憲法

専門職学位課程法学研究科

LWS20100

コース情報

担当教員: 巻 美矢紀

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 金3

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: あり

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

10%

定期試験

定期試験期間中

50%

中間試験

授業期間中

20%

小テスト等

20%

その他

法科大学院の成績評価基本原則による。 授業参加10% 小テスト20% (2回実施。第1回〔10%〕は第2回授業の冒頭,第2回〔10%〕は第13回授業の冒頭に実施予定)

0%

詳細情報

概要

法学既修者を対象に,予め配布した質問事項にもとづいて質疑を行い,回答をふまえて解説を行う。これにより,憲法に関する判例や学説のポイントを確認するとともに,それらに対する理解を深め,憲法問題に実践的に対応できる能力を身につけてもらう。

目標

憲法の判例・学説に関する基本的な理解を前提に,憲法事案について,事実を憲法の観点から的確に分析して,憲法問題を発見し,憲法上の争点を明確化して,当事者の主張,自身の見解について論じられるようにする。

授業外の学習

予習として,各回の質問事項について,テキストおよび参考文献などを読んで回答できるようにしておく。 復習として,授業での解説のポイントを確認整理し,関連判例に関する参考文献を読むとともに,授業で扱った項目に関する短答式問題と演習問題を解く。またコア・カリキュラムとの関係で指示されたものについて自習する。

所要時間: 予習120分,復習120分

スケジュール

  1. 判例の読み方・使い方 経済的自由(1) 職業選択の自由 小売市場判決,薬事法違憲判決,酒類販売免許制判決,要指導医薬品ネット販売規制判決を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 ○職業選択の自由を保障する意義について,人格的側面及び経済的側面から説明することができる。 ○職業選択の自由の内容について,職業を選択する自由及び職業を遂行する自由を挙げて,説明することができる。また,営業の自由の法的性質について理解している。 ○職業選択の自由など経済活動の自由については,精神的自由などの場合と異なって,国などによる規制が広く認められる理由について,判例を踏まえて説明することができる。 ○職業選択の自由に対する規制の態様として,届出制,許可制,資格制,特許制及び国家独占などについて理解している。 ○職業選択の自由の制約目的として,どのようなものがあるかについて,消極目的(警察目的)及び積極目的(社会・経済政策目的)などの区別に留意して,説明することができる。 ○職業選択の自由の制約について,営業許可の要件として距離制限などを定める場合,租税収入を確保するため開業について許可制をとる場合及び規制一定の品目の輸入を専ら特定の団体に行わせ,その売渡方法及び価格などの規制を行う場合など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。
  2. 経済的自由(2) 財産権 森林法違憲判決,証券取引法判決,奈良県ため池条例判決,河川附近地制限令判決を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 ○財産権の意義について,財産権の社会的性格が強調されるに至った歴史的経緯を踏まえて,説明することができる。 ○憲法29条1項の財産権の保障の意味について,私有財産制度に関する側面と個人が有する財産に関する側面に留意して,判例を踏まえて,説明することができる。 ○条例による財産権の制約の可否及びその範囲について説明することができる。 ○財産権に対する制約について,共有物の分割請求権を制限する場合及び金融商取引におけるインサイダー情報の不当な利用の防止に係る規制を課す場合など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。
  3. 精神的自由(1) 思想良心の自由,信教の自由 「君が代」起立斉唱事件,エホバの証人剣道実技拒否事件,宗教法人オウム真理教解散命令事件の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 思想及び良心の自由 ○思想及び良心の自由の保障の歴史的沿革を理解している。 ○思想及び良心の自由の内容及び範囲を説明することができる。 ○沈黙の自由と消極的表現の自由の異同を説明することができる。 ○思想及び良心の自由の侵害の態様について,特定の思想を持つこと又は持たないことを理由とした不利益処遇,特定の思想又は特定の思想と結びついた行為の押しつけ及び自己の思想内容又は自己のものではない思想内容の開示強制(推知を含む)など,具体的事例を挙げて,説明することができる。 ○思想及び良心の自由の制約について,裁判所が謝罪広告の掲載を命令する場合,学校が内申書に政治活動歴を記載する場合及び公立学校の校長が国歌斉唱の際に音楽教師にピアノ伴奏を命令する場合など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 信教の自由 ○信教の自由の歴史的沿革を理解している。 ○信教の自由の保障の内容について,信仰の自由,宗教的行為の自由及び宗教的結社の自由などを挙げて,説明することができる。 ○信教の自由の制約について,宗教上の行為により他者加害をもたらす場合,宗教上の施設又は活動に国などが課税する場合及び信仰に基づく体育実技の履修の免除など,法が一般的に課す義務の免除を宗教上の理由に基づいて求める場合など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる
  4. 政教分離 津地鎮祭判決,愛媛県玉串料違憲判決,空知太神社違憲判決,那覇市孔子廟違憲判決の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 宗教的人格権 ○宗教的人格権の主張について,判例を踏まえて,説明することができる。 政教分離 ○国教制度,公認宗教制度及び政教分離制度など,政治と宗教の関係に関わる制度について理解している。 ○政教分離の意義について,信教の自由と関連付けて説明することができる。 ○政教分離規定の法的性格について説明することができる。 ○政教分離の内容について,宗教団体に対する特権の付与の禁止,宗教団体による政治上の権力の行使の禁止及び国の宗教的活動の禁止及び宗教上の組織若しくは団体に対する公金支出の禁止などを挙げて,説明することができる。また,政教分離にいう「宗教団体」又は「宗教上の組織若しくは団体」の意味について,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,説明することができる。 ○政教分離に違反するか否かを判断するために判例が用いる目的効果基準について,その意義,根拠及び問題点を説明することができる, ○どのような行為が政教分離規定に違反するかについて,国などが宗教的行事を行う場合,国などが宗教団体若しくは宗教的活動に公金の支出などを行う場合,公務員が宗教的行事に参加する場合など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえ,目的効果基準に照らして考察することができる。
  5. 精神的自由(2) 表現の自由①ーー事前抑制,内容規制(定義づけ衡量) 税関検査事件,北方ジャーナル事件,岐阜県青少年保護育成条例事件,グーグル事件,大阪市ヘイトスピーチ対処条例事件の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 ○憲法21条2項の定める「検閲」の概念及び検閲又は表現の事前抑制が禁止される根拠を説明することができる。また,どのような場合に憲法が禁止する検閲又は表現の事前抑制に該当するか否かについて,税関検査,裁判所による名誉及びプライバシーを侵害する表現の差止め及び教科書検定などの具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○犯罪のせん動を処罰することが憲法に適合するか否かについて,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○「わいせつ」の概念及びわいせつ物頒布罪の保護法益を説明することができるとともに,わいせつ表現の制約が憲法に適合するか否かについて,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○名誉及びプライバシーを侵害する表現の制約について,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○営利的表現の自由の保障根拠,制約の根拠及び制約が許される程度について,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。
  6. 精神的自由(3) 表現の自由②ーー内容中立規制,マスメディアの自由 大分県屋外広告物条例事件,駅構内ビラ配布事件,立川テント村事件,博多駅事件,NHK記者証言拒否事件,NHK受信料事件の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 ○表現の内容に着目した規制と表現内容に中立的な規制を区別する見解について,両者をどのように具体的に区別するか,それぞれが表現の自由にどのような不利益をもたらすか及び両者の合憲性をそれぞれどのように審査すべきかなどに留意しつつ,説明することができる。 ○表現の自由の直接的制約と間接的・付随的制約を区別する見解について,両者をどのように具体的に区別するか及びそれぞれが表現の自由にどのような不利益をもたらすかなどに留意しつつ,判例を踏まえて,説明することができる。 ○「知る権利」について,情報の受領を公権力によって妨げられる場合,公権力に対して情報の開示を求める場合及びマスメディアに対して反論文の掲載などを求める場合など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○報道の自由及び取材の自由の意義,内容及び保障の根拠について理解した上で,報道機関に取材源の開示や取材資料の提出が求められた場合や,記者に国家公務員法上の秘密漏えい罪の責任が問われた場合など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○放送の自由に対する規律の基本的な在り方について説明することができる。
  7. 精神的自由(4) 集会の自由 新潟県公安条例事件,徳島市公安条例事件,道路交通法事件,泉佐野市民会館事件の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 ○集会の自由を保障する意義及び「集会」の意味について説明することができる。 ○道路,公園又は公会堂などの一定の公共施設における集会,集団行進その他の表現活動の保障に関する「パブリック・フォーラム」論について説明することができる。 ○集会の自由の保障の制約について,道路交通の安全を確保する場合,公共の秩序を維持する場合及び公共施設の管理の必要がある場合など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。また,これに関連して,届出制や許可制などの規制態様に関する問題及び「敵意ある聴衆の法理」について,説明することができる。
  8. 社会権:生存権,教育を受ける権利(学問の自由),労働基本権 堀木訴訟,老齢加算廃止事件,旭川学テ事件(東大ポポロ事件),全農林警職法事件の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 生存権 ○生存権の実現について,立法及び行政の裁量が広く認められるという立場について理解するとともに,次に掲げる点に留意しつつ,裁量統制のあり方を考察することができる。 ・憲法25条の1項と2項の間で,立法裁量の範囲は異なるか。 ・社会保障立法が平等原則に違反するか否かかが問題となる場合,どのような違憲審査をすべきか。 ○特定の課税制度が「健康で文化的な最低限度の生活」を侵害するか及び社会保障について既存の給付水準の引き下げは憲法25条に違反するかについて,具体的な事例を挙げて考察することができる。 教育を受ける権利 ○「学習権」の観念について,その内容を理解しているとともに,憲法26条とどのような関係にあるかを説明することができる。 ○「教育権」の所在に関する学説の対立を理解しているとともに,教育を受ける権利の実現に関する,国民,公権力,親及び教師などの関係を,判例を踏まえて,説明することができる。 ○初等中等教育機関における教師の「教育の自由」について,それが認められるか,その内容はどのようなものかを,大学における教授の自由と比較しつつ,説明することができる。 ○学習指導要領の法的性質について,全国一斉学力テスト,教科書検定制度及び教員に対する懲戒処分などの具体的事例を挙げて,説明することができる。 労働基本権 ○公務員の労働基本権の制限について,現行法の基本的仕組みを理解しているとともに,制約の根拠及び制約の許される程度などについて,判例を踏まえて,考察することができる。 ○労働組合の統制権について,ユニオンショップ協定の効力の及ぶ範囲及び組合員の立候補の自由や良心の自由の制限などの具体的事例を挙げて,判例を踏まえて,考察することができる。
  9. 中間テスト(60分) 適正手続 第三者所有物没収事件,成田新法事件の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 中間テスト ○第8回までの授業を前提に,憲法事案について,事実を憲法の観点から的確に分析して,憲法問題を発見し,憲法上の争点を明確化して,当事者の主張,自身の見解について論じられるようにする。 適正手続 ○なぜ手続の適正が権利として憲法上保障されるかについて説明することができる。 ○刑事手続に関して,憲法31条の定める「法律の定める手続」がどのような意味を有するかについて,判例を踏まえて,説明することができる。また,罪刑法定主義の要請の根拠条文について説明することができる。 ○刑事手続の適正さについて,附加刑として第三者所有物を没収する際に当該所有者に告知,弁解及び防御の機会を与えない場合,違法な方法で収集された証拠が裁判において提出された場合及び刑罰法規の規定が不明確な場合など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○行政手続に関して手続の適正を求める根拠条文,並びに保障される権利の内容及び程度などについて,行政手続の類型及び刑事手続との異同に着目し,以下に掲げる具体的事例などを挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ・空港の安全を確保するため,告知,弁解及び防御の機会を与えることなく,規制区域内に存在する工作物を多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用などに供することを禁止する場合。 ・裁判官の発する令状によらずして,行政調査のため,住居に侵入し,設備及び書類などの検査を行う場合。 ・所得税法に基づく税務調査における質問に対する応答義務,自動車運転者による交通事故の報告義務及び医師による異状死体などの届出義務などを課す場合。 ○憲法と行政手続法の関係について説明することができる。
  10. 人権総則(1) 個人の尊重と幸福追求権 京都府学連事件,住基ネット事件,性同一性障害特例法手術要件事件の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 ○憲法13条前段の定める個人の尊重及び憲法24条2項の定める個人の尊厳の意義を,その思想的系譜と人権体系上の位置付けを踏まえて理解した上で,その法的性格について説明することができる。 ○憲法13条後段の定める「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」の権利としての性格について,判例を踏まえて,説明することができる。 ○「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」の保障の範囲について,その保障の包括性や補充性をめぐる議論に留意して,説明することができる。 ○「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」を母体とし,そこに根拠付けられる特定の具体的な権利について,次に掲げる点に留意して,判例を踏まえて,考察することができる。 ・プライバシーに対する権利の内容と法的効果について,他の憲法条文による根拠付けが可能な場合に留意しつつ,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ・自己決定に対する権利の内容と法的効果について,他の憲法条文による根拠付けが可能な場合に留意しつつ,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。
  11. 人権総則(2) 法の下の平等 尊属殺重罰規定違憲判決,国籍法違憲判決,婚外子法定相続分差別違憲決定,再婚禁止期間訴訟,夫婦別姓訴訟の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 ○平等の観念の歴史的及び現代的意義について,自由の観念と対比して理解している。 ○形式的平等と実質的平等の異同について理解している。 ○絶対的平等と相対的平等の異同について理解している。 ○法適用の平等と法内容の平等の異同について理解している。 ○日本国憲法が,平等に関する基本原則として法の下の平等を定めた(14条1項)上で,さらに個別の条文で定めていることを理解している。 ○憲法14条1項は,事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り,差別的な取扱いを禁止する趣旨であるとする判例の見解について説明することができる。 ○憲法14条1項後段に掲げられた「人種,信条,性別,社会的身分又は門地」という事由には,法的に特別な意味があるのか,あるいは単なる例示に過ぎないのかについて,判例を踏まえて,説明することができる。 ○どのような区別が合理的な根拠に基づくものではなく,法の下の平等に反するかについて,尊属に対する犯罪を特に重く処罰する規定,及び日本国民の父と外国籍の母との間に出生し,その後,父から認知された子に対して,帰化と準正の場合を除き日本国籍の取得を認めない規定など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○租税法規の定立及び適用における平等について,給与所得者と事業所得者の間の不平等が問題になる場合などの具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○歴史的に差別されてきた集団に対して,優先的な処遇を与える積極的差別是正措置(アファマティブ・アクション)が,逆差別として,憲法に違反するか否かについて,具体的事例を挙げ,考察することができる。 ○どのような区別が合理的な根拠に基づくものではなく,法の下の平等に反するかについて,非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1と定めていた規定,及び女性にのみ再婚禁止期間を課す規定など,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。
  12. 人権総論 人権の主体・適用範囲 マクリーン事件,八幡製鉄事件,よど号ハイジャック記事抹消事件,猿払事件,堀越事件,三菱樹脂事件の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 ○外国人の人権享有主体性について,肯定説及び否定説の立場を理解した上で,肯定説に立った場合に保障される人権の範囲及び制限される人権の程度について,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○外国人の入国及び再入国の自由の有無について,判例を踏まえて,説明することができる。 ○「定住外国人,難民及びその他の外国人」などの外国人の類型により,基本的人権の保障の有無や程度が異なる可能性があることを理解している。 ○法人・団体の人権享有主体性について,肯定説及び否定説の立場を理解した上で,肯定説に立った場合に保障される人権の範囲及び制限される人権の程度について,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○公務員の人権が特別の制約に服するか否かについて,政治的行為の自由や労働基本権が制約される場合などの具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○受刑者及び未決拘禁者の人権が,刑事収容施設において,特別の制約に服するか否かについて,喫煙の自由や図書閲読の自由が制約される場合などの具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○私人間の紛争において人権侵害の主張がなされた場合に,それが法律行為によるものなのか,事実行為によるものなのかを区別した上で,法的解決のためには,どのような論理構成をとるべきかについて,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。
  13. 統治(1) 参政権(人権),国会,内閣 在外国民選挙権事件,在外国民国民審査権事件,投票価値の較差訴訟,戸別訪問禁止事件の判例を中心に検討するとともに,国会・内閣に関する重要論点の理解を深める。 〔到達目標〕 ○参政権の意義及び内容を理解している。 ○選挙権の性格について説明することができる。 ○法律の規定の廃止又は不存在のために選挙権を行使できないことが憲法に違反するか,違憲の場合にいかなる裁判上の救済がありうるかについて,判例を踏まえて,考察することができる。 ○普通選挙,平等選挙,自由選挙,秘密選挙及び直接選挙の原則について,その内容を説明することができる。 ○被選挙権及び立候補の自由の保障根拠並びにその制約の根拠と制約が許される程度などについて,具体的事例を挙げて,考察することができる。 ○公職選挙法による選挙運動の制約の根拠及び制約の許される程度などについて,戸別訪問の禁止などの具体的事例を挙げて,判例を踏まえて,考察することができる。 ○憲法改正国民投票運動の制約の根拠及び制約の許される程度などについて,考察することができる。 ○外国人に選挙権や被選挙権が保障されるか否か,国政選挙と地方選挙の場合について,考察することができる。 ○公務就任権の内容及び根拠となりうる憲法の規定について理解している。 ○外国人に公務就任権が保障されるか,既に公務員となっている定住外国人に管理職への昇進の機会を与えないことが平等原則に違反するかについて,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○選挙における投票価値の平等について,議員定数不均衡問題などの具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。
  14. 統治(2) 裁判所 板まんだら事件,苫米地事件,富山大学単位不認定事件,地方議会出席停止処分事件の判例を中心に,関連判例についても検討する。 〔到達目標〕 司法権と裁判所 ○憲法76条1項の定める「司法権」の意味について,具体的事件・争訟及び「法律上の争訟」の概念と関連付けて,説明することができる。 ○「法律上の争訟」の意味について,判例を踏まえて,説明することができる。また,ある争いが法律上の争訟に当たるか否かについて,法令の解釈又は効力に関する抽象的な争い,技術上又は学術上の事項に関する争い,及び宗教上の教義に関する争いなど,具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ○法律上の争訟に当たるが,裁判所による司法審査の対象とならない争いとして,憲法が明文で定める場合及び国際法が定める場合を説明することができる。また,それ以外の場合にも,そのような争いが認められるか否かについて,次に掲げる場合など具体的事例を挙げ,判例を踏まえて,考察することができる。 ・議院及び内閣の議事・運営手続などに関する争い ・国会及び内閣などの裁量に委ねられている事項に関する争い ・直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為に関する争い ・政党,大学及び宗教法人などの団体内部の事項に関する争い ○法律が,裁判所に対して,法律上の争訟以外の争いについて裁判する権限を付与することが憲法に違反するか否かについて,説明することができる。 ○陪審制及び参審制について理解した上で,裁判員制度の基本的仕組みについて説明することができるとともに,憲法上,どのような形態の国民の司法参加が認められるかについて,説明することができる。
  15. 期末試験 〔到達目標〕 ○憲法の判例・学説に関する理解を前提に,憲法事案について,事実を憲法の観点から的確に分析して,憲法問題を発見し,憲法上の争点を明確化して,当事者の主張,自身の見解について論じられるようにする。

教科書

  • 『精読憲法判例〔人権編〕』

    著者: 木下昌彦編

    出版社: 弘文堂・2018

  • 『憲法判例百選Ⅰ・Ⅱ〔第7版〕』

    著者: 長谷部恭男=石川健治=宍戸常寿編

    出版社: 有斐閣・2019

参考書

  • 『憲法判例の射程〔第2版〕』

    著者: 横大道聡編

    出版社: 弘文堂・2020

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