国際法基礎

専門職学位課程法学研究科

LWS53200

コース情報

担当教員: 江藤 淳一

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 木4

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: あり

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

30%

レポート

70%

その他

法科大学院の成績評価基本原則による。平常点30%(授業への参加10%,課題への取り組み20%),期末試験の得点70%。欠席の場合には減点の評価事由として取り扱う。 ただし,期末試験は,レポートによる試験方式(持帰り試験)とする。

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詳細情報

概要

国際法は,基本的には国家間の関係を規律する法であるが,国内法令の制定を義務づけたり,個人の権利を保障したり,国内裁判所の管轄権行使を制限したりすることもある。ゆえに,国内法実務上も,国際法の基本的な枠組みを知っておく必要がある。 この講義では,国際法未修者を対象に,法源,国際法と国内法の関係,国家管轄権の適用範囲等の国際法の基本問題を中心に説明を行い,適宜,学生の発言を求めながら進める。 基本的には教科書の読解を中心とするが,あわせて事例・判例などを記載した教材をTKCを通じて配布する。

目標

次の知識や理解を得ることを目標とする。 1.国際法の基本的な概念や原則に関する知識 2.実務において国際法がとくに問題になる場面の理解 (たとえば,国際法と国内法の関係,国家管轄権行使の態様,外国国家の裁判権免除) 3.具体的な問題に関する国際法上の請求の立て方の理解 これにより,将来の国際的な法実務に必要な基礎づくりをする。

授業外の学習

【予習】(所要時間・各回120分) 1.教科書の指定箇所を熟読し,それに合わせて教材に記載された確認質問や課題に答えられるよう準備する。 2.配布する教材に記載される判例や事例等を頭にいれるようにしておく。 【復習】(所要時間・各回70) 1.授業で指摘された論点に関し,教科書の記載を読み,自分の理解度を確認する。 2.教材に記載された事例問題を自分で考えてみる。

所要時間: 予習・復習あわせて授業1回あたり190分以上の学習を要する

スケジュール

  1. 国際法の法的性質 〔授業内容〕 最近の日本をめぐる国際問題等を素材にしつつ,国際法の法的性質について考える。 〔到達目標〕 ・主権国家の合意が国際法の基盤であることを理解する。 ・条約の履行がどのようにして担保されるかを理解する。 ・国際法における強制力の行使の限界を理解する。
  2. 国際法の法源 〔授業内容〕 国際法の法源のうち,とくに慣習国際法の成立要件を中心として説明し,あわせて法の一般原則や国連総会決議などのソフト・ローなどについても検討を加える。 〔到達目標〕 ・慣習国際法の成立要件について理解する。 ・条約と慣習国際法以外の法源の意義を理解する。 ・国際社会でソフト・ローが果たす役割と他の法源との関係を理解する。
  3. 国際法と国内法の関係 〔授業内容〕 国際法と国内法の関係についての理論上の問題を検討し,実際における両者の関係について,国際秩序における国内法の地位,国内秩序における国際法の地位について検討する。 〔到達目標〕 ・国際法と国内法の関係に関する学説の歴史的変遷を理解する。 ・国際法秩序における国内法の援用禁止の原則を理解する。 ・国内法秩序において国際法が効力をもつ態様を理解する。
  4. 条約法 〔授業内容〕条約の締結,効力,解釈,修了等について,条約法条約の条文に従いながら,事例を踏まえて検討する。 〔到達目標〕 ・条約の締結手続のそれぞれが有している意義について理解する。 ・留保の許容性と効果,解釈宣言との相違について理解する。 ・条約の無効原因や終了原因について理解する。
  5. 国家と領域 〔授業内容〕 国家の要件や承認の制度を説明したうえで,国家領域の取得や領土紛争とその解決について検討する。 〔到達目標〕 ・国家の成立要件と国家承認の関係について理解する。 ・国家領域の取得方式について理解する。 ・領域紛争の解決に関しいかなる法理が適用されるかを理解する。
  6. 国家の基本的権利義務 〔授業内容〕 国家主権の概念を検討し,それに関連する国家平等や不干渉義務の原則について具体的に検討する。 〔到達目標〕 ・国家主権に対して国際法がどのような制限を課しているかを理解する。 ・国家平等がどのような意味をもつかを理解する。 ・何が国際法に違反する干渉行為にあたるのかを理解する。
  7. 国家管轄権(1) 〔授業内容〕 国家管轄権の意義と国家管轄権の行使に関する国際法の基準について,とくに刑事管轄権の問題を中心に検討を加える。 〔到達目標〕 ・管轄権の類型とそれぞれの管轄権行使の根拠を理解する。 ・管轄権が競合する場合における国際法の原則について理解する。 ・管轄権行使の拡張のためにどのような考え方を採用してきたかを理解する。
  8. 国家管轄権(2) 〔授業内容〕 国家免除を中心として,国家管轄権の行使を制限する事由に関し,最近の発展をふまえて検討する。 〔到達目標〕 ・絶対的免除主義から制限的免除主義への移行について理解する。 ・制限的免除主義の具体的内容を理解する。 ・裁判権の免除と強制執行の免除の違いについて理解する。
  9. 外交関係法 〔授業内容〕 外交使節団の任務,外交特権,国家元首等の地位等について,国際裁判例を交えて具体的な問題について検討する。 〔到達目標〕 ・外交使節団の公館に関する接受国の義務を理解する。 ・外交官と領事の特権免除の原則について理解する。 ・国家元首・外相等の特権免除について理解する。
  10. 海洋法(1) 〔授業内容〕 海洋法の基本的制度をその歴史的形成過程をふまえて検討する。とくに,領海制度と公海制度を中心として,無害通航権などの船舶の航行に関する原則や規則を説明する。 〔到達目標〕 ・公海と領海の二元的制度の成立の経緯を理解する。 ・領海における無害通航権を中心として沿岸国と外国船舶の権利義務を理解する。 ・公海自由の原則と公海における秩序維持の仕組みを理解する。
  11. 海洋法(2) 新海洋法秩序とよばれる新たな海洋法制度について,排他的経済水域の制度,大陸棚の制度など,資源中心の海洋制度に注目して説明する。国家間でしばしば争いとなる大陸棚や排他的経済水域の境界画定の問題も検討する。 〔到達目標〕 ・排他的経済水域の成立経緯について,途上国の国際社会参加に照らして理解する。 ・大陸棚や排他的経済水域における国家の権利の性質について理解する。 ・大陸棚や排他的経済水域の境界画定の法理の発展を理解する。
  12. 個人に対する国際法の規制 〔授業内容〕 国際法における個人の位置づけについて検討する。とくに外国人の出入国,難民の法的地位,犯罪人引渡制度などをとりあげる。加えて,個人が国際犯罪につき国際手続により処罰されうることを検討する。 〔到達目標〕 ・国際法上で国籍のもつ意義を理解する。 ・外国人の出入国にかかわる原則を理解する。 ・個人の国際犯罪に関する国際法の発展を理解する。
  13. 国家責任法 〔授業内容〕 国家の国際違法行為によって成立する国際責任の問題について検討する。国家責任法の成立の経緯,国家責任の発生要件,国家責任の追及要件,国家責任の履行を中心として検討する。 〔到達目標〕 ・国家への行為の帰属という国際法に独自の主体的要件について理解する。 ・国家責任法の機能が現代国際法の特徴に比例して変質しうることを理解する。 ・外交的保護権の制度とその行使の要件について理解する。
  14. 国際裁判制度 〔授業内容〕 国際紛争の解決に関する原則を説明し,とくに国際裁判を中心とした紛争の解決手続を概観する。 〔到達目標〕 ・国際紛争の平和的解決の原則の意義を理解する ・国際司法裁判所の管轄権の根拠について理解する。 ・国際司法裁判所の付随的手続の基本的事項を理解する。
  15. 期末レポート 事例式問題 国際法の主要な規定を正しく理解し,具体的な事案に関し国家がいかなる主張を行い,これに対していかなる判断が可能かについて答えられるレベルを目標とする。

教科書

下記のテキストのほかに,関連する判例・資料等を記載した教材を配布する。

  • 『国際法講義(第2版)』

    著者: 岩沢雄司

    出版社: 東京大学出版会・2023年

参考書

『国際条約集』(有斐閣)を授業に持参すること。

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