労働法 II*
専門職学位課程法学研究科
LWS52100
コース情報
担当教員: 富永 晃一
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 水1, 木3
形式: 対面授業
レベル: 700
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 不可
評価方法
授業参加
レポート
小テスト等
その他
成績評価基本原則に準じる。先取り履修で履修する可能性があるため,学期末試験に代えてレポートを課する(平常点30%,期末試験に代わるレポートの得点70%)。成績評価基本原則にいう「平常点」は,シラバスにおける授業参加(各判例・設問の質疑等,15%)及び小テスト(15%)を指すものとする)。欠席は,減点の評価事由として扱う。 ※レポートは,比較的短期間で回答する形式とする予定であるが,詳細についてはTKC等で告知する。
詳細情報
概要
本講義では,将来,労働法の専門家として活躍する人材を養成するために,授業での質疑応答や課題への回答等の取組み等を通じて,法曹実務において必要となる労働法の知識,思考力,法技術の修得を図ることを目的とする。これは,上智大学法科大学院の教育研究上の目的及び人材養成の目的にいう「将来法曹(裁判官・検察官・弁護士)の専門家として活躍する人材を養成する。」という目的等に沿ったものである。 授業中に質疑を行ういわゆるソクラティック・メソッドの講義なので,参加する以上は十分な準備が必要であり,各回の該当部分を毎回予習した上で講義に臨むことが求められる。また,特に労働法の初学者は,講義開講前に下記「テキスト」「参考書」のうち,読みやすいものを読んで,労働法の全体像を把握しておくことが望ましい。 労働法Ⅱでは労働法Ⅰで扱わなかったその余の部分(個別的・集団的労働関係法の双方にわたる)を中心に扱う。「労働者性」及び「使用者性」のトピックは,「労働法基礎」で扱い,本科目と労働法Ⅰでは扱わないので注意されたい。内容の関連性が高いため,労働法ⅠとⅡの双方を同年度に履修することが望ましい。授業で扱う論点は必ずしも網羅的ではなく,省略する部分も多いので,下記「テキスト」「参考書」等により,授業で直接扱わない部分についても十分に自習するよう努められたい。 【重要・注意】本科目は相対評価の要素を重視し,評価を厳格に実施する予定である(仮に授業参加やレポート等での個別の評点が相当高いとしても,相対評価の要素を重視した結果として,成績の最終評価が非常に低くなる可能性がある)。履修にあたっては厳に注意されたい。
目標
本講義とDPとの関係は上に示したとおりである。本講義は,法務実務において必要となる労働法の知識,思考方法,法技術の修得を目指す。労働法の専門的実務能力を有する法律家となるための基礎を築くとともに,新しい労働法的諸問題にも対応できる論理的思考能力を養成するという目的の下,以下の目標を設定している。 (目標) ・法曹実務において必要となる労働法の知識,思考方法,法技術の修得。 ・労働法的観点からの,社会における労働問題の発見能力。 ・労働法的観点からの,社会における労働問題の分析能力,論理的思考能力。 ・労働法的観点・労働法政策的観点からの,社会における労働問題への対処方法の提案能力。
授業外の学習
各回の予習・復習については,それぞれ各回130分程度が必要と見込まれる。 【予習】(他科目も同様であろうが)授業は労働法上のトピックの一部を扱いうるにすぎない。予習が学習の中心となる。 ①各回の該当部分を毎回予習する(特に関係する判例・裁判例に注意する。参考書等も併せて読み,当該判決等がどのように位置付けられるかを考える)。 ②労働法に不案内な場合には,講義開講前に下記「テキスト」「参考書」のうち,読みやすいもの(たとえば森戸英幸『プレップ労働法(第7版)』や原昌登『コンパクト労働法(第2版)』等)を読んで,労働法の全体像を把握する。 【復習】下記①~③を行うことを推奨する。 ①ノート等を読み返し,主要な判例法理等は,記憶する(単語帳等に書いたり読み上げたりして,何も見なくても「出せる」ようにする)。 ②必要に応じ,全体の見通しの良い教科書等で法理間のつながりを確認する。細かい点は,詳しい参考書で確認する。 ③具体的な問題(判例等)の事案をみて,法規範(条文・判例法理)を適用し判断する練習をする(イメージしてみる,簡単な箇条書きメモで構成してみる,実際に起案してみる)。
所要時間: 260
スケジュール
- 労働関係の終了②(辞職・合意解約,雇止め,定年制等)(Unit16)(※下記の授業計画と到達目標については,進行状況等に応じ,変更する場合がある。) 〔到達目標〕辞職,合意解約,雇止め,定年制に関する法理を理解し,具体的事例で適用できるようになる。
- 雇用差別(Unit17) 〔到達目標〕均等法等の雇用平等法理を理解し,具体的事例で適用できるようになる。
- 非正規雇用その1(Unit18) 〔到達目標〕雇用形態(特に有期労働・パート労働)等に関する法的規制を理解し,具体的事例で適用できるようになる。
- 非正規雇用その2(Unit18続き) 〔到達目標〕雇用形態(特に派遣労働)等に関する法的規制を理解し,具体的事例で適用できるようになる。
- 安全衛生・労働災害(Unit12) 〔到達目標〕労災保険制度・労災民訴の違い,それぞれにおける救済上問題となる法理(業務起因性等)を理解し,具体的事例で適用できるようになる。
- 労働組合(Unit19) 〔到達目標〕労働組合の概念,統制権,ユニオンショップ等に関する法理を理解し,具体的事例で適用できるようになる。 ※労働法Ⅱの対象外であるが,時間が余った場合には労働者性について取り扱う。
- 団体交渉(Unit20) 〔到達目標〕団体交渉に関する法理,集団的労働関係法における使用者性の法理を理解し,具体的事例で適用できるようになる。
- 団体行動(Unit21) 〔到達目標〕争議行為と組合活動の法理を理解し,具体的事例で適用できるようになる。
- 不当労働行為(Unit22) 〔到達目標〕不当労働行為救済制度を理解し,具体的事例で適用できるようになる。
- 労働紛争の処理(Unit24,予備回(質疑応答等) 〔到達目標〕労働委員会による救済命令の限界,労働審判制度について理解し,具体的事例で適用できるようになる。時間が余った場合,これまでのトピックに関する質疑応答等を行う。
- 企業組織変動(Unit23) 〔到達目標〕合併,事業譲渡,会社分割に際して生じる労働法上の問題を理解し,(総合的な問題も含めて)具体的事例で適用できるようになる。
- 競業避止義務・秘密保持義務,企業法務(Unit4,取り扱わなかった部分),労働条件の変更(Unit4~6等総合) 〔到達目標〕競業避止/秘密保持義務等の法理を理解し,具体的事例で適用できるようになる。(労働条件変更の論点を中心とする)総合的な問題を分析できるようになる。
- 総合問題(Unit25) 〔到達目標〕具体的な事例を,総合的な観点で分析・検討できるようになる。
- 予備回・総括,近時の判例等の検討 〔到達目標〕これまでの内容に関する疑問の解消を図る。また時間があれば,最近の判例等について簡単に概観する。
- 第15回 期末試験に代わるレポート(※出題時期は追って授業内ないしTKCで告知) 〔最終的到達目標〕 ○法曹実務において必要となる労働法の知識,思考方法,法技術の修得を目指す。労働法の専門的実務能力をもった法曹人となるための基礎を築くとともに,既存の枠組みでは解決困難な新しい労働法的諸問題にも対応できる論理的思考能力を養成することが目的である。
教科書
・下記のテキストを使用するが,冒頭3回まではコピーを配布するので,履修するか否かを決めてからで差し支えない(すぐに購入する必要はない)。同じ出版社からほとんど同名の書籍が出ているが,違うものなので注意されたい。
労働法ケースブック
著者: 神吉知郁子=皆川宏之
出版社: 有斐閣,2024
参考書
下記に挙げたものは参考書の一例であるが,その他の参考書として,次のものを挙げておく(※2023年春以降の改版がありうるため,注意すること)。 (体系書・実務レベル)菅野和夫『労働法(第12版』(弘文堂,2019),水町勇一郎『詳解 労働法(第2版)』(東京大学出版会,2022) (体系書・入門レベル)森戸英幸『プレップ労働法(第7版)』(弘文堂,2023),原昌登『コンパクト労働法(第2版)』(新世社,2020) (判例集)荒木尚志ほか編『労働判例百選(第10版)』(有斐閣,2022)
労働法(第5版)
著者: 荒木尚志
出版社: 有斐閣,2022
労働法(第10版)
著者: 水町勇一郎
出版社: 有斐閣,2024
最新重要判例200 労働法(第8版)
著者: 大内伸哉
出版社: 弘文堂,2024