事訴訟の最新判例を具体的に検討する。 〔到達目標〕 ○四大公害訴訟の内容とその意義を十分に理解している。 ○差止訴訟・損害賠償訴訟の根拠,受忍限度論について説明することができる。
- 第14回 環境訴訟② 〔授業内容〕 ・環境行政訴訟の論点と主要判例について説明する。 ・環境行政訴訟の最新判例を具体的に検討する。 〔到達目標〕 ○環境行政訴訟で争点となりやすい訴訟要件と代表的判例を理解している。
- 第15回 期末試験 上記の到達度を最後に確認するために,期末試験(90分)を実施する。授業期間内に実施し,補講の機会を別途設ける。
教科書
特に指定しない。資料を適宜TKCにアップする。
参考書
『環境法 第6版』
著者: 北村喜宣
出版社: 弘文堂,2023年
『環境訴訟法 第2版』
著者: 越智敏裕
出版社: 日本評論社,2020年
十訂ベーシック環境六法
著者: 大塚・北村ほか
出版社: 第一法規・2022年