商法B

専門職学位課程法学研究科

LWS21601

コース情報

担当教員: 早川 咲耶

単位数: 1

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 火1

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: なし

他学部履修: 不可

評価方法

定期試験

定期試験期間中

70%

小テスト等

30%

その他

法科大学院の成績評価基本原則による。平常点評価30%の内訳は,原則として月1回(合計2回)の小テストの結果による。このほか,授業の出席状況のうち正当な理由のない欠席については,減点対象とする。

0%

詳細情報

概要

前期に開講される商法Aと合わせて商法・会社法について網羅的に講義する基幹科目である。授業時間の許す限り教員と学生の質疑応答形式を取り入れる。 会社法について入門的な知識があることを前提に,コアカリキュラムの要求する達成度に到達するよう講義と質疑応答を交えて授業する。

目標

商法・会社法の基礎的な理解を踏まえ,商法・会社法の基本的な条文を手掛かりに,事例に対して商法・会社法の観点から適切に検討をし,条文を根拠とした解決を論じることができるようになる。

授業外の学習

各回の授業について十分に予習して授業に臨むことが求められる。

所要時間: 200分

スケジュール

  1. 会計参与・監査役・会計監査人 〔授業内容〕 会計参与・監査役・会計監査人について,それぞれの制度の概要を理解する。 〔コアカリキュラム〕 ○会計参与制度の趣旨及び概要を,監査役・会計監査人の制度と比較して,説明することができる。 ○会計参与の員数・任期・資格を理解している。 ○監査役がいわゆる「独任機関」とされている理由を説明することができる。 ○監査役が会社を代表する場合について,その具体例を挙げることができる。 ○監査役の報酬等の決定方法について説明することができる。 ○監査役の員数・任期・資格を理解している。 ○監査役は取締役などと兼任することが禁止されている理由を説明することができる。 ○監査役を株主総会で選任もしくは解任する場合,または監査役が辞任する場合の会社法上の手続について,取締役の場合と比較して,説明することができる。 ○監査役の監査の範囲を説明することができる。 ○監査役設置会社の定義(会社法2条9号)を理解し,これと異なる意味で用いられる「監査役設置会社」の規定を挙げることができる。 ○監査役の職務・権限について説明することができる。 ○監査役会が設けられた場合に,会社法上,監査役会の権限と監査役の権限との間でどのような調整がなされているかを説明することができる。 ○監査役会においては,その員数が3名以上で,社外監査役が半数以上でなければならず,かつ,常勤監査役が選定されなければならないことを理解している。 ○社外監査役の定義(会社法第2条第16号)を理解している。 ○監査役が会社または第三者に対して責任を負う場合についての会社法の規律を理解している。 ○会計監査人設置会社は指名委員会等設置会社か監査役設置会社(または監査役会設置会社)かのいずれかでなければならない理由を説明することができる。 ○会計監査人の報酬決定手続を説明することができる。 ○会計監査人の資格および任期を理解している。 ○会計監査人の選任および解任の手続ならびに会計監査人の選任および解任に係る監査役・監査役会または監査委員会の権限・義務について説明することができる ○会計監査人の職務・権限を理解している。 ○会計監査人の会社または第三者に対する責任とその責任追及方法を理解している。
  2. 株式会社の設立 (コアカリ2-5,3-1,3-2-1,3-6-1) 法人とくに株式会社の概念とその設立 〔授業内容〕株式会社制度の特徴,株式とはどういうものか。登記の制度について理解したうえで,会社の設立の2つの類型とその手続の詳細,発起人の法的性質と設立の瑕疵についての責任について理解する。 〔到達目標〕 ○会社法908条1項の定める会社の登記の効力(一般的効力)について説明することができる。 ○株式会社制度の特徴を説明することができる。 ○発起設立および募集設立とは何かを理解し,手続の概要を説明することができる。 ○定款の絶対的記載事項について理解し,相対的記載事項,任意的記載事項について,具体例を挙げることができる。 ○預合い,見せ金とはどういうものか,およびその効力について,判例・学説を踏まえて説明することができる。 ○現物出資,財産引受けに際して検査役の調査が不要とされる場合,およびそのような扱いが認められる理由について理解している。 ○設立中の会社・発起人および発起人組合について理解している。
  3. 株式会社の機関設計,会社の計算と開示 〔授業内容〕 取締役会設置会社と非取締役会設置会社,監査役設置会社,監査等委員会設置会社,指名委員会等設置会社を比較・検討することにより,機関設計に関する会社法の構造を理解する。また,計算に関する会社法の基礎的ルールを学習するとともに,その開示についての会社法上の規律についても理解する。 〔コアカリキュラム〕 ○公開会社と非公開会社における機関設計の違いの概要を説明することができる。 ○取締役会を設置しなければならない株式会社はどのような会社であるか,また,それらの会社に取締役会の設置が強制されている理由を説明することができる。 ○取締役会設置会社と取締役会設置会社以外の会社(以下,「非取締役会設置会社」という。)とで,株式会社の機関構成および権限分配にどのような違いがあるかを説明することができる。 ○非取締役会設置会社における取締役の権限について説明することができる。 ○大会社と大会社でない株式会社における,機関設計の違いの概要を説明することができる。 ○指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社でない取締役会設置会社は,原則として監査役を設置しなければならない理由について説明することができる。 ○大会社では会計監査人を設置しなければならない理由について説明することができる。 ○公開会社でありかつ大会社である会社は,指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社である場合を除き,監査役会を設置しなければならない理由について説明することができる。 ○「株式会社の会計は,一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」(会社法431条)と規定されることの意味を説明することができる。 ○「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」(会社法431条)とは何かを理解し,その具体的内容について例を挙げることができる。 ○「会計帳簿」とは何かを理解し,その帳簿が何であるかについて具体的な例を挙げることができる。 ○「会計帳簿」の閲覧・謄写に係る会社法の規律を理解している。 ○会社計算規則において,「会計帳簿」に関して資産の評価・負債の評価・純資産などについて規定されていることを理解している。 ○「計算書類」(会社法435条2項・会社計算規則2条3項2号)とは何かを理解している。 ○「臨時計算書類」および「連結計算書類」とは何かを理解し,それらが作成される理由を説明することができる。 ○各事業年度に係る計算書類の確定手続(決算手続)の概要を,株式会社の機関構造の違いに応じて,理解している。 ○事業報告等及び計算書類等に係る監査報告(監査役監査報告・監査役会監査報告・監査委員会監査報告・会計監査報告)の作成方法及び監査報告の内容を理解している。(会社法施行規則129条以下,会社計算規則121条以下)。 ○各事業年度に係る計算書類を確定する機関ならびに「承認特則規定」(会社法439条,会社法施行規則116条5号,会社計算規則135条)とは何かおよびその特則規定の適用要件について理解している。 ○計算書類に係る公告が求められる理由および計算書類の公告制度の概要を説明することができる。
  4. 剰余金の配当と制限 〔授業内容〕 剰余金の配当等に関する会社法ルール及びその前提となる分配可能額の算定及びその基礎となる概念について理解する。また,法規制に違反して剰余金の配当等がなされた場合の法律関係,とりわけ,取締役の責任について学習する。 〔コアカリキュラム〕 ○「資本金」および「準備金」(法定準備金)とはどのようなものか,理解している。 ○資本金または準備金が増加する場合と減少する場合,および資本金または準備金を株主総会決議によって減少する場合に必要とされる会社法上の手続について,理解している。 ○「欠損の額」(会社法449条1項2号,会社計算規則151条)とは何かを理解している。 ○資本金減少の無効を主張するためには資本金減少無効の訴えという方法によらなければならないことを理解し,資本金減少無効の訴えの無効原因・原告適格・被告・提訴期間・無効判決の効力について,説明することができる。 ○剰余金の配当をすることができる時期および剰余金の配当をする場合の手続について理解している。 ○会社法上の手続に違反した剰余金の配当の効力について説明することができる。 ○「中間配当」とは何かを理解している。 ○「分配特則規定」(会社法459条)とは何か,そのような定款規定を置くことができる会社がどのような会社か,およびその定款規定が効力を有するための要件はどのようなものか(会社計算規則155条),理解している。 ○いわゆる「現物配当」を実行するための手続ならびに「金銭分配請求権」および「基準株式数」に係る制度の内容について理解している。 ○「分配可能額」とは何か,およびその金額が「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」の合計額を基礎とすることを理解している(会社法446条,461条2項,会社計算規則149条)。 ○分配可能額を超過した剰余金の配当の効力と役員等の責任について説明することができる。 ○「剰余金についてのその他の処分」とは何かを理解している(会社法452条)。
  5. 株式会社の資金調達 〔授業内容〕 株式会社がその資金需要を満たすためにとりうる資金調達手段について理解する。その上で,株式による資金調達を行う場合の関係主体の利害状況を踏まえて,会社法上の諸ルールが果たす機能を理解する。特に,有利発行規制を具体的な場面に即して適切に解釈・適用できるようにする。 〔コアカリキュラム〕 ○株式会社の資金調達の方法について,株式の発行,社債の発行,銀行借入などがあることを理解し,それぞれの特徴と異同について(特に株式と社債の異同について)説明することができる。 ○新株発行の方法について,株主割当て・公募・第三者割当てがあることを理解し,その概要を条文を挙げて説明することができる。 ○株主割当てによる新株発行が,その他の方法による場合と比べて既存株主の経済的利益・持株比率の維持に資することについて説明することができる。 ○「募集株式の発行等」として新株の発行と自己株式の処分とにつき同じ法的規律がされている理由を説明することができるとともに,「募集株式の発行等」には含まれない,いわゆる「特殊の新株発行」と呼ばれるものがあることを理解している。 ○公開会社と非公開会社とを区別して,新株発行の手続き(募集事項の決定・申込み・割当て・払込み)を,決定権限を持つ機関に触れながら,条文を挙げて説明することができる。 ○なぜ公開会社と非公開会社とでは募集事項を決定する機関が異なるのかを説明することができる。 ○募集株式の発行等について特に差止めの制度が用意されていることについて,その理由を説明することができるとともに,どのような場合に差止めが認められるか,具体例を挙げて説明することができる。また,株主に差止めの機会を与えるためにどのようなルールが用意されているかを条文を挙げて説明することができる。 ○公開会社における新株の有利発行について,募集事項の決定を株主総会が行う場合と取締役会が行う場合との適用条項を明らかにしながら,会社法のルールの概要とその理由を説明することができる。 ○取締役と通じて著しく不公正な払込金額で募集株式を引き受けた者が会社に対して負う支払責任について説明することができる。 ○公開会社における新株の不公正発行について,裁判所が採用している差止めの判断基準について説明することができる。 ○新株発行に瑕疵がある場合に,その無効を主張するためには訴えによらなければならないことを理解し,新株発行無効の訴えについて,その概要(被告・提訴期間・無効判決の効力),および新株発行の差止めや新株発行の不存在確認の訴えとの違いを条文を挙げて説明することができる。 ○新株発行無効の訴えにおいて,判例によるとどのような事情が無効事由となると考えられているかを説明することができ,また,募集事項の公示が欠けたことが原則として新株発行の無効事由にあたると解されていることについてその理由を説明することができる。
  6. 株式の不公正発行と発行の差止め・無効 〔授業内容〕 株式による資金調達を行う場合のルールのうち,特に,不公正発行に関するルールを理解し,具体的な場面に即して適切に解釈・適用できるようにする。また,不適切な新株発行が行われる(行われた)ときにとり得る手段について理解する。 〔コアカリキュラム〕 ○募集株式の発行等について特に差止めの制度が用意されていることについて,その理由を説明することができるとともに,どのような場合に差止めが認められるか,具体例を挙げて説明することができる。また,株主に差止めの機会を与えるためにどのようなルールが用意されているかを条文を挙げて説明することができる。 ○公開会社における新株の不公正発行について,裁判所が採用している差止めの判断基準について説明することができる。 ○新株発行に瑕疵がある場合に,その無効を主張するためには訴えによらなければならないことを理解し,新株発行無効の訴えについて,その概要(被告・提訴期間・無効判決の効力),および新株発行の差止めや新株発行の不存在確認の訴えとの違いを条文を挙げて説明することができる。 ○新株発行無効の訴えにおいて,判例によるとどのような事情が無効事由となると考えられているかを説明することができ,また,募集事項の公示が欠けたことが原則として新株発行の無効事由にあたると解されていることについてその理由を説明することができる。
  7. 株式による資金調達のまとめ・社債 〔授業内容〕 株式による資金調達のまとめとして,関係当事者の民事責任に関するルールを確認する。また,社債に関する諸ルール(令和元年改正を含む)を,その機能に即して理解する。 〔コアカリキュラム〕 ○取締役と通じて著しく不公正な払込金額で募集株式を引き受けた者が会社に対して負う支払責任について説明することができる。 ○担保付社債,振替社債について,会社法以外のどの法令が法規制を置いているかを理解している。 ○株式会社・持分会社が会社法上の社債を発行できることを理解している。 ○社債管理者について,どのような場合にその設置が強制されるか,設置が強制される理由,社債管理者となるための資格,社債管理者が社債権者に対して負う義務について条文に即して説明することができる。 ○社債権者集会の制度の趣旨および概要を説明することができる。
  8. 期末試験 第7回までの授業内容に関して,本講義の対象分野に関する事例問題を出題する。

教科書

自身が利用している基本書でかまわない。

  • 商法判例集(第9版)

    著者: 神作裕之=藤田友敬

    出版社: 有斐閣・2023年

参考書

  • 会社法(第4版)

    著者: 田中亘

    出版社: 東京大学出版会・2023年

  • 会社法 [第三版] *2024年春に新版が出される可能性あり

    著者: 髙橋 美加=笠原 武朗=久保 大作 =久保田 安彦

    出版社: 有斐閣,2020年

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