民法基礎 III
専門職学位課程法学研究科
LWS10500
コース情報
担当教員: 羽生 香織
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 水2
形式: 対面授業
レベル: 700
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 不可
評価方法
授業参加
定期試験
定期試験期間中
中間試験
授業期間中
小テスト等
その他
法科大学院成績評価基本原則による。平常点30%,定期試験70%の割合でこれを行う。平常点30%の内訳は,①授業参加(欠席の場合には,減点の評価事由として扱う)5%,②小テスト(択一式4回実施)15%,③TKCシステム上の「理解度確認テスト」10%とする。定期試験70%の内訳は,❶中間試験(第8回講義で行う)20%,❷定期試験期間中の定期試験50%とする。
詳細情報
概要
本授業は,法学未修者を対象とする。民法第4編「親族」・第5編「相続」に関する条文,制度,判例の展開,学説の議論状況について理解し,知識と思考方法を習得する。その上で,家族に関する諸問題を法的観点から説明・検討するための法的思考力を身につける。
目標
親族・相続に関する基本的知識を正確に理解する。具体的な事例について家族に関する諸問題を分析し,論点を指摘し,判例・学説の解釈に基づいて解決する能力を養う。
授業外の学習
各自レジュメをTKCの授業ライブラリーからプリントし,設問[Case]について検討すること。関連する判例や資料を参照することが望ましい。
所要時間: 授業1回あたり190分以上
スケジュール
- 婚姻 〔授業内容〕 前半は,婚姻の成立について説明する。後半は,婚姻の効果について説明する。 〔到達目標〕 〇婚姻の成立要件のうち,実質的要件について,婚姻意思の内容に関する判例・学説を説明することができる。 〇婚姻の成立要件のうち,形式的要件について理解する。 〇夫婦財産の帰属について理解する。 〇婚姻費用分担について,具体例を挙げて説明することができる。 〇日常家事債務の連帯責任について,判例を示しながら説明することができる。
- 離婚,婚姻外の男女関係 〔授業内容〕 前半は,離婚の方式について説明する。後半は,離婚の効果について説明する。 〔到達目標〕 〇離婚の方式について説明することができる。 〇有責配偶者からの離婚請求について,判例・学説を示しながら説明することができる。 〇離婚の効果について,その概要を説明することができる。 〇財産分与の法的性質について,学説・判例を示しながら説明することができる。 〇離婚後の子の監護について理解する。 〇婚姻外の男女関係について,学説・判例を示しながら説明することができる。
- 実親子関係 〔授業内容〕 前半は,嫡出推定・否認制度について説明する。特に,民法に規定されていない親子関係不存在確認訴訟による親子関係の否認に関する最高裁判例について言及する。後半は,認知制度について説明する。 〔到達目標〕 〇嫡出推定・否認制度の意義について理解する。 〇「推定されない嫡出子」について理解する。 〇「推定の及ばない子」について,判例・学説を示しながら説明することができる。 〇認知制度の意義と手続,認知の効力について理解する。 〇父子関係を否定する方法として,嫡出否認の訴え,認知無効の訴え,親子関係不存在確認の訴えの相違を示しながら説明することができる。 小テスト①実施
- 養親子関係 〔授業内容〕 前半は,普通養子について説明する。後半は,特別養子について説明する。特に,普通養子と特別養子の対比について言及する。 〔到達目標〕 〇普通養子縁組の成立要件とその効果について,未成年養子の場合の特則を示しながら説明することができる。 〇特別養子縁組の成立要件とその効果について,普通養子縁組との対比を示しながら説明することができる。
- 親権,後見・扶養 〔授業内容〕 前半は,親権に服する者,親権者および親権の内容(身上監護,財産管理)について説明する。特に,財産管理における利益相反行為について言及する。後半は,親権制限と児童虐待について説明する。 〔到達目標〕 〇親権に服する者は誰か,親権者は誰かについて説明することができる。 〇親権の内容について,具体例を示しながら説明することができる。 〇利益相反行為の意味と態様について,具体例を示しながら説明することができる。 〇親権の制限について,具体的方法を示しながら説明することができる。 〇後見制度について説明することができる。 〇扶養関係について説明することができる。
- 相続法概論,相続人(1) 〔授業内容〕 前半は,相続制度を概観し,相続法の基本的仕組みや原則について説明する。後半は,相続の開始,法定相続人について説明した上で,相続人の確定に関して説明する。 〔到達目標〕 〇相続の流れについて理解する。 〇相続の開始について理解する。 〇相続人の範囲・順位について具体例を示しながら説明することができる。 〇胎児の出生擬制について,学説を示しながら説明することができる。 〇代襲相続について,具体例を示しながら説明することができる。 〇欠格・廃除について,制度の概要,手続,効果を説明することができる。 〇承認・放棄について,制度の概要,手続,効果を説明することができる。 〇熟慮機関の起算点について,判例・学説を示しながら説明することができる。 〇相続人不存在の場合の相続財産の帰趨を理解する。 小テスト②実施
- 相続財産 〔授業内容〕 前半は,相続の効果および相続の対象となる範囲について説明する。 〔到達目標〕 〇包括承継の原則について理解する。 〇相続財産の範囲について,その概要を理解する。 〇債権・債務の相続性について理解する。 〇無権代理人と相続について,判例・学説を示しながら説明することができる。
- 相続分 〔授業内容〕 前半は,相続分(法定相続分・指定相続分)について説明する。後半は,具体的相続人について説明する。 〔到達目標〕 〇相続人の相続分について,具体例を示しながら説明することができる。 〇特別受益や寄与分がある場合の具体的相続分について,具体例を示しながら説明することができる。 中間試験 これまでの学修内容を踏まえ,基本的知識の理解が正確であることを確認し,紛争事例について論理的かつ望ましい結論を導くことができるかを問う。
- 遺産分割(1) 〔授業内容〕 遺産共有について説明する。 〔到達目標〕 〇共同相続における遺産分割前の相続財産の帰属について説明することができる。 〇債権・債務を共同相続した場合について理解する。 〇金銭債権の共同相続について,判例・学説を示しながら説明することができる。
- 遺産分割(2) 〔授業内容〕 前半は,遺産分割の方法・効力について説明する。後半は,特定財産承継遺言(「相続させる」旨の遺言)について説明する。 〔到達目標〕 〇遺産分割の方法・効力について理解する。 〇特定財産承継遺言の法的性質と効果について,判例・学説を示しながら説明することができる。 〇特定財産承継遺言に関する諸問題について,判例・学説を示しながら説明することができる。
- 遺言 〔授業の内容〕 遺言制度や遺言執行について説明する。 〔到達目標〕 〇遺言制度の概要について理解する。 〇遺言の成立,方式,効果について,条文を示しながら説明することができる。 〇遺言の執行についてその概要を説明することができる。 小テスト③実施
- 遺贈 〔授業内容〕 遺贈について説明する。 〔到達目標〕 〇遺贈の意義,遺贈の種類について理解する。
- 遺留分 〔授業内容〕 遺留分制度の概要を確認した後,具体的問題について説明する。 〔到達目標〕 〇遺留分制度の概要について理解する。 〇遺留分侵害額請求権などの制度の基本的な仕組みについて説明することができる。 小テスト④実施
- 配偶者に関する特則,相続人による権利義務の承継と第三者との関係 〔授業内容〕 前半は,配偶者居住権,配偶者短期居住権,特別受益としない旨の意思表示の推定について説明する。後半は,相続と登記をめぐる問題,金銭債権の共同相続をめぐる問題について説明する。 〔到達目標〕 〇相続法の改正後の配偶者のための特則について理解する。 〇配偶者居住権,配偶者短期居住権の成立要件と効果について説明することができる。 〇相続と登記をめぐる問題について,全体像を把握し,条文や判例における位置づけを理解する。 〇金銭債権の共同相続をめぐる問題について,全体像を把握し,条文や判例における位置づけを理解する。
- 定期試験 学期中の学修内容を踏まえ,基本的知識の理解が正確であることを確認し,紛争事例について論理的かつ望ましい結論を導くことができるかを問う。
教科書
テキストだけでなく,参考書の該当部分についても読むこと。 テキストは『リーガルクエスト民法Ⅳ』では,令和4年民法改正を反映した第7版を2024年3月に刊行予定です。第7版をご準備ください。
リーガルクエスト 民法Ⅵ 親族・相続 第7版
著者: 前田陽一ほか編
出版社: 有斐閣・2024
参考書
民法判例百選Ⅲ 親族・相続[第3版]
著者: 水野紀子ほか編
出版社: 有斐閣・2023
詳解相続法 第2版
著者: 潮見佳男
出版社: 弘文堂,2022
判例プラクティス民法Ⅲ 親族・相続[第2版]
著者: 松本恒雄ほか編
出版社: 信山社・2020