経済法 II

専門職学位課程法学研究科

LWS52500

コース情報

担当教員: 楠 茂樹

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 月6

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: あり

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

30%

レポート

70%

その他

法科大学院の成績評価基本原則による。

0%

詳細情報

概要

「経済法Ⅰ」の履修を前提として,独占禁止法の主要規制である不当な取引制限,私的独占,不公正な取引方法等の具体的ケースを素材に事例分析を行う。 原則,本学法科大学院開講の「経済法Ⅰ」単位取得者にのみ「経済法Ⅱ」の受講を認める。例外的に法科大学院レベルの経済法入門的知識があると認められる場合に限って,この授業への参加を認める。その場合には受講希望者は事前に法科大学院事務室を通じて担当教員に連絡し,相談すること(面談等を通じて基礎的知識の有無を確認する)。 ・講義に加えて学生からの報告,討論の形式で行う。報告を求められた受講生は一定期日までに指定されたケースの事案処理に係る文書等を作成し,担当教員に提出をする。 ・授業では提出された資料に対して講評を行い,徹底的に討論する。その後,次回の課題についての説明,解説を行う。 ・受講生とは必要に応じて適宜ZOOM等を通じた個別面談を実施し,集中的な質疑応答の時間を設ける(適宜E-mailでの質問にも応じる)

目標

各回の到達目標参照。

授業外の学習

授業形態は講義だが,適宜学生からの報告を求めるので,十分な準備が必要となる(8〜10時間)。報告がない場合も,事前に指定された範囲について一回当たり4〜5時間程度の予習,復習が求められる。

所要時間: 5〜10時間程度

スケジュール

  1. 第1回 〔授業内容〕 .準備作業: 独占禁止法の全体像を確認するとともに,2回目以降の個別ケースの検討のためのサンプル解説(前記『ケースブック』から選んだ1ケース)を行う。事案の読み方,違反要件に関連する事実の抽出の仕方,さらには独占禁止法特有の事案処理のポイントを解説するとともに,練習問題の検討を,時間をかけて行う。 〔到達目標〕 ○事案処理のイメージを持つ。
  2. 第2回 〔授業内容〕 不当な取引制限Ⅰ: 不当な取引制限規制にかかわるケースを検討する。具体的には,共同性の要件が問題になったケース,基本合意と個別調整の関係が問題になったケース,競争それ自体が何らかの理由で妨げられていた場合の競争制限効果の有無が問題になったケース,相互拘束性にかかわる諸ケースを扱う。 〔到達目標〕 ○共同性の要件の解釈論の適用場面の見極めができるようにする。 ○基本合意で違反になることの説明,その立証方法をマスターする。 ○しばしば見かける「競争のないところに競争制限は存在しない」という主張の取り扱い方をマスターする。 ○いわゆる「縦のカルテル」の処理の仕方に慣れる。
  3. 第3回 〔授業内容〕 不当な取引制限Ⅱ: 前回に引き続き,不当な取引制限規制にかかわるケースを検討する。具体的には,相互拘束性と市場画定とのかかわりが問題になったケース,潜在的競争に対する制限が問題になったケース,いわゆる非ハードコア型の競争制限が問題になったケース,公共の利益の解釈が問題になったケース等を扱う。 〔到達目標〕 ○複数の要件が連動して問題になるケースに慣れる。 ○認定される競争制限のバリエーションを広く知る。 ○非ハードコア類型の処理の仕方をマスターする。
  4. 第4回 〔授業内容〕 私的独占Ⅰ: 私的独占規制についてのケースを検討する。具体的には排除型のそれを扱う。その中でも,全量購入契約が問題になったケース,パテントプールと新規業者への取引拒絶のケース,原価割れが認定されないまま私的独占禁止違反となったケース,累進的リベートのケース,著作権使用許諾の一括契約が問題になったケースを扱う。 〔到達目標〕 ○排除型私的独占のケースのパターンに慣れる。 ○効率的な排除とそうでない排除との違いを見極められるようになる。
  5. 第5回 [授業内容] 私的独占Ⅱ: 前回に引き続き,私的独占規制についてのケースを検討する。この回では支配型を中心に取り上げる。不当な取引制限が成立しそうに見えるが支配行為を認定することで一部事業者の違反を認めなかったケース,グループ企業間での競争制限について支配行為を認めたケース,支配型のみの私的独占禁止違反が認められたケース等を扱う。 〔到達目標〕 ○支配型私的独占の具体的ケースのイメージを持つ。 ○支配型と排除型が重複して問題になるケースの事案の処理を学ぶ。
  6. 第6回 〔授業内容〕 不公正な取引方法Ⅰ: 不公正な取引方法規制についてのケースを検討する。具体的には,競争者間での共同の取引拒絶のケース,それ以外の取引拒絶のケース,差別対価のケース,差別的取り扱いのケース,不当廉売のケースを扱う。 〔到達目標〕 ○公正競争阻害性の各類型を使いこなせるようになる。 ○差別対価と不当廉売の切り分け方をマスターする。
  7. 第7回 〔授業内容〕 不公正な取引方法Ⅱ: 前回に引き続き不公正な取引方法のケースを検討する。具体的には,再販売価格維持(希望小売価格等との切り分け方法等)のケース,抱き合わせのケース,排他条件付取引のケース,拘束条件付取引のケースを扱う。 〔到達目標〕 ○再販売価格維持規制における競争制限効果のイメージを持つ。 ○抱き合わせ行為による競争減殺のシナリオを理解する。 ○排除型の行為における不公正な取引方法規制違反と私的独占規制違反の切り分けを学ぶ。
  8. 第8回 〔授業内容〕 不公正な取引方法Ⅲ: 前回,前々回に引き続いて不公正な取引方法についてのケースを検討する。具体的には,優越的地位の濫用のケース,取引妨害のケース,その他を扱う。補足的に下請代金支払遅延等防止法(いわゆる下請法)に関する解説も行う。 〔到達目標〕 ○優越的地位濫用のケースに慣れる。 ○取引妨害と取引拒絶の違いと重なり合いを学ぶ。
  9. 第9回 〔授業内容〕 企業結合: 企業結合規制にかかわるケースを扱う。その前提として,公正取引委員会作成の企業結合ガイドラインを受講者とともに検討する。具体的には,富士・八幡製鉄合併事件を出発点に最近の事例をできる限り広く扱い,特に競争制限効果の認定の仕方について詳しく検討する。 〔到達目標〕 ○企業結合規制が他の違反類型とどのように異なるかを学ぶ。 ○競争減殺のシナリオ描写をマスターする。
  10. 第10回 〔授業内容〕 事業者団体規制: 事業者団体規制にかかわる諸ケースを検討する。具体的には,安全性確保目的でなされた玩具事業者団体による競争制限のケース,医師会による競争制限のケース,バス事業者団体による運賃設定にかかわる競争制限のケース等を扱う。 〔到達目標〕 ○事業者団体規制,特に8条1号と8条5号の処理に慣れる。
  11. 第11回 〔授業内容〕 交錯領域Ⅰ: 独占禁止法とその他の法分野の交錯領域にかかわるケースを検討する。具体的には,知的財産権(特許,著作,商標等)と独占禁止法上との関係が問題になったケースを,独占禁止法21条の解釈論を踏まえつつ検討する。 〔到達目標〕 ○知的財産絡みの事案の独占禁止法上の処理の仕方を学ぶ。 ○独占禁止法21条の解釈を事案処理の中でどのように展開するかを学ぶ。
  12. 第12回 〔授業内容〕 交錯領域Ⅱ+国際取引: 前回に引き続き独占禁止法とその他の法分野の交錯領域にかかわるケースを検討する。具体的には,運輸業にかかわる規制と独占禁止法のかかわりが問題になったケース,電気通信事業分野における独占禁止法の適用が問題になったケース等を扱う。補足的に国際取引のケースも検討する。 〔到達目標〕 ○業法と独占禁止法との関係を学ぶ。 ○取締規制違反を回避するための競争制限行為の独占禁止法上の処理の仕方をマスターする。
  13. 第13回 〔授業内容〕 エンフォースメントⅠ: 独占禁止法の法執行にかかわる論点を含むケースを検討する。具体的には,違反行為終了後の排除措置命令の可否が問題になったケース,談合からの離脱と課徴金の関係が問題になったケース,課徴金算定の基礎となる「売上」の射程が問題になったケース,カルテルによる損害の立証が問題になったケース等を扱う。 〔到達目標〕 ○課徴金の算定手法をさまざまな条件に対応してできるようにする。 ○関連する解釈論を学ぶ。
  14. 第14回 〔授業内容〕 エンフォースメントⅡ: 前回に引き続き法執行にかかわる論点を含むケースを検討する。具体的には,入札談合にかかわる住民訴訟のケース,差止請求のケース,損害賠償・差止以外の民事救済にかかわるケース等,その他刑事事件を扱う。 〔到達目標〕 ○各ケースの特徴を理解し,具体的事案の処理に慣れる。 ○刑事法上の論点と独占禁止法との関わりについて学ぶ。
  15. レポート 〔到達目標〕 ○学期を通じて身に付けた事案処理能力,文書作成能力をチェックする。 ○独占禁止法の基本的理解とその応用力を測る。

教科書

基本的テキストとして,泉水文雄『独占禁止法』有斐閣(2022),ケースブックとして金井貴嗣・川濱昇他編著『ケースブック独占禁止法[第4版]』弘文堂(2019年)。加えてオリジナルなレジュメを用意し,必要な参照資料については適宜指示する。

    参考書

    書籍情報はありません。

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