民法基礎 IV

専門職学位課程法学研究科

LWS10501

コース情報

担当教員: 永下 泰之

単位数: 1

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 水1

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: あり

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

10%

定期試験

定期試験期間中

70%

小テスト等

10%

その他

復習として実施するTKCの基礎力確認テスト。 小テストは月1回程度実施する。 法科大学院の成績評価基本原則による。

10%

詳細情報

概要

本講義は,民法第3編債権のうち第5章「不法行為」に関する法制度,各種の法的概念の概説を行い,これらについての知識,及び,法的思考力を涵養することを目的とする。不法行為法は,抽象的でかつわずかな条文しか置いていないが,それゆえに多種多様な権利・利益の侵害をカバーしうる法制度となっている。さらに,現在において不法 行為法は,判例法といってよいほど判例により様々な準則が確立している(また確立しつつある)。本講義では,不法行為法の基本的ルールを概観するとともに,各類型に応じて裁判例をもとに判例準則を説明する。

目標

民法709条以下の条文の解釈ができるようになること,および,それらに関する重要な判例・学説の知識を理解し,そうした専門的知識を実際の問題に適用するスキルの習得を目標とする。

授業外の学習

講義前には,レジュメ(TKCにアップロード)に目を通し,条文を確認するとともに,指定教科書の該当箇所で基本事項を確認すること。講義後は,指定教科書の該当箇所を再読するほか,参考文献を読むなどして,知識の定着を図ること。 予習・復習時間とも毎週授業時間と同等の時間が必要となる。 なお,復習として,TKCの基礎力確認テストを実施する。これは成績評価の対象となることから,受け忘れのないよう注意されたい。

所要時間: 予習・復習には,190分以上の学習時間を要する

スケジュール

  1. 不法行為法概説,権利・法益侵害 〔授業内容〕 不法行為法の意義・機能・目的を概観したうえで,成立要件の一つである権利・法益侵害について解説を行う。 〔到達目標〕 ◯不法行為法の意義・機能・目的について説明することができる。 ◯権利・法益侵害要件の持つ意味について,権利侵害と違法性との関係に関する判例・学説の展開を踏まえつつ,説明することができる。
  2. 故意・過失 〔授業内容〕 民法709条の定める帰責事由である「故意・過失」につき,判例・学説の展開をふまえて基本的な考え方を解説するとともに,過失の認定に関する論点を解説する。 〔到達目標〕 ◯故意の定義を正確に説明することができる。 ◯過失について,判例・学説による過失概念の変容を理解したうえで,過失とは何かについて基本的な考え方を説明することができる。 ◯過失の認定における考慮要素を説明することができる。
  3. 損害・因果関係,賠償の方法・範囲 〔授業内容〕 損害の意味および種類について解説を行う。また,因果関係について,基本的な考え方を解説する。 損害賠償の方法として金銭賠償の原則とその例外について解説を行う。また,損害賠償の効果として,損害の発生時期および損害賠償の範囲に関する理論的解説を行う。 〔到達目標〕 ◯「権利・法益侵害」要件と「損害」要件との関係を理解する。 ◯損害の種類について理解したうえで,損害の算定方法とその問題点を説明することができる。 ◯相当因果関係と事実的因果関係との違いを説明することができる。 ◯金銭賠償が原則とされている理由を理解するとともに,いかなる場合に例外が認められるかを説明することができる。 ◯賠償範囲の確定につき,その理論動向を理解したうえで,判例の立場を説明することができる。
  4. 損害賠償請求権の主体,損害賠償請求に対する抗弁1(成立阻却事由) 〔授業内容〕 損害賠償請求権の相続などに伴い問題となる損害賠償の請求権者について解説を行う。また,損害賠償請求対する抗弁として,違法性阻却事由および責任阻却事由について解説を行う。 〔到達目標〕 ◯不法行為の成立が認められる場合に,損害賠償請求をすることができる者が誰かについて説明することができる。 ◯損害賠償請求権の相続構成についてその理論的説明をするとともに,その問題点についても説明することができる。 ◯民法上の正当防衛と緊急避難との相違を説明することができる。 ◯責任無能力者制度について基本的な考え方を説明することができるとともに,同制度がかかえる今日的問題についても説明することができる。
  5. 損害賠償請求に対する抗弁2 〔授業内容〕 損害賠償請求に対する抗弁として,損益相殺,過失相殺(素因減額を含む),消滅時効について解説を行う。 〔到達目標〕 ◯損益相殺について基本的な考え方を理解し,損益相殺の範囲について判例の立場を説明することができる。 ◯過失相殺における「過失」の意義について各種の考え方を説明することができる。 ◯「被害者側の過失」についての考え方を説明することができる。 ◯素因減額について各種の考え方を理解したうえで,判例の立場を説明することができる。 ◯不法行為法における消滅時効について基本的な考え方を説明することができる。
  6. 他人の不法行為に対する責任,物による不法行為に対する責任 〔授業内容〕 監督者責任および使用者責任について,近時の判例の動向を踏まえた解説を行う。 物による不法行為として,工作物責任,製造物責任,動物占有者の責任について概説を行う。 〔到達目標〕 ◯監督者・使用者がなぜ責任を負担するのかについて説明することができる。 ◯監督者責任および使用者責任がかかえる今日的課題について理解する。 ◯物による不法行為に対する責任について,基本的な考え方を説明することができる。
  7. 共同不法行為 〔授業内容〕 共同不法行為の意義および類型ごとの要件について解説を行う。 〔到達目標〕 ◯共同不法行為の意義,要件および効果について説明することができる。 ◯共同不法行為の成立要件に関する各種の考え方を理解したうえで,判例の立場を説明することができる。
  8. 期末試験 〔到達目標〕 ◯不法行為に関する判例・学説について基本的な理解をするとともに,近年の議論状況についても把握する。 ◯不法行為に関する事案につき,判例・学説をふまえた分析・検討を行うことができる。

教科書

必ず最新版の六法を持参すること。

  • 基本講義債権各論Ⅱ 不法行為法[第4版]

    著者: 潮見佳男

    出版社: 新世社・2021年

  • 民法判例百選Ⅱ 債権[第9版]

    著者: 窪田充見・森田宏樹

    出版社: 有斐閣・2023年

参考書

指定教科書で不足する部分については,下記参考書で補完することが望ましい。

  • 不法行為法[第2版]

    著者: 窪田充見

    出版社: 有斐閣・2018年

  • 不法行為法〔第6版〕

    著者: 吉村良一

    出版社: 有斐閣・2022年

© 2025 上智非公式シラバス. All rights reserved.