民法C
専門職学位課程法学研究科
LWS20501
コース情報
担当教員: 溝渕 将章
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 月5
形式: 対面授業
レベル: 700
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 不可
評価方法
授業参加
定期試験
定期試験期間中
小テスト等
その他
成績評価基本原則による。その内訳は,通常でいう「平常点」30%。「定期試験」は試験期間内に対面で実施する「期末試験」で70%(70点),である。「平常点」相当部分の30%の考慮要素は,授業への参加10%,「小テスト」(授業内で2回程度実施),課題への取組み」10%(授業理解度テストへの取り組み)。この「課題への取組み」とは,授業の各回の復習として,TKCの基礎力確認テストをコンテンツとして「授業理解度テスト」)からの出題に対する取り組みを意味する。「小テスト」10%とは,基礎力確認テストのコンテンツから任意に授業選択して授業内で実施する小テストを指す。この小テストで10%とする。
詳細情報
概要
この授業では,債権法の基礎をすでに履修済みである法学既修者,および,本法科大学院での民法基礎Ⅰ・Ⅱを履修済みである法学未修者を対象に,判例や裁判例を素材とした具体的事例あるいは司法試験の過去問等の検討を通じて,債権法分野とりわけ債権総論の問題と,担保物権法に関する基本的理解をさらに深め,また,事案分析能力,問題解決能力,論理的構成能力を培っていき,応用展開力を身につけることを目指す。受講者は,事前に配付される資料の中で示された課題について予習し,考え方の筋道を事前にまとめて授業に臨むことが期待される。授業の場では,教員からの質問(設問や説例に関連する派生的なものも含む)に応接し,時には,受講者相互間で討議をすることが望まれる。 債権総論部分のうち,債務不履行一般や弁済の提供・受領遅滞等は既に春学期の民法Bで扱割れることが多く,民法Cではこれら以外の債権総論部分が中心となる。具体的には,保証等の人的担保と債権者代位権・詐害行為取消権や相殺等である。これらに加えて,難解である担保物権法全体を詳論する予定である。
目標
債権法はパンデクテンの体系が顕著に現れており,具体的な事件を処理するにあたっては,契約各則や法定債権法(事務管理不当利得不法行為)による具体的な債権の発生原因とは別に,債権総則・契約総則の諸規定が密接に関係してくる。最終的には,それぞれの具体的な制度につき正確かつ緻密な理解を獲得するのが望ましい。すなわち,債権法全体を鳥瞰する視野を持ち,かつ,具体的な事例問題について適用されるべき条文と法理を適切に取捨選択して,それらを事実に当てはめて一定の妥当な解決を導く能力を獲得することが,この授業の獲得目標である。同じ獲得目標は,担保物権法の分野にも妥当する。債権を担保する面では,人的担保と物的担保を同時に学習することが望ましい。この授業では,双方の分野を,権利実現の手続である民事執行法を絡めて,体系的に理解することも,到達目標である。
授業外の学習
十分な予習と復習をして授業に臨むこと。また,TKCの授業支援システム内で実施される「授業理解テスト」(TKCの基礎力確認テストのコンテンツから毎回の授業の範囲で出題)への取組が重要である(平常点評価の一部)。さらにこの取り組み自体の到達度を別途測定するために,授業理解度テストですでに学習した範囲から,小テストを授業内で対面で行う。
所要時間: 190分
スケジュール
- 第1回 債権総則・債権譲渡(債権譲渡担保を含む)・債務引受 債権譲渡について,譲渡可能性(将来発生すべき債権・集合債権譲渡の可能性を含む)について確認したうえで,譲渡制限特約が付いている場合の法律関係,債権の二重譲渡があった場合の法律関係について検討する。債権法改正では,譲渡禁止特約について相対的効力説への転換がされ譲渡制限特約へと規律が大きく変更されたため,この点を詳しく検討する。また,二重の債権譲渡の優劣と譲渡禁止特約の関係,動産・債権譲渡特例法による債権譲渡登記の規律,集合債権譲渡担保に関する判例法理等である。また,債務引受・契約上の地位の譲渡についても,合わせて検討する。 〔到達目標〕 ・債権の譲渡とはどのような制度であり,どのような場合に債権譲渡が行われるかを説明することができる。 ・債権の譲渡可能性(将来発生すべき債権の譲渡可能性・包括的な債権譲渡の可能性を含む)とその例外(譲渡禁止特約を含む)について,説明することができる。 ・指名債権譲渡の対抗要件の構造・仕組み(民法上及び動産・債権譲渡特例法上の対抗要件の競合や,対抗要件の同時具備の場合に生ずる問題等を含む)について,説明することができる。 ・債務者が,債権の譲受人に対してどのような場合にどのような事由を主張することができるかについて,具体例を挙げて説明することができる。 ・第三者対抗要件と債務者対抗要件(権利行使要件)という2つの対抗要件制度を理解する。そのうえで,二重譲渡ケースの具体的処理や特例法による対抗要件具備の方法を具体例に則して検討することで,対抗要件制度の理解を深める。 ・将来債権の譲渡,および集合債権譲渡担保についての判例法理を理解することができる。その上で,債権譲渡担保契約書の書式例を参照して,当該契約書で設定される債権譲渡担保が,判例による分類のどれに該当するかを判別することができる。 ・債務引受・契約上の地位の譲渡について,債権法改正で盛り込まれる規律を説明することができる。
- 第2回 弁済(1)・相殺 〔授業内容〕 相殺の意義,要件・効果,相殺の方法,相殺の担保的効力について解説する。特に,相殺の担保的機能に関する無制限説の趣旨とその限界についてについて理解する。なお,債権法改正により,学説上は有力であった「差押えと相殺」に関する制限説は採用されず,無制限説が明文化された。また,相殺については特に破産法上の相殺との関係で近時複数の判例(例,最1小判平成26・6・5)が登場していることに注意が必要である。 〔到達目標〕 相殺の制度概要,機能,要件・効果,差押えと相殺に関する判例・学説の内容を説明することができる。また,債権譲渡と相殺について,その優劣の決定基準について説明することができる。
- 第3回 弁済(2)・民法478条・保証(1)ほか 〔授業内容〕 債務の弁済に関し,誰が弁済すべきか(弁済者),また,誰に対して弁済すべきか(弁済受領者)の問題を取り扱う。後者については,特に詐称代理人に対する弁済の問題に焦点をおいて,実務における当事者の争い方にも注意しながら検討する。ついで,民法478条の適用範囲の拡大の問題を取り扱う。ここでは,預金担保貸付における相殺と478条の類推適用,生命保険契約上の契約者貸付と478条の類推適用の問題が検討の中心になる。特に,債権法改正により「債権の準占有者に対する弁済」から「受領権者としての外観を有する者に対する弁済」へと制度の変更がなされた意味を理解することが重要である。また,代物弁済について,伝統的な理解と近時の見解とで,どのような場合にどのような相違が生ずるかという観点から,所有権移転時期とその説明,合意の効力,代物弁済として給付された物に瑕疵があった場合の法律関係の問題を中心に検討する。その上で,保証債務について,その内容と範囲の問題をまず検討し,さらに,保証人が債権者に対して主張することができる抗弁,主たる債務者または保証人に生じた事由がそれぞれ他方に及ぼす影響について理解を深める。 〔到達目標〕 ・弁済者,第三者が弁済した場合の法律関係,受領権限のない者に対する弁済がなされた場合の法律関係を説明することができる。また,弁済の充当とその順序,供託の効果等について説明することができる。さらに,弁済を受領する代理権があると信じて弁済をした者の保護について,表見代理規定と民法478条の関係を説明すること,および,民法478条が,債務の弁済以外の場合にも類推適用が認められるかどうかについて,議論の対立と問題点を具体例に即して説明することができる。加えて,更改・債務免除・混同による債務の消滅について説明することができる。 ・・保証債務の付従性及び随伴性とはどのような性質を指すのかを,その具体的効果を含めて,説明することができる。 ・主たる債務と保証債務の範囲の関係について,主債務の利息・違約金・損害賠償や,主債務の発生原因 たる契約の解除・無効の場合の清算関係につき,具体的事例に即して説明することができる。 ・保証人が債権者に対して主張しうる抗弁について説明することができる。 ・主たる債務者または保証人に生じた事由がそれぞれ他方に及ぼす影響について説明することができる。
- 第4回 保証債務(2)・連帯保証 証債務について,特に根保証の保証人の保護に関する強化が債権法改正でなされたので,授業ではこの点も取り上げる。とりわけ,経営者保証の枠組みについての理解が重要である。 〔到達目標〕 ・保証と連帯保証の異同や,特に根保証における保証人の保護策,主たる債務と保証債務の相互関係について,その基本的な項目を説明することができる。 ・保証人の求償権がどのような場合に生じるか,及びその行使の手続等について,条文を参照しながら説明することができる。 ・連帯保証と単純保証の違い,保証と併存的債務引受の異同を説明することができる。 ・連帯保証と連帯債務では債権管理の点で債権者にとっていずれが有利かを,理由を挙げて説明することができる。 ・債権者が主たる債務者と保証人に向かったどういう請求の仕方ができるか。 ・主たる債務者に生じた事情が保証人にどう影響するか。 ・逆に,保証人に生じた事情が主たる債務者にどう影響するか。 ・債権者は,時効中断(完成猶予)等の措置をどのように行えばよいのか。 ・保証人が全額弁済した場合に主たる債務者にどう求償できるか。 ・全額受領した債権者が他の債権者からどんな請求を受けるか。 ・債権法改正における経営者保証の枠組みについて説明することができる。
- 第5回 分割債務・不可分債務・不可分債権・連帯債務・連帯保証・共同保証 〔授業内容〕 分割債権・分割債務関係,不可分債権・不可分債務関係,連帯債務関係(不真正連帯債務関係を含む)のそれぞれについて,対外的効力(対外関係),当事者の1人について生じた事由の他の者に対する効力(影響関係),内部関係(求償・分与関係)という3つの場面における法律関係を整理・確認したうえで,この回では特に対外関係・対内関係について詳しく取り上げる。連帯債務については,請求の絶対的効力等の絶対的効力事由が相対的効力への変更が,債権法改正において行われたな。そのため,連帯保証における保証人の請求も,相対的効力になる予定である。請求による時効中断(完成猶予)を含めて,現行法からの大幅な修正がなされ,注意が必要な領域である。また,弁済による代位についても,複雑な判例法理と,2017年改正による規律の修正等について検討する。 〔到達目標〕 ・債権者が複数の場合及び債務者が複数の場合について,それぞれ,民法の規律の概要(分割債権・分割債務の概念,不可分債権・不可分債務の概念,分割債権・分割債務の原則性)を説明することができる。 ・連帯債務(いわゆる不真正連帯債務を含む)とはどのようなものであり,どのような場合に認められるのかについて,説明することができる。 ・連帯債務者の1人について生じた事由(請求,弁済,更改,相殺,免除,混同,消滅時効等)が他の債務者にどのような影響を及ぼすかについて,条文を参照しながら説明することができる。 ・連帯債務者間の求償権がどのような場合に生じるか,及び,その行使の手続等について,条文を参照しながら説明することができる。 ・弁済による代位の制度概要,弁済による代位の場合の求償債権と原債権の関係,複数の法定代位者相互の関係等を,条文を参照しながら具体例に即して説明することができる。 ・弁済による代位と共同抵当による代位との違いを説明することができる。 ・弁済による代位に関して,担保保存義務免除特約をめぐる判例法理を説明することができる。
- 第6回 債権者代位権 〔授業内容〕 責任財産の意義,債権者代位権の要件及び効果を確認したうえで,債権者代位権の対象となる権利,債権者代位権の転用について設例及び具体的事例を通して検討する。また,詐害行為取消権の規定の概要を学ぶ。本来型の債権者代位権と転用型代位権における要件と効果,詐害行為取消権の要件と効果を理解する。とりわけ,債権者代位権における債権法改正の改正前と改正後の変化について検討する。加えて,抵当権に基づく妨害排除請求についても検討する。 〔到達目標〕 ・債権者代位権とはどのような制度であり,その要件及び効果はどのようなものかについて,説明することができる。その際,責任財産とは何か,その保全がなぜ必要になるのかについて,債権者平等の原則との関連にも留意しながら説明することができる。その一方で,債権者代位権の「転用」とはどのようなものであって,どのような場合に認められるべきであるかについて,いくつかの典型事例を挙げて説明することができる。 ・抵当権に基づく妨害排除請求について,説明することができる。 ・2003年の「担保・執行法改正」以前には,民法395条但書に「短期賃借権」に関する解除請求権が規定されていた。しかし,この短期賃借権の保護は,実際には抵当権の実行を妨害する手段として利用されていた。まず,法改正以前の状況を理解した上で,最判平成3・3・22と、これを変更した最大判平成11・11・24,さらにより詳細な判事を行った最判平成17・3・10の各判決について,判例の変遷と現在の到達点を理解する。その上で,2003年法改正後の民法378条の規律についても理解する。
- 第7回 詐害行為取消権 授業内容〕 詐害行為取消権について,判例のとる相対的取消説の内容を確認したうえでその問題点を検討し,ついで,責任説の内容と問題点を考察する。その後,相対的取消説を前提とした,従来の詐害行為取消権の要件,債権者取消権の行使方法と範囲,詐害行為取消権の行使の効果,債権者取消権の取消の対象となる行為について検討する。次に債権法改正においては,従来の相対的取消しから絶対的取消しへの法律構成の変更,および,破産法上の否認権の規律に合わせた法改正がなされた点につき,従来の判例法理との違いを検討する。 〔到達目標〕 ・詐害行為取消権について,その要件と効果を基本的な部分に関して説明することができる。 詐害行為取消権の要件と効果を理解する。特に重点をおくのは,行為の詐害性と詐害の意思に関する相関的把握とその妥当性,保全の必要性に伴う取消範囲の制限であり,それらを理解することができる。より具体的な到達目標は, ・すなわち,詐害行為取消権とはどのような制度であるのかについて,詐害行為取消権の法的性質をめぐる議論の概要を含めて説明することができる。 ・詐害行為取消権は誰を相手として行使すべきであり,その相手方に対する詐害行為取消権行使の効果が誰にどのような影響を及ぼすかを,具体例を挙げて説明することができる,等である。
- 第8回 担保物権法序説・抵当権(1)・抵当権の処分・抵当権の消滅等 [授業内容] 難解とされる担保物権法の分野について、その導入部として,物的担保・人的担保の異同について理解し,合わせて典型担保の中で最も重要度の高い抵当権につき,基礎的な理解を固める。抵当権の実行手続や,「抵当権の処分」,および「被担保債権の範囲】を扱う。 〔到達目標〕 ○担保物権とはどのような性質の担保であるかを,債権者平等原則や保証との関係に留意しながら説明することができる。 ○抵当権とはどのような性質の担保物権であるかを,具体例を挙げて説明することができる。 ・抵当権実行とは何を意味するかを,具体例を挙げて説明することができる。 ・転抵当等,「抵当権の処分」全般を事例を挙げて説明することができる。 ・債権者平等の原則について,簡単な事例を挙げて説明することができる。
- 第9回 抵当権(2)・抵当権の効力の及ぶ範囲・物上代位 [授業内容] 「抵当権の効力の及ぶ範囲」等について,簡潔にまとめて扱う。抵当権に関する最も重要な論点である物上代位について主要な判例を取り上げ,その規律するルールを理解する。動産売買先取特権に基づく物上代位も併せて取り上げる。 なお,以下の各資料を印刷して予習しておくこと。 ・最判平成1・10・27=【百選Ⅰ(第8版)87事件】(必読) ・最判平成10・1・30=【百選Ⅰ(第8版)88事件】頁 ・最判平成10・3・26=占部洋之「時の判例」法教216号101頁(必読) ・最判平成2・4・19判時1354-80,金法1265-27 評釈 竹内俊雄 手形研究449号(現・銀行法務21)4頁 ・最判平成10・1・30以前の民372条・304条の「差押え」の学説につき,新田宗吉「物上代位」法教63号13頁以下(1985年) 〔到達目標〕 「抵当権の効力の及ぶ範囲」等について,簡潔にまとめて扱う。 ○抵当権の効力がどのような範囲に及ぶか,また,どのような目的物(果実や目的不動から分離された目的物等を含む)に及ぶかについて,具体例を挙げて説明することができる。 〇抵当権について物上代位が認められるのはどのような場合か,また権利を行使するためにどのような要件を備えている必要があるかについて,判例・学説の基本的な考え方を踏まえながら説明することができる。具体的には【第三債務者保護説】・〔登記時基準説」の内容や,抵当権の物上代位と動産売買先取特権の物上代位との異同について説明できる。
- 第10回 抵当権(3)・法定地上権 [授業内容] 民法388条の法定地上権について理解を深める。同条の定める各要件について、最高裁は詳細な判例法理を展開している。その流れを一通り理解することは、決して容易ではない。予習テキストに書かれた内容に加えて,配布レジュメに示された判決の資料を,LLIやTKCのLEX/DBからダウンロードして予習することも必要である。 [到達目標] ○民法388条の法定地上権について,判例法理の理解を深める。
- 第11回 抵当権(4)(共同抵当・根抵当権・抵当権と時効) [授業内容] 民法392条の定める共同抵当について,最低限「同時配当」と「異時配当」のルールについて理解する。その上で,共同抵当不動産の一方が物上保証人の場合の判例の規律等について学ぶ。根抵当についても簡単に取り上げる予定。そのうえで,「抵当権と時効」の難解な論点についても検討する。 [到達目標] 〇共同抵当とはどのような制度であるか,抵当権がどのように実行され,どのような効果を生ずるかについて,具体例を挙げて説明することができる。 〇根抵当とはどのような制度であり,通常の抵当権と対比してどのような特徴を備えているかについて,その概要を説明することができる。 〇民法397条と167条,162条の関係について,判例や学説の議論を一通り説明することができる。
- 第12回 質権・不動産譲渡担保 [授業内容] 抵当権と対比される約定担保権として,質権を取り上げる。次に,非典型担保について,その代表格である不動産譲渡担保について,判例法理を設問の詳細な検討を通じて理解する。 [到達目標] 〇譲渡担保権者・譲渡担保設定者・第三者がそれぞれどのような法的地位を有するかを,具体例に即して説明することができる。その前提となっている判例法律について,詳しく説明することができる。
- 第13回 流動(集合)動産譲渡担保・所有権留保 [授業内容] 動産の譲渡担保につき,個別動産の譲渡担保について取り上げたうえで,流動集合動産の譲渡担保について,そのベーシックの部分を学習する。特に,「占有改定と即時取得」に関連して,単一の個別動産に複数の譲渡担保が設定された場合の優劣の考え方が重要である。その上で,応用的な論点として,集合物論・分析論等,多数の動産の集合体を一括して担保の目的とするための理論構成,他の動産担保権との優劣,および個別動産の中途処分の法律関係について(時間に余裕があれば)言及する。同時に,個別動産の担保手段としての所有権留保についても,論点を一通り学習する。 [到達目標] 〇譲渡担保権者・譲渡担保設定者・第三者がそれぞれどのような法的地位を有するかを,具体例に即して説明することができる。 〇いわゆる集合動産譲渡担保とはどのような制度であるか,一物一権主義との関係に留意しながら,説明することができる。 〇所有権留保に関する判例法理について,一通り説明することができる。
- 第14回 先取特権・流動(集合)債権譲渡担保・留置権・全体のまとめ [授業内容] これまでの授業で部分的に取り上げていたが,まとまって取り上げてこなかった留置権や先取特権について、まとめて検討する。特に,留置権については,動産・不動産双方について,抵当権の実行手続との関係等において重要な役割を果たす。特に,買受人に留置権の負担が承継される「引受主義」は,実行によって原則として既存の権利が消滅して買受人は対抗を受けないとする「消除主義」の例外をなすため,民事執行実務上重要な例外をなす。さらに,債権質との対比で,改めて債権譲渡担保についても検討する。 [到達目標] 〇当該事案について,そのような主張がなぜ出てきたのか、その背景まで理解できること。 ○また,今回の授業では,既に取り上げた動産売買先取特権についても、再度検討するとともに,改めて債権譲渡担保について取り上げ,それぞれの判例法理について説明することができることも目標である。
- 第15回 定期試験 定期試験期間中に試験を実施する。試験時間は120分を予定している。
教科書
民法判例百選Ⅱ債権および同Ⅰ総則/物権も,テキストに準じる扱いとする。授業のレジュメでは判例番号を引用しており,予習時に必ず参照することが求められる。
債権総論〔第4版〕
著者: 中田裕康
出版社: 有斐閣・2020年
講義 物権・担保物権法〔第4版〕
著者: 安永正昭
出版社: 有斐閣・2021年
民法判例百選Ⅱ債権〔第9版〕
著者: 窪田充見・森田宏樹編
出版社: 有斐閣・2023年
参考書
以下の民法判例百選Ⅰもテキストに準じて参照することを求められる。
民法判例百選Ⅰ総則・物権〔第9版〕
著者: 潮見佳男・道垣内弘人編
出版社: 有斐閣・2023年
4訂 紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造
著者: 司法研修所編
出版社: 法曹会・2023年