商法基礎*

専門職学位課程法学研究科

LWS10600

コース情報

担当教員: 土田 亮

単位数: 4

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 火3, 木3

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: なし

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

15%

定期試験

定期試験期間中

50%

中間試験

授業期間中

20%

小テスト等

15%

その他

成績評価基本原則による。 【平常点30%(授業への参加・小テスト),中間試験得点20%,期末試験得点50%】(変更の場合は改めて連絡する)

0%

詳細情報

概要

商法,とくに会社法について,全体を概観しつつ,主要な論点を考察することで,次年度以降の学習につながる基本的な知識や考え方を習得する。会社法は会社の運営,ステイク・ホルダー間の利害調整について,細かい規定を数多く設けている,人工的な法体系であるといえる。それぞれの規定(あるいは規制)の趣旨,目的を把握したうえで,具体的な規定が何をどのように規制しているのかを学習する。和元年会社法改正を前提として講義を行う。

目標

商法・会社法に係るルールや制度について,趣旨または理論的根拠を把握したうえで体系的に理解することができ,2年次以降の実践的能力養成に必要な基礎的能力を習得することを目標とする。

授業外の学習

会社法に触れたことがない者,会社法の学習に自信がないものは,参考書3の川井「手にとるようにわかる会社法入門」を通読してから授業に臨むこと。各回授業(必ずしもテキストの順番ではない)のまえには当該部分のテキストを通読してくること。 授業後は,レジュメ,講義内容とテキストの内容を照らし合わせる形で知識の定着を図ること。 予習,復習のいずれの場面でもこまめに六法を引いて条文をしっかりと読むこと。

所要時間: 予習80分 復習110分

スケジュール

  1. 会社法総論 〔内容〕会社および会社法の意義について概観するとともに,会社の種別,株式会社の特徴と株式会社の中での区分について説明する。 〔到達目標〕 ○会社とは何かを説明できる ○会社法の立法趣旨と会社法の基本原理を説明できる ○株式会社制度の特徴を説明することができる。 ○会社法上の主要な用語の定義等について説明することができる。
  2. 株式総論(1) 〔内容〕株式の法的,経済的な意義および株主の権利を概観するとともに,株式の共有,株主平等の原則といった,株主の権利に関する基本事項を扱う。 〔到達目標〕 ○株式の意義,株主の権利義務(=株主権)の内容を説明できる ○準共有株式の権利行使に関する議論を説明できる ○株主平等の原則についてその意義と限界について説明理解できる
  3. 株式の譲渡 〔内容〕株式の自由譲渡性および株式の譲渡方法と,株主名簿の意義と効力を検討する。 〔到達目標〕 ○株式譲渡自由の意義を説明できる ○株式の譲渡方法を把握するとともに,株式譲渡の効力要件・対抗要件を説明できる ○株主名簿の意義と効力を説明できる
  4. 株式の譲渡 〔内容〕法令,定款,契約による株式譲渡の制限について学ぶ 〔到達目標〕 ○さまざまな譲渡制限の必要性,許容性を説明できる ○定款による譲渡制限の付された株式の譲渡承認手続きが説明出来る ○会社が株式を強制取得できる場面およびその手続きを説明出来る
  5. 出資単位の調整 〔内容〕株式の併合,分割等の出資単位の調整に関する規制を概観する 〔到達目標〕 ○出資単位の意義と出資単位の調整の必要性を説明できる ○出資単位の調整手段,各手続の異同の理由を説明できる
  6. 株式会社の運営および統治機構/株主総会(1) 〔内容〕株式会社の「機関」の意義とその役割を概観した後,株主総会の意義及び招集手続を概観する 〔到達目標〕 ○会社の「機関」および会社の「業務」の意義を説明できる ○機関の分化について理由を含めて説明できる ○統治機構のバリエーションのうち基本的な形を説明できる ○株主総会の権限・機能および招集手続を会社の統治機構別に説明出来る
  7. 株主総会(2) 〔内容〕株主総会の議事の進行および議決権の行使・決議について学ぶ。 〔到達目標〕 ○株主総会の議事の手順と規制を説明できる ○株主総会の決議要件,代理人の資格制限等について説明出来る。
  8. 株主総会(3) 〔内容〕株主総会の決議の瑕疵を是正するための手段についても学ぶ。 〔到達目標〕 ○決議取消し,決議無効確認,決議不存在確認のそれぞれについて,形式的要件,訴えの性質,およびこれらの訴えが認められる事由について十分に説明できる
  9. 経営機構(1) 〔内容〕会社の経営の中核を担う取締役について学ぶとともに,取締役(取締役会)が行う意思決定について説明する。 〔到達目標〕 ○取締役の地位と権限を説明できる ○取締役の選任・解任手続きについて説明できる ○取締役会の意義と招集,決議の手続きについて説明できる ○瑕疵のある取締役会決議の効力を説明できる
  10. 経営機構(2) 〔内容〕取締役(あるいは執行役)による業務の執行に関して,権限の範囲,法的規制,規制違反の行為の効力について学ぶ。 〔到達目標〕 ○業務執行の意義と取締役の業務執行権限の有無,範囲を説明できる ○会社の「代表」の意義を説明できる ○法令あるいは会社の内部規定による業務執行権限の制約とそれに違反した行為の効力に関する議論を説明し自説を展開できる
  11. 経営機構(3) 〔内容〕業務の決定,執行に対する監督について,監査役設置会社を中心に学ぶ。また,監査役(監査等委員,監査委員)の意義と選任(選定),解任(解職)手続きについて説明する。 〔到達目標〕 ○取締役の監視義務の根拠および内容を説明できる ○内部統制システムおよびその構築義務について説明できる ○監査役の地位および選任・解任手続き,監査役の独立を確保する規定を説明できる ○監査等委員会設置,誌名委員会等設置会社における監督機関のあり方を説明できる
  12. 役員の義務(1) 〔内容〕役員と会社との法律関係,役員の会社に対する義務について,取締役を中心に説明する。 〔到達目標〕 ○善管注意義務,忠実義務,法令定款遵守義務の意義と内容を説明できる ○取締役の義務違反が問題となる3つの場面を区別できる ○経営判断の原則について説明できる
  13. 役員の義務(2) 〔内容〕取締役に対する具体的行為規制である,競業取引規制,利益相反取引規制,報酬規制について学ぶ。 〔到達目標〕 ○競業取引規制の内容を説明できる ○利益相反取引規制を類型化し,規制の範囲と違反の効果を説明できる ○報酬規制および,同意のない報酬の減額・不支給の効果について説明できる
  14. 役員の責任(1) 〔内容〕役員の会社に対する責任,および責任の追及方法について学ぶ 〔到達目標〕 ○役員の任務懈怠責任の成立要件を説明できる ○役員の会社に対する責任の追及方法を説明できる
  15. 役員の責任(2) 〔内容〕役員の第三者に対する責任について学ぶ。また,名目的取締役,登記簿上の取締役と言われる者の責任についても説明する。 〔到達目標〕 ○役員の第三者に対する責任の法的性質と成立要件を説明できる ○名目的取締役の第三者に対する責任について判例を踏まえて説明できる
  16. 中間試験
  17. 会社の計算(1) 〔内容〕会計帳簿の意義及び閲覧の可否,計算書類等の意義と記載内容を学ぶ 〔到達目標〕 ○会計帳簿の閲覧・謄写請求の意義と要件,拒絶理由に関する議論を説明できる ○計算書類等の記載内容を理解し,記載内容から会社の財務状況を把握できる
  18. 会社の計算(2) 〔内容〕資本の計数および決算の手続きについて学ぶ。資本減少は本項で学習する 〔到達目標〕 ○決算書類の作成手続きを説明できる ○貸借対照表の記載項目の意味を説明出来る ○資本の部の計数の変動の意義と手続きを説明出来る
  19. 会社の計算(3) 〔内容〕剰余金の配当手続きおよび違法配当について学ぶ ○剰余金,分配可能額の意義および算出方法を説明出来る ○違法配当の効果について,財源規制違反の自己株式取得の場面を含んだ議論ができる
  20. 資金調達(1) 〔内容〕募集株式を発行する意義,手続きおよび発行による様々な会社の変動について学ぶ。 〔到達目標〕 ○募集株式の発行の意義を説明できる ○募集株式の発行手続を説明できる
  21. 資金調達(2) 〔内容〕いわゆる有利発行,支配権維持目的発行の意義と手続規制について学ぶ 〔到達目標〕 ○有利発行における「特に有利」な金額について説明できる ○有利発行の手続きを説明せきる ○支配権維持目的発行の性質および規制について説明できる ○「主要目的ルール」「権限分配法理」「ブルドックソース基準」を説明できる
  22. 資金調達(3) 〔内容〕瑕疵ある株式の発行の是正について,事前,事後にわけて学ぶ。 〔到達目標〕 ○新株発行等無効の訴え,募集株式,募集新株予約権発行差止請求について説明できる ○株主総会決議取消しの訴えと募集株式発行差止め,新株発行等無効の訴えの関係を説明出来る。
  23. 株式会社の設立(1) 〔内容〕株式会社の設立の特徴とともに,具体的設立手続を学ぶ 〔到達目標〕 ○会社という社団法人の「設立」の意義と要素を説明できる ○株式会社の発起設立,募集設立の手続きを横断的に説明できる ○発起人の権限に関する議論ができ,これと変態設立事項との関係を説明できる
  24. 株式会社の設立(2) 〔内容〕株式会社の設立の瑕疵について学ぶとともに,設立関与者の責任について学習する。 〔到達目標〕 ○設立手続の瑕疵が設立の効力に及ぼす影響について説明できる ○預合い・見せ金について説明できる ○発起人をはじめとする設立関与者の責任について説明できる
  25. 会社の基礎的変更(1) 〔内容〕事業譲渡について学ぶ。また,組織再編手続きの概略として,合併,会社分割,株式交換・株式移転,株式交付の各制度について概観する 〔到達目標〕 ○上記の各制度について,制度の意義および効果を説明できる ○事業譲渡の意義に関する見解の対立について,判例と学説の対立を説明できる
  26. 会社の基礎的変更(2) 〔内容〕組織再編の具体的手続きについて,各組織再編について学ぶ。 〔到達目標〕 ○組織再編によって会社のどのような要素がどう変動するのかを説明出来る ○組織再編の具体的手順を,手続きの意味を含めて説明できる
  27. 会社の基礎的変更(3) 〔内容〕合併をはじめとする組織再編の瑕疵を類型的に概観するとともに,差止めおよび組織再編無効の訴えについて学ぶ。また詐害的な組織再編についても学ぶ 〔到達目標〕 ○組織再編の瑕疵のうち典型的なものを整理できる ○瑕疵ある組織再編を事前に差し止める手段と要件を説明出来る ○瑕疵ある組織再編の効力を事後的に争う手段と形式的要件,および組織再編無効事由を説明できる ○詐害的会社分割の意義とその是正方法を説明出来る
  28. 会社法総論,親子会社 〔内容〕法人格の意味,会社支配の概念と定義を理解しつつ,単体の会社と企業グループの法的な異同を学ぶ 〔到達目標〕 ○法人格否認の法理,親子会社法制を理解する ○有価証券の作成,移転,権利行使の理論を説明できる ○株券,株式振替制度と有価証券法理の関係を説明できる
  29. 期末試験 〔科目全体の到達目標〕 商法・会社法に係るルールや制度について,趣旨または理論的根拠を把握したうえで体系的に理解することができ,2年次以降の実践的能力養成に必要な基礎的能力を習得することを目標とする。
  30. ※上記は標準的な授業計画であるが,順番を入れ替えるなどの変更がありうる。その際は適時案内する。なお,上記授業計画中,小テストを実施する予定である。

教科書

テキストについては,必ずしも指定のものである必要はないが,令和元年改正を織り込んだものを用いること。

  • 会社法(LEGAL QUEST)〔第5版〕

    著者: 伊藤靖史=大杉謙一=田中亘=松井秀征

    出版社: 有斐閣,2021年

  • 別冊ジュリスト・会社法判例百選〔第4版〕

    出版社: 有斐閣,2021年

参考書

  • 株式会社法〔第8版〕

    著者: 江頭憲治郎

    出版社: 有斐閣,2021年

  • 会社法〔第4版〕

    著者: 田中亘

    出版社: 東京大学出版会 2023年

  • 手にとるようにわかる会社法入門

    著者: 川井信之

    出版社: かんき出版,2021年

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