倒産処理法 I

専門職学位課程法学研究科

LWS52810

コース情報

担当教員: 田頭 章一

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 月1

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: なし

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

15%

レポート

70%

小テスト等

15%

その他

基本的に法科大学院の成績評価基準による。

0%

詳細情報

概要

民事法の基礎知識を有する学生を対象に,倒産処理法の基礎知識と破産法の基本的問題を講義する。本年度から,倒産処理法ⅠとⅡに分け,本講義においては,主として倒産法の入門的知識とともに,破産手続(法人・個人)の概要と基本問題を取り扱う。

目標

この講義の目標は,受講生が,企業および個人の倒産処理法制の全体像を理解し,破産手続の基礎知識を修得することにより,今後の倒産法分野における発展的学習のための基本的知識を身につけることである。

授業外の学習

予習は,テキスト等の購読,事前配布資料の検討を求める(90分程度)。 復習は,講義で理解が不十分であった部分の確認・補充と,必要に応じ講義で触れた文献等の検討を求める(100分程度)。

所要時間: 190分

スケジュール

  1. ガイダンス・倒産処理手続の基礎 倒産事件の基本的流れを,設例を利用しつつ解説することによって,倒産手続全体の具体的なイメージを持ってもらう。また,倒産手続の存在意義,倒産手続の歴史,倒産統計などにふれた上で,破産手続の目的及び基本的流れなどを学ぶ。 〔到達目標〕 ○ 倒産手続の存在意義,倒産手続の基本的分類と破産手続の目的の理解 ○ 倒産手続利用の現状の理解 ○ 破産手続の流れの理解
  2. 破産手続開始の申立てと保全措置 破産手続開始の申立てに関連する諸問題(破産能力,破産原因等)や手続開始前の保全措置などについて,整理して解説する。 〔到達目標〕 ○破産手続開始の申立ての意味およびその時点における法的規律の重要性を理解する。 ○破産申立手続および保全措置の流れと内容を説明できるようになる。
  3. 破産手続開始とその効力(手続機関の地位を含む) 破産手続の開始によって,破産者,破産債権者などについて生ずる効力,さらには従前からの法律関係がいかなる影響を受けるかについて,概要を説明する。破産手続の機関の概要,とくに破産管財人の法的地位(とくに「第三者性」の議論)について説明する。 〔到達目標〕 ○破産手続開始の効力を,破産手続の目的の観点から理解できる。 ○手続開始後の法律行為の効力に関する規律をめぐる基本問題につき,条文や判例を踏まえて説明できる。 ○破産管財人の「第三者性」の意味につき説明できる。
  4. 破産手続における各種債権の処遇 破産債権の定義を説明した上で,その届出・調査・確定という手続的流れを概説し,その平等原則の例外や多数債務者関係の取扱いなど重要な論点を検討する。また,財団債権については,破産債権との違いを明らかにしつつ,重要な具体例を取り上げ,近時の基本判例を検討する。 〔到達目標〕 ○破産債権の届出・調査・確定の手続を理解する。 ○多数債務者関係処理の考え方を理解し,具体的事例に対処できる。 ○財団債権については,その具体例をその根拠と併せて理解し,判例上の重要論点について,理解する。
  5. 破産財団の法的規律・破産財団の変動(取戻権・別除権) 破産財団の意義の意義を説明し,その変動過程につき,まず,取戻権と担保権の処遇に関する問題点を取り上げて,解説・検討する。取戻権については,その基本的な意義のほか,信託との関係での取戻権の範囲などの問題を取り上げる。また,担保権の処遇については,手続ごとの処理方法の違いを踏まえて,破産手続における別除権の概要を説明する。 〔到達目標〕 ○いわゆる「特別の取戻権」を含む取戻権の内容を理解し,預金債権の所属などに関連して生じた判例上の問題点を理解する。 ○破産手続における担保権の処遇とその根拠について理解する。
  6. 破産財団の変動(別除権・続き) 担保権の処遇につき,各種担保類型における特殊問題(立法課題を含む)や,担保権消滅請求制度をめぐる解釈問題などについて,検討する。 〔到達目標〕 ○根抵当権や非典型担保などに関する特殊問題について,説明できる。 ○担保権消滅請求等に関する重要問題を理解し,基本的設例問題にも対応できるようにする。
  7. 破産財団の変動(相殺権総論) 相殺権について,破産法による基本的規律について説明した後,相殺制限による破産財団確保の要請と相殺への合理的(正当な)期待の保護との調整が問題となる基本事例につき,概説する 〔到達目標〕 ○相殺の実体的・手続的機能を踏まえて,破産手続における相殺の範囲の拡張と制限の内容およびその根拠について理解する。
  8. 破産財団の変動(相殺権の制限・続き) 前回に引き続き,破産手続における相殺権の制限の意味につき説明し,判例を踏まえて,重要論点を解説・検討する。 ○破産法71条および72条を中心にした相殺制限規定の重要な解釈問題の意味を理解し,基本的事例の解決に対応できるようになる。
  9. 破産財団の変動(否認権総論・詐害行為否認) 否認権の意義やその一般的要件の概要を解説したうえで,詐害行為否認を中心に,重要な解釈問題を検討する。また,否認権の行使およびその効果をめぐる法律問題についても解説する。 〔到達目標〕 ○否認制度(破産と民事再生の違い,民法上の詐害行為取消権との違いも含む)の意義およびその基本類型を理解する。 ○詐害行為否認の要件に関する判例等を踏まえて,基本的事例問題に対応できるようにする。
  10. 破産財団の変動(偏頗行為否認,特殊な否認など) 破産手続における偏頗行為の否認,特殊な否認等について判例等を引用しつつ説明し,否認の効果などにも言及する。 〔到達目標〕 ○偏頗行為否認,転得者に対する否認などの意義を理解し,重要判例の論点を説明できる。 ○否認の効果に関する破産法の規律を説明できる。
  11. 破産手続における契約関係の処遇(一般原則) 破産手続開始による法律関係の規律の基本原則を確認した後,破産手続開始による契約関係の処理について,破産法53条等による規律の概要を説明する。また,貸借契約に関する解釈問題を検討する。 〔到達目標〕 ○破産法53条等の規律の意味と内容を理解する。 ○賃貸借契約の処理に関する諸問題について,判例・学説を踏まえて,各論点について説明できるようになる。
  12. 破産手続における契約関係の処遇(各種契約の処遇) 請負契約等,各種契約についての民法,破産法の規定の意味を解説し,それぞれの契約の処理に関する諸問題を検討する。 〔到達目標〕 ○請負契約など重要な契約の性格を理解し,その破産手続上の処理に関する具体的解釈問題につき,条文,判例および学説を踏まえて解決を導くことができるようになる。 ○フランチャイズ契約など各種契約の処理に関して,基本的論点を理解する。
  13. 破産手続の進行と終了 破産手続の流れや終了形態を理解しつつ,法人役員の責任追及や破産財団財産の放棄など破産財団管理をめぐる問題点を取り上げ,財産の換価・配当手続における問題点を解説する。 〔到達目標〕 ○破産手続における財団管理の方法,配当等の手続における諸問題を理解する。 ○法人役員の責任追及や財団財産放棄などに関する判例上・実務上の論点を説明できるようになる。
  14. 個人(消費者)破産の特殊問題 個人多重債務問題の背景(とくに消費者信用の拡大)をふまえつつ,特定調停などを含む債務整理方法のなかでの破産手続の存在意義とその手続の流れを解説する。個人破産における自由財産の範囲,免責不許可事由などに関する解釈問題を取り上げて検討する。 〔到達目標〕 ○消費者倒産処理のための諸手続の中での破産・免責手続の意義を理解する。 ○消費者破産手続における自由財産の範囲,免責不許可要件など,消費者倒産手続に関する重要な法律問題について議論できる。
  15. 〔全体の到達目標〕 この講義の目標は,受講生が,倒産処理手続の概要を理解し,企業および個人の破産手続の概要とそこにおける法的論点を学習することによって,この分野における具体的法律問題解決のための基礎知識を得ることである。

教科書

加藤哲夫=山本研編『プロセス講義倒産法』(信山社,2023年)

    参考書

    松下=菱田編『倒産判例百選〔第6版〕』(有斐閣,2021年)(必須) 田頭章一『講義破産法・民事再生法』(有斐閣,2016年) 田頭章一「倒産法入門(第2版)(日本経済新聞出版社,2016年)

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