民法B

専門職学位課程法学研究科

LWS20401

コース情報

担当教員: 永下 泰之

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 木3

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: あり

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

10%

定期試験

定期試験期間中

50%

中間試験

授業期間中

20%

小テスト等

10%

その他

復習として実施するTKCの基礎力確認テスト。 法科大学院の成績評価基本原則による。 小テストは月1回程度実施する。 なお,本講義は2単位科目であるが,中間試験を実施することに留意されたい。

10%

詳細情報

概要

債権法の基礎をすでに履修済みである法学既修者,および,本法科大学院での民法基礎Ⅱ・民法基礎Ⅳを履修済みである法学未修者を対象に,判例や裁判例を素材とした具体的事例〔設問)あるいは設例の検討を通じて,債権法分野,特に債権各論部分の問題に関する基本的理解をさらに深め,また,事案分析能力,問題解決能力,論理的構成能力を培っていき,応用展開力を身につけることを目指す。受講者は,事前に配付される資料の中で示された課題について予習し,考え方の筋道を事前にまとめて授業に臨むことが期待される。授業の場では,教員からの質問(設問や説例に関連する派生的なものも含む)に応接し,時には,受講者相互間で討議をすることが望まれる。 なお,授業の中心は債権各論であるが,弁済の提供や債務不履行に基づく損害賠償等,債権総論部分で,契約総論部分に関連の深いテーマも同時に取り上げる。これら以外の債権総論部分については,秋学期の民法Cで検討する予定である。

目標

債権法はパンデクテンの体系が顕著に現れており,具体的な事件を処理するにあたっては,契約各則や法定債権法(事務管理不当利得不法行為)による具体的な債権の発生原因とは別に,債権総則・契約総則の諸規定が密接に関係してくる。最終的には,それぞれの具体的な制度につき正確かつ緻密な理解を獲得するのが望ましい。基礎科目である民法基礎Ⅱであれば,最終目標を諸制度の相互関係(各制度の理論的なつながり)を理解することで足りるが,民法Bの到達目標はその先にある。すなわち,債権法全体を鳥瞰する視野を持ち,かつ,具体的な事例問題について適用されるべき条文と法理を適切に取捨選択して,それらを事実に当てはめて一定の妥当な解決を導く能力を獲得することが,この授業の獲得目標である。

授業外の学習

講義前には,レジュメ(TKCにアップロード)に目を通し,条文を確認するとと もに,指定教科書の該当箇所で基本事項を確認すること。講義後は,指定 教科書の該当箇所を再読するほか,参考文献を読むなどして,知識の定着 を図ること。 予習・復習時間とも毎週授業時間と同等の時間が必要となる。 なお,復習として,TKCの基礎力確認テストを実施する。これは,成績評価 の対象となることから,受け忘れのないよう注意されたい。

所要時間: 予習・復習には,190分以上の学習時間を要する。

スケジュール

  1. 第1回 契約の成立・定型約款等 売買契約を素材として,契約成立のプロセスを学び,給付内容の特定や,代金請求権等の履行請求について学習する。その過程で,債権の意義・種類・対象について,物権と比較をしながら解説する。すなわち,債権の種類(とりわけ,特定物債権・種類債権の意義,種類債権の特定の要件・効果),債権の対象,債権と物権との違い,債権の発生原因について理解することが内容である。加えて,契約締結上の過失や売買代金請求の要件論を手がかりにして,契約法と不法行為法における発想の差異・契約の意義を理解する。 また,債権法改正により規定された定型約款に関する規律について,その条文の内容を正確に説明することができることが求められる。 〔到達目標〕 ・債権にはどのような権能が認められるかについて,その概要を説明することができる。また,契約の成立時期について説明することができる。 ・提携約款の有効要件等について,民法の一般原則との関係も含めて説明することができる。
  2. 第2回 契約の解除 〔授業内容〕 解除の意義・機能,解除の要件・方法・効果,解除と第三者の関係について解説する。 債務不履行を理由とする解除のための要件を,とりわけ履行遅滞の場合を中心として確認する。その際には,とくに,相手方が同時履行の抗弁権を有する場合の解除について詳しく考察する。また,複数契約上の債務不履行と契約解除の問題を,設例を通じて検討する。さらに,解除の効果について,返還すべき目的物の範囲(原状回復の範囲)の問題に力点を置いて検討する。 〔到達目標〕 解除制度の目的,債務不履行を理由とする解除の要件,解除の効果,解除と第三者の関係について説明することができる。より具体的には, ・解除が何を目的とした制度であるか,解除にはどのような種類のものがあるかについて,説明することができる。現行法の下で,の債務不履行を理由とする解除が認められるための要件について,債務不履行の類型の相違を考慮しながら説明することができる。他方,債権法改正の下での,帰責事由に依拠しない解除の要件について理解することができる。 ・解除権が行使された場合の当事者間での効果,第三者との関係でどのような意味を持つかについて,説明できる。その際,解除における給付の返還の関係が,給付不当利得の一般理論とどのような関係にあるかを説明できるようにする(利得の返還の範囲等)。
  3. 第3回 危険負担・履行請求権等 第3回 危険負担 〔授業内容〕 契約存続中の関係(同時履行,危険負担)。履行請求権にも触れたうえで,同時履行の抗弁権の要件・効果・行使方法,危険負担が問題となる場面とその処理,事情変更の原則の要件・効果について解説する。さらに,手付の種類・意義,手付における履行の着手について、弁済の提供や受領遅滞との関係について学習する。また,契約成立段階における信義則上の付随義務(情報提供義務)等について学習する。 以上の他,制限種類物売買のケースにおいて,売主の帰責事由や目的物特定・危険負担が,どのような形で問題になるかを理解する。その検討を通じて,債務不履行の従来の3類型(履行不能・履行遅滞・その他の債務不履行)の要件と効果を検討する。その上で,第2回でみた契約法の理論構造を全体として整理し,弁済提供や特定・受領遅滞の相互関係やリスクの移転時期につき,その理解を深める。 〔到達目標〕 ・同時履行の抗弁権が認められる場面とその効果,また,危険負担が問題となる場面とその場面における処理,事情変更の原則の要件・効果について説明することができる。手付における「履行の着手」と同時履行の抗弁権の関係,および,受領遅滞と危険負担の関係を説明することができる。弁済提供とはどのような制度であり,弁済の提供があった場合にどのような効果が生ずるか,また,どのような行為をすれば弁済の提供があったといえるかを説明できる。受領遅滞とはどのような制度であり,その要件及び効果はどのようなものかについて,弁済の提供の制度と関連づけながら説明することができる。 ・双務契約において危険負担がどのような場合に問題となり,その場合に契約上の債権債務がどうなるかについて,具体例を挙げて説明することができる。とりわけ,債権法改正の下で,従来の危険負担のルールがどのように変更されるかを説明することができる。危険負担の代償請求権はどのような場合に問題となるかについて,具体例を挙げて説明することができる。 ・契約締結過程における当事者の義務が問題となる場面について,具体例を挙げて説明することができる。 ・情報提供義務等の付随義務に関する判例の考え方を説明することができる。
  4. 第4回 契約不適合に基づく責任・売買 〔授業内容〕 特定物売買を素材にして,2017年の債権法改正において,瑕疵担保責任を「契約不適合」という考え方に修正された点を理解する。契約不適合に基づく各種の請求,すなわち,修補請求権や代金減額請求等の要件や効果を学ぶ。 〔到達目標〕 「契約不適合」による責任の規律全体を,従来の判例法理との関係も整理しながら説明することができる。また,売買の目的の全部または一部が他人に属していた場合に,売主はどのような義務ないし責任を負い,また買主はどのような要件の下でどのような権利を有するかを,具体例に即して説明することができる。目的物の数量が不足していた場合,あるいはその一部が契約締結時において滅失していた場合に,買主はどのような要件の下でどのような権利を有するかを,具体例に即して説明することができる。あるいは,売買の目的物の利用が他人の利用権等によって制限される場合,売買の目的物の利用のために必要な権利が存在していなかった場合に,それぞれ,買主はどのような要件の下でどのような権利を有するかを,具体例に即して説明することができる。
  5. 第5回 債務不履行・債務不履行に基づく損害賠償請求 〔授業内容〕 債務不履行に基づく損害賠償について,履行遅滞等の各債務不履行類型における損害賠償の内容や,民法416条の解釈,損害額の計算方法等について詳しく検討する。 〔到達目標〕 ・債務不履行のさまざまな類型を,それぞれの類型に結びつけられた効果と合わせて説明することができる。 ・債務不履行に基づく損害賠償の要件及び効果について,債務不履行の類型の相違に留意しつつ,それぞれ具体例を挙げて説明することができる。 ・債務不履行に基づく損害賠償請求と不法行為に基づく損害賠償請求の関係について,説明することができる。 ・履行補助者を定義することができる。 ・金銭債務の不履行を理由とする損害賠償に関する特則について,説明することができる。 ・損害賠償の予定及び違約金に関する合意はどのような範囲で効力を有するかを説明することができる。
  6. 第6回 請負 〔授業内容〕 建物建築請負契約を念頭において,建物の所有権の帰属の問題,目的物が滅失・損傷した場合の法律関係請負契約の中途解約,債務不履行解除,請負における瑕疵担保責任をめぐる法律問題について,具体的事例に即して検討する。2017年債権法改正における「契不適合」の考え方において,改正前の請負の瑕疵担保責任がどのように変容したかを理解する。とりわけ,欠陥建物の建築をめぐる法律問題につき,不法行為により損害賠償請求をする場合と,請負契約の瑕疵担保責任を追及する場合との異同に着目する。 また,請負契約について,他の労務提供契約との類似点と相違点を確認したうえで,建物建築請負を念頭において建物の所有権の帰属の問題,目的物が滅失・損傷した場合の法律関係の問題を中心に検討する。加えて,贈与契約について簡単に取り上げる。 〔到達目標〕 ・請負人がどのような義務ないし責任を負うかについて,売買における売主の場合と対比して,説明することができる。 ・建物建築請負契約において,完成した建物の所有権の帰属に関する判例の考え方とこれに関する学説の主要な見解について,具体的な効果の相違に留意しながら説明することができる。 ・請負において仕事の目的物が滅失・損傷した場合における法律関係について,説明することができる。 ・贈与につき,売買との異同を担保責任等について説明することができる。
  7. 第7回 贈与・委任・寄託・賃貸借(1) 〔授業内容〕 雇用・委任・寄託の概要,委任の意義,受任者の義務,委任の終了原因,受寄者の注意義務,消費寄託について検討する。また,賃貸借の概要,使用貸借・用益物権等各種不動産利用権との比較,借地借家法の適用対象,賃貸借の成立要件,敷金,存続期間,賃貸人・賃借人の権利義務,(当事者の権利義務関係,賃借権の譲渡・賃借物の転貸)について取り上げる。 〔到達目標〕 ・雇用・委任・寄託の概要,受任者が負う主要な義務,委任の終了原因,受寄者の注意義務の内容等を説明することができる。委任契約と代理の関係,死後委任契約と相続の関係等について理解することができる。 ・賃貸借の概要,賃貸借により生じる権利義務,敷金の概要と返還に関する権利義務,借地借家法の適用範囲,借地借家法における存続期間・更新に関する規律を説明することができる。より具体的には, ・賃貸借とはどのような契約であり,賃貸人と賃借人の間でどのような権利義務(賃貸人の修繕義務・費用償還義務等を含む)が生じるかを,説明することができる。 ・借地借家法の適用範囲について理解している。 ・借地借家法における重要な規律(裁判所による土地の賃借権の譲渡・転貸の許可,建物買取請求権,賃料増減額請求権等)について,条文を参照しながら,説明することができる。 ・借地借家法における存続期間・更新に関する規律(定期借地権・定期建物賃貸借を含む)の概要について,条文を参照しながら説明することができる。 〔到達目標〕 ・雇用・委任・寄託の概要,受任者が負う主要な義務,委任の終了原因,受寄者の注意義務の内容等を説明することができる。委任契約と代理の関係,死後委任契約と相続の関係等について理解することができる。
  8. 第8回 賃貸借(2) 〔授業内容〕 賃貸借契約においてやりとりされる敷金を巡る法律関係について詳論する。また,賃借にの負担した費用の償還についても設問で検討する。以上を前提として,〔授業内容〕 目的物が譲渡された場合の新所有者への対抗(賃借権の対抗力)の問題を設例や具体的事例に即して検討したのち,二重賃借人間および二重譲受人間の対抗関係について考察する。ついで,賃借権に基づく妨害排除請求権について考察したのちに,賃貸借のさまざまな終了原因を整理しつつ,各終了原因をめぐる個別問題を検討する。 〔到達目標〕 継続的契約関係の特徴やそれに伴う法規制・取引実務の現状を理解する。そのうえで,信頼関係法理の具体像(賃料不払いケース,無断増改築,無断譲渡転貸)や適法転貸借の法律関係を説明できるようにする。より具体的には, ・賃貸借の目的物が第三者に譲渡された場合の法律関係について,説明することができる。 ・借地借家法における借地権及び建物賃借権の対抗力に関する規律の趣旨及び概要について,説明することができる。 ・賃貸人の地位の移転や,賃借人の交代において敷金関係がどのように承継されるのかを説明することができ,これらの法理を前提として,債務引受の法理を一通り説明することができる。 ・賃借権が第三者によって侵害された場合に,賃借人にどのような救済が認められるかについて,説明することができる。 ・賃貸借の終了に関する民法の規律及び判例・学説の基本的な考え方について,説明することができる。
  9. 第9回 賃貸借(3)・使用貸借・消費貸借・不当利得(1) 〔授業内容〕 引き続き,賃貸借関係の承継の問題を検討する。その後,使用貸借・消費貸借を取り上げる。特に,近年の過払金請求事件の一連の判例法理を検討して,利息制限法等の規律について学ぶ。使用貸借と併せて,配偶者短期居住権等についても検討sる。また,過払金請求訴訟が不当利得の返還請求事件であることを導入部として,不当利得の意義,要件・効果について解説する。 〔到達目標〕 ・使用貸借とはどのような契約であるのか,説明することができる。 ・消費貸借とはどのような契約であり,どのような要件が備われば成立するか(消費貸借の予約や準消費貸借を含む)を説明することができる。また,諾成的消費貸借について,要物契約との違いを説明できる。 ・金銭債権における元本債権と利息債権の違いについて,利息債権がどのような場合に発生するかを含めて説明することができる。 ・配偶者居住権・短期居住権の要件と効果,及び,これらの改正の契機となった判例法理との異同を説明することができる。 ・一般不当利得の要検と効果について説明することができる。 ・利息制限法の制限を超える利息を約した消費貸借契約の効力について,具体例に即して説明することができる。また,利息制限法の利率を超過する消費貸借の返還の関係についての判例法理を説明することができる。 ・不当利得制度の概要,不当利得の成立要件について,説明することができる。
  10. 第10回 不当利得(2) 〔授業内容〕 前回に引き続き,不当利得を扱う。特に不当利得の衡平説(公平説)の立場と類型論の立場の基本的な相違を確認する。特に重点をおくのは不当利得の類型論であり,給付利得(契約の巻き戻し,非債弁済)・侵害利得(財貨帰属侵害)・支出利得(費用償還)における発想の特徴,言い換えれば3者間不当利得の構造の違いを理解する。加えて,不法原因給付の判例法理について検討する。3者間不当利得を中心に検討する。すなわち,転用物訴権をめぐる考え方の対立と基本的な問題点を整理する。次に,騙取金による弁済の法律関係,および,誤振込の法律関係について,それぞれ具体的事例に即して検討し,考え方の対立と問題点を確認する。事務管理について,委任との異同に注意しながら,その法律関係を,設例を通じて検討する。 〔到達目標〕 ・不当利得がどのような制度であるかについて,衡平説的な立場と類型論の立場の基本的な相違点を,具体例を挙げて説明することができる。さらに,不当利得の類型論が,不当利得の類型の代表例としている給付利得類型および侵害利得類型とはどのような場合であるかを,具体例を挙げて説明することができ,不当利得の返還債務者が,どのような範囲で返還義務を負うかを,具体例に即して説明することができる。 ・不当利得の衡平説・類型論の違いについて理解し,債権法改正における類型論の一部における採用(121条の2)の持つ意味を説明することができる。 ・受益者の利得消滅の抗弁等について説明することができる。 ・衡平説に立った場合の不当利得の要件を学んだうえで,類型論における侵害利得・給付利得等における要件事実の違いを摘示することができる。 ・具体的な事例問題において,衡平説・類型論それぞれの立場からの解答の構成を示すことができる。 ・不法原因に基づく給付の返還請求が認められないという原則とその例外について,民法90条との関係に留意しながら,具体例を挙げて説明することができる。 ・いわゆる転用物訴権とはどのような制度であり,どのような場合に認められるかについて,考え方の対立と基本的な問題点を説明することができる。
  11. 第11回 事務管理・不法行為(1) 〔授業内容〕 事務管理は自習項目とする。この回では,民法709条の要件や効果について,個々の要件や効果の詳細な部分については自習に委ねつつ,それらの理解を,包括的な事例問題を用いて確認していく。権利・利益侵害要件をめぐる論争史,判例などにあらわれた権利・利益侵害の具体例,損害についての基本的な考え方,因果関係の意義について学習する。 〔到達目標〕 不法行為制度の機能・目的,709条の要件・効果,過失についての基本的な考え方を説明できるようにする。より具体的には, ・不法行為制度の機能及び目的について説明することができる。 ・不法行為責任における過失責任,無過失責任,中間責任の考え方を,民法上及び特別法上の具体例を挙げて説明することができる。 ・民法709条がどのような要件を充たせば責任の成立を認めているのか,またどのような場合に責任の成立が否定されるのかについて,その全体の構造を示すことができる。 特に重点をおくのは過失・権利侵害・損害・因果関係といった一般不法行為の要件であり,それらを理解する。具体的には,権利・利益侵害要件の意味,権利侵害と違法性の関係,損害とは何か,因果関係を説明することができることに目標を置く。より具体的には, ・権利・利益侵害要件の持つ意味について,権利侵害と違法性の関係に関する判例・学説の展 開を踏まえつつ,説明することができる。 ・過失とは何かについての基本的な考え方を説明することができる。 ・損害とは何か,損害にはどのような種類のものがあると考えられているかについて,基本的 な考え方を説明することができる。 ・因果関係についての基本的な考え方を説明することができる。 ・侵害行為の差止請求と不法行為に基づく損害賠償請求との関係について,説明することができる。
  12. 第12回 不法行為(2) 〔授業内容〕 名誉毀損やプライバシー侵害について,事例問題の検討を通じて理解を確認していく。主要な事件類型(名誉・プライバシー侵害,公害・生活妨害,医療過誤,第三者による債権侵害,自動車事故,製造物による事故等)に即して,不法行為の要件・効果を説明することができることを目指す。 不法行為責任の成立を阻却する事由について触れたうえで,損害の金銭的評価(財産的損害・精神的損害),損害賠償の範囲,賠償額の減額調整制度である過失相殺制度について学習する。なお,法定利率(民404条)は,債権法改正に伴い変動利率への移行が予定されているため,この点も合わせて取り上げる。賠償額の減額調整制度である被害者の素因・損益相殺についての判例法理についても理解を問う。 〔到達目標〕 ・主に財産的損害について,その損害の範囲および額の算定方法について説明することができる。とりわけ,中間最高価格の賠償の法理や,不法行為における民法416条の準用の意義等について説明することができる。また,民法722条2項の過失相殺について説明することができる。 ・賠償額の調整制度として機能する被害者の素因・損益相殺,損害賠償の請求権者,不法行為の期間制限について説明することができる。特に重点をおくのは損害賠償の範囲論,損害賠償の減額調整,請求権者の範囲であり,それらを理解する。すなわち,被害者の素因の競合事例における減額の可能性に関する各種の考え方について説明でき,かつ,不法行為責任の成立が求められる場合に,損害賠償請求をすることができる者は誰かについて,説明することができる(被害者が死亡した場合,生存している場合,胎児の損害賠償請求の可否を含む)。
  13. 第13回 不法行為(3) 〔授業内容〕 前回までの過失相殺等に関する理解を前提として,賠償額の減額調整制度である被害者の素因・損益相殺についての判例,損害賠償請求権の相続などに伴い問題となる損害賠償の請求権者,不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効・除斥期間について解説する。併せて,債権法改正後における安全配慮義務の位置づけについても取り上げる。さらに,使用者責任の根拠および要件・効果,工作物責任について解説する。すなわち,使用者責任について,まず成立要件としての「事業の執行について」に関する外形理論を取り上げ,取引的不法行為が問題となる事例については実際の下級審事例を素材として,代理法上の処理と比較しつつ検討する。ついで,使用者責任と求償の問題を検討する。 〔到達目標〕 賠償額の調整制度として機能する被害者の素因・損益相殺,損害賠償の請求権者,不法行為の期間制限について説明することができる。特に重点をおくのは損害賠償の範囲論,損害賠償の減額調整,請求権者の範囲であり,それらを理解する。すなわち,被害者の素因の競合事例における減額の可能性に関する各種の考え方について説明でき,かつ,不法行為責任の成立が求められる場合に,損害賠償請求をすることができる者は誰かについて,説明することができる(被害者が死亡した場合,生存している場合,胎児の損害賠償請求の可否を含む)。さらに,損害賠償請求権の消滅に関する判例法理の考え方を説明することができる。 ・債務不履行に基づく損害賠償請求と不法行為に基づく損害賠償請求の関係(安全配慮義務の位置づけを含む)について,説明することができる。 ・責任能力の意義,監督義務者の責任,使用者責任の根拠および要件・効果を説明することができる。とりわけ,使用者責任において,使用者がなぜ被用者の行為について責任を負うのか,また,使用者責任の要件と効果(被用者への求償を含む)はどのようなものかについて,説明することができること,および,「事業の執行」に関する判例の考え方の変遷や学説の考え方について説明することができる。
  14. 第14回 不法行為(4) 〔授業内容〕 土地工作物責任に関し,責任の根拠,要件・効果を確認する。また,共同不法行為の制度趣旨,問題となる具体例と要件,共同不法行為の効果を解説する。そのうえで,不法行為制度についてのまとめを行う。 〔到達目標〕 ・土地・工作物責任の根拠および要件・効果について,説明することができる。 ・共同不法行為責任の意義,要件及び効果について,説明することができ,また,共同不法行為と競合的不法行為の関係について説明することができる。絶対的瑕疵相殺説と相対的過失相殺説との違いについて説明することができる。一般不法行為・特殊不法行為全体について,その概要を説明することができる。
  15. 第15回 期末試験 試験期間中に期末試験を実施する。試験時間は120分を予定している。

教科書

下記の3冊のテキストは教科書として使用する。テキスト・参考書として挙げたものでも,開講時までに新たな改訂版が出ることもあり得るので,常に最新版を参照されたい。 事実,民法判例百選については,Ⅰ・Ⅱ・Ⅲとも2月20日に最新版が出版されているため,注意すること。

  • 基本講義債権各論Ⅰ 事務管理・不当利得〔第4版〕

    著者: 潮見佳男

    出版社: 新世社・2022年

  • 基本講義債権各論Ⅱ 不法行為〔第4版〕

    著者: 潮見佳男

    出版社: 新世社・2021年

  • 債権総論〔第4版〕

    著者: 中田裕康

    出版社: 有斐閣・2020年

参考書

参考書として挙げる書籍は,必ずしも必携ではないが,参照することが推奨される。

  • 民法判例百選Ⅱ債権〔第9版〕

    著者: 窪田充見・森田宏樹編

    出版社: 有斐閣・2023年

  • 契約法〔新版〕

    著者: 中田裕康

    出版社: 有斐閣・2021年

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