倒産処理法 II

専門職学位課程法学研究科

LWS52820

コース情報

担当教員: 田頭 章一

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 火3

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: なし

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

15%

レポート

70%

小テスト等

15%

その他

基本的に法科大学院の成績評価基準による。

0%

詳細情報

概要

倒産処理法Ⅰの履修等により破産手続の学修を済ませていることを前提に,事業および経済生活の再生を目的とする手続(主として民事再生)を中心に,判例・学説上の重要問題を取り上げ,発展的な問題分析を行う。

目標

この講義の目標は,受講生が,民事再生手続を含めた倒産処理手続全体の体系的知識を基礎にして,倒産法に関する具体的法律問題解決のための基本的知識を身につけ,発展的な問題分析能力を高めることにある。

授業外の学習

予習は,テキスト等の購読,事前配布資料の検討を求める(90分程度)。 復習は,講義で理解が不十分であった部分の確認と,必要に応じ講義で触れた文献等の検討を求める(100分程度)。

所要時間: 190分

スケジュール

  1. ガイダンス・倒産手続の基礎と民事再生手続 本講義の進行方法,目的を説明する。また,倒産手続全体についての基本的知識を前提にして,民事再生手続を中心に事業および個人の経済生活再生のための手続の意義とその概要を説明する。 〔到達目標〕 ○ 倒産手続の全体像の中での破産手続と民事再生手続の共通点と相違点を理解する。 ○民事再生手続(通常手続と個人再生手続)の基本的流れを理解する。
  2. 再生手続の申立てと開始に伴う問題点 再生手続の申立手続についての諸問題や開始決定の効果等について説明する。再生債務者の地位(とくに「第三者性」の議論)などについての問題点を具体的事例に即して検討する。 〔到達目標〕 ○再生手続開始の申立てから開始決定までの手続を理解する。 ○再生手続開始後の法律行為の効力について,条文や判例理論を踏まえて説明することができる。 ○再生債務者の「第三者性」に関する解釈問題つにき,対抗関係など具体的なケースでの解決を導くことができる。
  3. 民事再生手続における再生債権の処遇 再生債権の概念やその行使における届出・調査・確定という手続的流れを確認し,自認債権など再生手続に特有の債権類型や平等原則の例外,さらには多数債務者関係の処理方法などにつき,基本的演習問題を用いて検討する。 〔到達目標〕 ○再生債権者の平等原則とその例外の意義を理解し,具体例における論点につき議論できる。 ○多数債務者関係処理の基本原則を踏まえて,再生手続における具体的事例に対処できるようにする。
  4. 再生債権・共益債権に関する重要問題の検討 破産手続における財団債権と比較しながら,再生手続における共益債権および一般優先債権の取扱いについて説明し,いわゆるDIPファイナンスの共益債権化など,個別論点について設例を用いて検討する。 〔到達目標〕 ○再生手続における共益債権と一般優先債権などの取扱いの意義について理解し,弁済による代位によって共益債権を得た者の地位など重要論点について,判例をふまえて議論できるようになる。 ○DIPファイナンス債権の優先的取り扱いの実務的意義を理解し,その限界について議論できる。
  5. 取戻権・担保権の処遇に関する重要問題の検討 再生債務者財産との関係での取戻権の意義について確認した後,再生手続における別除権の処遇,さらには,担保権消滅請求制度や「別除権協定」の意義について説明し,重要な論点につき検討する。 〔到達目標〕 ○破産手続と再生手続における担保権の処遇の違いと,その理由について説明できるようになる。 ○「別除権協定」の意義とその一般的内容について説明できる。
  6. 担保権の処遇に関する重要問題の検討(続き) 非典型担保や商事留置権の処理など重要論点について,事例問題を活用しつつ,検討を加える。担保法制の見直しの主要論点にもふれる。 〔到達目標〕 ○非典型担保を含む各種担保権の処遇について,基本的な説明ができるようになる。 ○担保目的財産の評価の問題など,応用的な論点について理解する。 ○担保法制に見直しの重要論点を理解する。
  7. 相殺権に関する重要問題の検討 相殺権について,民事再生法による基本的規律について説明した後,相殺制限による再生債務者財産確保の要請と相殺への合理的(正当な)期待の保護との調整が問題となる各種事例につき,近時の判例等を用いた検討を行う。 〔到達目標〕 ○相殺の実体的・手続的機能についての基本的知識を前提に,民事再生法における相殺の範囲の拡張と制限の内容およびその根拠について理解する。 ○民事再生法93条および93条の2を中心にした相殺制限規定に関する重要問題の解決に向けて議論できるようになる。
  8. 相殺権(続き)・否認権に関する重要問題の検討 前回に引き続き,相殺権の制限に関する解釈問題を検討する。また,否認権について基本的知識があることを前提に,詐害行為否認についての基本問題を検討する。 〔到達目標〕 ○否認制度(破産と民事再生の違い)の全体像について説明できるようになる。 ○詐害行為否認の要件などに関する判例等を踏まえて,基本的事例問題に対応できるようにする。 ○否認の効果について法令を適切に適用して,結論を導くことができる。
  9. 否認権に関する重要問題の検討(続き) 否認権,とくに偏頗行為の否認について,重要問題を検討する。また,否認権行使に関する諸問題(価額償還請求等)についても,事例に基づいて検討する。 ○再生手続における偏頗行為否認に関する重要判例・論点を理解する。 ○再生手続における否認権行使に関する諸論点を説明できるようになる。
  10. 再生手続における契約関係の処理(一般原則と賃貸借契約) 再生手続における契約関係の処理について,民事再生法49条等による法律上の規律を踏まえ,賃貸借契約につき重要な解釈問題を取り上げ,検討する。 〔到達目標〕 ○再生手続における契約の処理に関する一般原則を理解する。 ○賃貸借契約の取扱いに関する具体的解釈問題につき,条文,判例理論および学説を踏まえて解決を導くことができるようになる。
  11. 再生手続における契約関係の処理に関する諸問題 請負契約,委任契約,継続的供給契約など重要な契約について,再生手続における重要論点を判例を参考にしながら検討する。ファイナンス・リースなどについても,その性格と法的規律の在り方について,判例を取り上げて検討する。 〔到達目標〕 ○請負契約など重要な契約の性格を理解し,設例問題における個別論点を抽出し,解決のための道筋を示すことができる。 ○ファイナンス・リース契約など複合的な性格をもつ契約について,基本的論点を理解する。
  12. 再生手続の進行,再生計画認可までの手続 再生手続の進行や終了形態を確認しつつ,法人役員の責任追及や再生債務者財産の管理の規律を説明し,再生計画(案)の策定・認可に向けての手続の流れを解説する。 〔到達目標〕 ○再生手続における財産管理の方法,再生計画策定・決議・認可手続の流れを理解する。 ○再生手続における事業譲渡や法人役員の責任追及など,重要な判例上・実務上の意義を理解し,そこにおける具体的問題点につき議論することができる。
  13. 再生計画認可の要件に関する問題点の検討,手続間の相互関係 再生計画の認可要件に関する判例を説明・検討する。また,再生手続から破産手続への移行を中心に,手続間の移行に伴う諸問題についても解説する。国際倒産法制の概要も時間が許す限り説明するが,十分な時間が取れないときは,自習用の資料の用意・文献の紹介等で対応する。 〔到達目標〕 ○再生計画の認可に関する判例を学び,それに基づいて個別問題について議論できるようになる。 ○再生手続から破産手続への移行等に関する諸問題について理解する。
  14. 個人再生手続の特殊問題 多様な多重債務整理方法の中における,個人再生手続の意義を説明し,重要な解釈問題を重点的に検討する。 〔到達目標〕 ○個人再生手続による多重債務処理の特長と手続の流れを理解する。 ○「最低弁済額」,「可処分所得」など個人再生手続に特有の概念を理解し,個人再生計画認可の要件など重要な論点について,議論できる知識を身につける。
  15. 〔本講義全体の到達目標〕 この講義の目標は,受講生が,民事再生手続を含む倒産処理手続の法的諸問題を正確に理解し,高度な設例問題を解決できる分析能力を身につけることである。

教科書

加藤哲夫=山本研編『プロセス講義倒産法』(信山社,2023年)

    参考書

    松下=菱田編『倒産判例百選〔第6版〕』(有斐閣,2021年)(必須) 田頭章一『講義破産法・民事再生法』(有斐閣,2016年) 田頭章一「倒産法入門(第2版)(日本経済新聞出版社,2016年)

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