刑事訴訟法基礎 I*

専門職学位課程法学研究科

LWS11000

コース情報

担当教員: 朝山 芳史

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 水3, 金2

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: なし

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

15%

定期試験

定期試験期間中

50%

中間試験

授業期間中

20%

小テスト等

15%

その他

法科大学院の成績評価基本原則による。「授業参加」については,出席点のほか,授業中の発言や質問等を考慮する。「中間試験」は,第9回の冒頭に実施する。「小テスト」は,短答形式で2回実施する。

0%

詳細情報

概要

法学未修者を対象に刑事訴訟法の基礎を講義する。刑事手続に関する基本的知識や考え方を修得できるように,刑事手続の流れに沿って講義を進める。本講義と今学期後半に予定されている「刑事訴訟法基礎Ⅱ」を通じて,刑事手続の現状について十分な基礎的知識を得るとともに,通常の刑事手続で実際に取り扱われる様々な事項について,訴訟において実現すべき諸利益がどのように調整されているか,あるいはされるべきかなどについて具体的に検討し,訴訟法的な思考方法の基礎を身につけることを目標とする。これにより,その後に展開される「刑事訴訟法A・B」,「訴訟実務基礎(刑事)」への導入としての役割を果たす。第9回以降の時間外の適当な時期に,東京地裁での法廷傍聴を予定している。

目標

今学期後半に引き続き開講する「刑事訴訟法基礎Ⅱ」の前提として,刑事手続に関する基本的知識や考え方を修得する。さらに,2年次,3年次に展開される「刑事訴訟法A・B」,「訴訟実務基礎(刑事)」,「刑事法総合」の授業を円滑に履修できるような訴訟法的考え方の基礎を修得する。

授業外の学習

毎回の授業で予定されている事項に関わるテキストの該当箇所を熟読しておく。その際ポイントとなる事項をまとめたレジュメをあらかじめTKCにアップするので,予習の参考にする。また,授業で使用したスライドは,TKCにアップするので,復習に活用することが望まれる。

所要時間: 約190分

スケジュール

  1. 第1回 刑事手続・刑事訴訟法の役割,刑事手続の諸原理と現行刑事手続の構造,手続関与者,裁判員制度 (※ テキストの章・節に対応している。以下はあくまでも予定であり,授業の進捗状況により各回のテーマは変更することがあり得る。) 〔到達目標〕 〇 憲法31条の定める適正手続の保障が刑事手続を貫く理念であることを説明できる。 〇 刑事手続に関する諸理念(実体的真実主義,糾問主義と弾劾主義,当事者主義と職権主義)について説明できる。 〇 現行刑事訴訟法の基本構造について説明できる。 〇 手続の関与者ー特に,被告人の地位と弁護人の役割について説明できる 〇 裁判員制度の意義と導入の理由について説明できる。
  2. 第2回 捜査の意義,捜査の主体,捜査法の基本枠組み,捜査の端緒 〔到達目標〕 〇 捜査の主体,特に,司法警察職員と司法警察員との違い,司法警察員と検察官の関係について説明できる。 〇 捜査に関する一般規範として,警察比例の原則,強制処分法定主義,令状主義について説明できる。 〇 任意捜査と強制捜査の区別,その基準について説明できる。 〇 捜査の端緒ー特に,職務質問,所持品検査の意義と要件について説明できる。
  3. 第3回 逮捕と勾留,取調べ等 〔到達目標〕 〇 逮捕の意義,種類,要件について説明できる。 〇 勾留の目的,要件,手続,期間について説明できる。 〇 逮捕と勾留の関係,事件単位の原則,再逮捕・再勾留の禁止,別件逮捕・勾留について説明できる。 〇 取調べの意義と黙秘権の保障について説明できる。
  4. .第4回 捜索・押収・検証等(体液等の採取まで) 〔到達目標〕 〇 令状による捜索・差押えの要件,手続,範囲について説明できる。 〇 電磁的記録からの情報の取得の手段,要件について説明できる。 〇 令状によらない捜索・差押えの根拠,要件,範囲について説明できる。 〇 検証,鑑定等の意義,必要な処分について説明できる。 〇 体液等(尿,血液等)の強制的採取の手続,要件,必要な令状について説明できる。
  5. .第5回 通信・会話の傍受,写真撮影,その他の捜査方法,被疑者の防御,捜査の終 〔到達目標〕 〇 通信・会話の傍受の法的性質,手続について説明できる。 〇 人の容ぼう等の写真撮影,Ⅹ線検査,秘密録音,GPS捜査,おとり捜査の法的性質,許容性について説明できる。 〇 被疑者の防御ー特に,弁護人選任権,弁護人との接見交通の意義,接見指定の要件について説明できる。
  6. 第6回 公訴に関する基本原則,公訴提起の手続・効果,訴訟条件 〔到達目標〕 〇 公訴に関する基本原則(起訴独占主義・起訴便宜主義の意義,根拠,抑制)について説明できる。 〇 公訴事実の記載と訴因の特定について説明できる。 〇 起訴状一本主義の意義について説明できる。 〇 訴訟条件の意義と効果について説明できる。
  7. 第7回 訴因・罰条の変更,公判の基本原則 〔到達目標〕 〇 訴因変更の意義,手続について説明できる。 〇 訴因変更の要否について説明できる。 〇 訴因変更の可否について説明できる。 〇 訴因変更命令の意義と義務について説明できる。 〇 公判の基本原則(裁判の公開,直接主義,口頭主義,迅速な裁判)について説明できる。 〇 裁判所の構成,除斥・忌避・回避について説明できる。
  8. 第8回 公判手続の構造,公判準備 〔到達目標〕 〇 被告人の確定,当事者能力について説明できる。 〇 被告人の出頭確保の制度(勾引,勾留,保釈等)について説明できる。 〇 事前準備の意義,手続について説明できる。 〇 公判前整理手続・期日間整理手続の意義,手続の概要について説明できる。
  9. 第9回 公判における審判手続(証人尋問まで) 〔到達目標〕 〇 公判における審判手続(冒頭手続,証拠調べ)の流れについて説明できる。
  10. 第10回 公判における審判手続(鑑定から),証拠法序説,証拠の関連性 〔到達目標〕 〇 公判における審判手続(鑑定,被告人質問)の意義について説明できる。 〇 弁論の併合・分離の意義について説明できる。 〇 証拠の種類,証拠能力と証明力の意義について説明できる。 〇 証拠の関連性,類似事実による立証の意義と問題点について説明できる。
  11. 第11回 伝聞証拠の証拠能力 〔到達目標〕 〇 供述証拠の性質と伝聞法則の意義について説明できる。 〇 伝聞と非伝聞の意義,区別について説明できる。 〇 供述書面の証拠能力について,種類ごとに説明できる。 〇 伝聞証拠への同意の性質と効果について説明できる。 〇 証明力を争うための証拠の意義について説明できる。 〇 写真,録音・録画媒体の証拠能力について説明できる。
  12. 第12回 自白の証拠能力と証明力,違法収集証拠の証拠能力 〔到達目標〕 〇 自白法則の根拠について説明できる。 〇 自白の証拠能力を問題となる類型ごとに説明できる。 〇 補強法則の意義と補強を要する程度,範囲について説明できる。 〇 違法収集証拠排除法則の根拠と基準について説明できる。 〇 違法な先行手続の証拠能力への影響について説明できる。
  13. 第13回 証拠の評価・心証の形成,裁判,簡易化された審判手続 〔到達目標〕 〇 自由心証主義,挙証責任の意義について説明できる。 〇 概括的・択一的認定の可否について説明できる。 〇 裁判の拘束力,一事不再理効の意義について説明できる。 〇 裁判の手続と成立,裁判の構成について説明できる。 〇 簡易公判手続・即決裁判手続の意義と手続について説明できる。 〇 略式手続の意義と手続について説明できる。
  14. 第14回 上訴,非常救済手続 〔到達目標〕 〇 控訴審の構造,審理の概要について説明できる。 〇 上告審の審理,上告理由について説明できる。 〇 抗告・準抗告の意義,手続について説明できる。 〇 再審制度の意義,再審理由について説明できる。
  15. 第15回 期末試験 〔到達目標〕 具体的な事例における法的な問題点を適切に拾い上げることができる。 刑事訴訟法についての基本的な知識があり,その法解釈により具体的な事例における問題を解決に導く方向性を示すことができる。

教科書

下記テキスト1を夏季休暇中に最低1回は通読するほか,テキスト2を適宜参照する。

  • リーガルクエスト『刑事訴訟法(第2版)』

    著者: 宇藤崇=松田岳士=堀江慎司

    出版社: 有斐閣,2018年

  • 『刑事訴訟法判例百選(第11版)』

    著者: 大澤裕=川出敏裕編

    出版社: 有斐閣,2024年

参考書

刑事手続全体のアウトラインをつかむためには,参考書1を参照することが有益である。より進んだ学習のためには,参考書2を参照することを勧める。

  • 『入門刑事手続法〔第9版〕』

    著者: 三井誠=酒巻匡

    出版社: 有斐閣,2023年

  • 『刑事訴訟法(第2版)』

    著者: 酒巻匡

    出版社: 有斐閣,2020年

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