民法基礎 I*

専門職学位課程法学研究科

LWS10300

コース情報

担当教員: 溝渕 将章

単位数: 4

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 火4, 木3

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: あり

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

10%

定期試験

定期試験期間中

50%

中間試験

授業期間中

20%

小テスト等

10%

その他

・「授業参加」(10%)は,講義中に教員からする質問等に対する回答の有無やその質,その他講義中の発言内容等を総合評価して判断する。 ・中間試験(20%)および期末試験(50%)を実施する。 ・小テストを,授業期間中,月に1回程度行う。 ・「その他」は,TKC内で実施する「授業理解度テスト」の学習状況による(講義の復習と知識定着の確認を目的とする) ・成績の評価基準は,法科大学院の「成績評価基準」に準拠する

10%

詳細情報

概要

本講義は,民法第1編「総則」,第2編「物権」(担保物権を含む)に登場する法制度や条文について,その意味・規律目的・要件・効果を,判例法理や学説の議論状況をふまえつつ,法学未修者に解説するものである。その際,①当該の法制度や条文が実社会においてどのように機能するかを明確にするため,具体例を豊富に用いて解説を行うこと,②条文(立法者)や判例・学説がそのように考える根拠(理由づけ)の説明に重点を置くこと,③受講生の積極的な授業参加を促し,かつ,受講生の理解の度合いを測るため,講義中,受講生に質問を投げかけまたは発言を求めること,にとくに配慮して講義を進める。

目標

① 民法第1編「総則」,第2編「物権」(担保物権を含む)の法制度や条文の意味・規律目的・要件・効果を説明できるようになること。および,それら法制度や条文が適用される典型的な例を自ら示すことができるようになること。 ② 上記領域における法制度や条文に関連する判例および学説の議論を正確に理解し,かつ,自ら説明できるようになること。 ③ ①および②で習得した知識を用いて,具体的な紛争事例に対する解答を導きうるだけの,法的思考力を身につけること。法的三段論法に基づき,具体的な紛争解決を図る能力を獲得すること。

授業外の学習

・予習 講義に先立ち,その日扱う該当箇所に関連する教科書の説明を熟読し,各自で整理しておくこと。その際,事前に配布するレジュメにも目を通しておくこと。 ・復習 講義で扱った内容(とくに,条文・法制度の趣旨・規律目的,要件・効果,およびこれに関連する判例法理や学説の議論)を整理しなおし,自ら正確に説明できるようになるまで復習しておくこと。 ・その他,準備学習につき必要なことは,初回の講義で案内する。

所要時間: 授業1回当たり190分以上

スケジュール

  1. ※ 以下はあくまで予定であり,講義の進捗状況や,学生の理解の定着状況に応じて,変更する可能性がある。 法律行為1(法律行為(意思表示)の概要・成立要件・解釈) ※ 事前学習動画の内容を前提にして講義をはじめるので,講義開始前に必ず視聴しておくこと。 【予習範囲】佐久間37―78頁 【講義内容】 民法上の主な権利変動原因である法律行為について,その概念,存在意義,他の権利変動原因との相違点を説明する。そのうえで,法律行為が成立するための要件,法律行為の要素である意思表示の成立要件,意思表示の効力発生時期(とくに隔地者間で意思表示がされる場合)の問題を説明する。さらに,法律行為(とくに契約)の解釈について説明する。 【到達目標】 ① 法律行為の概念・存在意義等,および分類について正確に理解し,かつ,自ら説明できるようになる。 ② 法律行為が成立するための要件について,正確に理解し,かつ,自ら説明できるようになる。 ③ 法律行為の要素である意思表示について,その基本構造,成立要件等を正確に理解し,かつ,自ら説明できるようになる。 ④ 意思表示の効力が発生する時点に関する到達主義について,具体例を挙げて説明することができる。 ⑤ 狭義の法律行為(契約)解釈,契約の補充,契約の修正の問題に関して,条文の意味,制度趣旨,判例・学説の理論状況を正確に理解し,かつ,自ら説明できるようになる。
  2. 法律行為2(心裡留保・虚偽表示) 【予習範囲】佐久間79―80,116頁―135頁 【講義内容】 意思表示(法律行為)が成立した場合にその効果発生を阻却する各事由(無効・取消原因)について,条文の意味,制度趣旨,判例・学説の理論状況を説明する。まず,そうした事由としてどのようなものがあるかを概観したうえで,とくに,心裡留保および虚偽表示の問題を扱う。(なお,94条2項類推の問題は,物権法にて扱う) 【到達目標】 ① 意思表示(法律行為)の効果発生阻却事由(無効・取消原因)の全体像を鳥瞰できるようになる。 ② 心裡留保の概念を,典型例を想定しつつ理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 心裡留保による意思表示の効果の原則・例外則について,条文の意味,制度趣旨を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ (通謀)虚偽表示の概念を,典型例を想定しつつ理解し,自ら説明できるようになる。 ⑤ 虚偽表示が無効をきたす要件を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑥ 94条2項の効果を,判例・学説の理論状況をふまえつつ,正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑦ 94条2項の適用要件を,判例・学説の理論状況をふまえつつ,正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  3. 法律行為3(錯誤・詐欺・強迫) 【予習範囲】佐久間148―180頁,197―215頁 【講義内容】 意思表示(法律行為)の効果発生を阻却する各事由(無効・取消原因)を扱う。錯誤・詐欺・強迫の各取消原因につき,条文の意味,制度趣旨,判例・学説の理論状況を説明する。 【到達目標】 ① 錯誤(意思不存在の錯誤・基礎事情錯誤)の概念および類型を,典型例を想定しつつ理解し,自ら説明できるようになる。 ② 意思表示が錯誤を理由に取消可能となるための要件を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 詐欺・強迫の概念およびこれによる取消しの要件を判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑤ 詐欺を理由とする意思表示取消しの第三者に対する効力を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  4. 法律行為4(制限行為能力・意思無能力・公序良俗違反・取締法規違反) 【予習範囲】佐久間81―115頁,181―196頁 【講義内容】 意思表示(法律行為)の効果発生を阻却する各事由(無効・取消原因)を扱う。意思無能力,制限行為能力,取締法規違反,公序良俗違反の各論点につき,条文の意味,制度趣旨,判例・学説の理論状況を説明する。 【到達目標】 ① 意思能力および行為能力の概念を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 意思能力の判断基準および意思無能力者による法律行為の効果を,正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 行為能力制限の各制度(未成年者,成年後見,保佐,補助)の概要,制度趣旨,開始手続,行為能力制限違反があった場合の法律効果,および制限行為能力者の相手方保護の制度などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,かつ,自ら説明できるようになる。 ④ いわゆる取締法規(規定)に違反する法律行為の効果を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。かつ,裁判例に現れた取締規定違反行為の典型例を示すことができるようになる。 ⑤ 公序良俗に違反する法律行為の効果を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。かつ,裁判例に現れた公序良俗違反行為の典型例を示すことができるようになる。
  5. 法律行為5(無効・取消し),代理1(有権代理) 【予習範囲】佐久間217―229頁,231―264頁 【講義内容】 ① 法律行為(意思表示)の無効・取消しの詳細な意味・効果について,条文の意味,制度趣旨,判例・学説の理論状況を説明する。 ② 代理の基本的な仕組み,効果,種類,代理権の範囲,代理行為の問題について,条文の意味,制度趣旨,判例・学説の理論状況を説明する。 【到達目標】 ① 法律行為(意思表示)が無効になる場合の基本的な効果を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 法律行為(意思表示)が取り消された場合の基本的な効果,取消権の行使方法,取消権者の範囲などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 取消可能な行為の追認について,追認の意味,追認権者,追認の方法,および法定追認の概要などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 代理の基本的な仕組み(代理効果の意味),代理の種類,および社会的機能などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑤ 代理効果が生じるための要件を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑥ 代理人による利益相反行為,代理権の濫用について,その要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑦ 復代理の意味,復代理が許されるための要件,および復代理人により法律行為がされた場合の効果などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑧ 顕名の意味,顕名主義の趣旨,および顕名がされなかった場合の法律関係を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑨ 代理行為に瑕疵がある場合(代理人が制限行為能力者である場面を含む)の法律関係を正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  6. 代理2(無権代理1) 【予習範囲】佐久間265―297頁 【講義内容】 ① 無権代理とは何か,無権代理が行われた場合の法律関係の概要を説明する ② 表見代理制度の概要,および表見代理の成立要件・効果について,条文の意味,制度趣旨,判例・学説の理論状況を説明する。 【到達目標】 ① 無権代理の意味,無権代理の原則的効果,無権代理がされた場合に本人および相手方が取りうる手段の概要を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 表見代理の制度趣旨や取引社会における機能・意義を正確に理解する。 ③ 109条の表見代理の規律目的,適用範囲,要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 110条の表見代理(その重畳適用を含む)の規律目的,適用範囲,要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑤ 112条の表見代理の規律目的,適用範囲,要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,かつ,自ら説明できるようになる。
  7. 代理3(無権代理2)/条件・期限 【予習範囲】佐久間297―315頁,317―329頁 【講義内容】 ① 無権代理人の責任(117条)の制度趣旨・要件・効果などについて,判例・学説上の理論状況をふまえつつ説明する。 ② 期限の種類,法律行為に期限が付された場合の法律関係などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 【到達目標】 ① 無権代理人の責任(117条)の制度趣旨・要件・効果・表見代理制度との関係などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 期限の利益にはどのような意味があるかについて,説明することができる。
  8. 時効1(時効制度の概要と存在理由,消滅時効の完成要件,時効障害事由) (なお,取得時効は,物権法にて扱う) 【予習範囲】佐久間391―397頁,408―417頁,417―430頁 【講義内容】 ① 時効とは何か,時効により権利変動が生じる基本的構造,および時効制度の存在理由を説明する。 ② 消滅時効の意味,完成要件,効果などについて,判例・学説の理論状況をふまえつつ説明する。 ③ 時効の更新・完成猶予事由の意味および効果を説明する。 【到達目標】 ① 時効による権利変動の基本的構造,および時効制度の存在理由を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 消滅時効の完成要件を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 時効の更新・完成猶予の意味を理解し,かつ,各更新・完成猶予事由がどのようなもので,いかなる効果を生じさせるのかを正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  9. 時効2(援用・放棄),権利能力1(自然人) 【予習範囲】佐久間431―442頁,17―33頁 【講義内容】 ① 時効の援用の意味・効果,および援用権者の範囲を,判例・学説の理論状況をふまえつつ説明する。 ② 時効利益の放棄(時効完成後の自認行為の問題を含む)の意味・効果を,判例・学説の理論状況をふまえつつ説明する。 ③ 権利能力とその主体である自然人の問題を説明する。 【到達目標】 ① 時効援用の意味・法的性質,および効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 時効の援用権者の範囲を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 時効の利益の放棄の意味・要件・効果,および時効完成後の自認行為の効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 権利能力の意味,自然人におけるその始期・終期などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑤ 出生擬制の意味,規律目的,法律構成などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑥ 失踪宣告の意味,種類,要件・効果を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑦ 失踪宣告が取り消された場合の法律関係を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  10. 権利能力2(法人) 【予習範囲】佐久間333―388頁 【講義内容】 権利能力の担い手である法人について,その意味,分類・種類,基本的構造,設立上の問題など,制度の基本的枠組を説明する。そのうえで,法人の権利能力や不法行為能力の問題,対外的な法律関係形成の方法を,判例・学説の理論状況をふまえつつ説明する。さらに,権利能力なき社団の問題に関する,判例および学説を解説する。 【到達目標】 ① 法人とは何か,法人制度の基本的枠組み,および法人制度の存在意義などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 各法人の分類方法・種類,法人の基本構造(機関の問題を含む),法人の設立に関する基本原則などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 法人の権利能力(不法行為能力を含む)の範囲,対外的な法律関係の形成方法に関する問題を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ いわゆる権利能力なき社団について,その存在意義・要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  11. 中間試験(を予定している)/物権法の概要 【予習範囲】安永3―14頁 【講義内容】 ① 本講義の前半部分において,前回までで扱った範囲について,中間試験を行うことを予定している(日程については授業の進捗状況に応じて変更の可能性あり。詳細は,講義内で告知する) ② 後半部分において,物権法の概要・物権の基本的性質を解説する。 【到達目標】 ①物権法全体を鳥瞰し,物権法上の基本原則(物権法定主義の問題を含む)を正確に理解して自ら説明できるようになる。 ②物権の分類方法,および,その大まかな内容を理解して自ら説明できるようになる。
  12. 物権の客体・物権的請求権 【予習範囲】安永9-13,14-26頁 【講義内容】 ① 物権の客体である「物」について,その意味と分類方法などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ解説する。 ② 物権的請求権について,その要件・効果等を,判例・学説の状況をふまえつつ解説する。 【到達目標】 ① 物権の客体である「物」について,その意味と分類方法などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 物権的請求権の意義・根拠を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 物権的請求権の各類型,類型ごとの請求の要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,かつ,自ら説明できるようになる。 ④ 物権的請求の相手方や請求内容にかかる問題などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  13. 物権変動総論 【予習範囲】安永27-39頁 【講義内容】 ① 物権変動に関する基本原則・法制度,物権変動の原因を,判例・学説の理論状況をふまえつつ説明する。そのうえで,法律行為による物権変動について,その基本的構造,意味,物権変動の時期の問題を,判例・学説の理論状況をふまえつつ説明する。 【到達目標】 ①物権変動の原因および態様を鳥瞰できるようになる。 ②物権変動に関する基本原則(公示の原則・公信の原則,意思主義・対抗要件主義)の意味,規律目的などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③法律行為(意思表示)による物権変動について,176条の趣旨および物権変動の時期に関する諸問題を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,かつ,自ら説明できるようになる。
  14. 不動産物権変動1 【予習範囲】安永40―73頁 【講義内容】 不動産物権変動に関する基本的原則・法制度の概要を説明し,177条が規定する対抗要件の問題を詳説する。 【到達目標】 ① 不動産登記制度の概要を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 不動産物権変動における対抗要件主義の意味,規律目的などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 177条にいう対抗の意義を判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 登記を必要とする物権変動(原因)の範囲,および,登記がないと物権変動を対抗できない「第三者」の範囲を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  15. 不動産物権変動2 【予習範囲】安永73―82頁,48―63頁 【講義内容】 ① 177条の「第三者」の範囲について,とくに背信的悪意者排除論に関する判例法理や学説の議論を解説する。さらに,177条に関連する問題として,物権的請求の相手方と177条の関係に関しても説明する。 ② 177条の適用範囲に関する各論的問題である,取消しと登記の問題,解除と登記の問題,について,判例および学説上の議論を解説する。(なお,時効と登記の問題は,後日,取得時効を扱う際にまとめて解説する) 【到達目標】 ① 背信的悪意者排除論に関する判例法理やこれに対する学説上の評価を正確に理解し,自ら説明できるようになる。さらに,物権的請求と177条の問題について,判例法理を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 取消しと登記の問題,解除と登記の問題についての判例法理,およびこれに対する学説上の評価を正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  16. 不動産物権変動3 【予習範囲】安永82―104頁 【講義内容】 ① 不動産登記の効力について,登記の実体的有効要件,手続的有効要件にかかる諸問題などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ解説する。 ② 無権利者と不動産取引に入った者の信頼保護の問題に関して,94条2項類推に関する判例法理および学説の議論を解説する。 【到達目標】 ① 登記の実体的有効要件,手続的有効要件を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 94条2項の類推法理に関して,その意味,正当化根拠,類推が認められる諸類型とその要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  17. 動産物権変動(即時取得を含む) 【予習範囲】安永105―132頁 【講義内容】 ① 動産物権変動に関する対抗問題について,物権変動の公示方法の概要,引渡しによる対抗の具体的方法を解説する。 ② 即時取得制度の意味,規律目的,要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ解説する。 【到達目標】 ① 動産物権変動の対抗問題(178条)について,動産物権変動の公示方法の概要,民法が定める引渡の方法,第三者の範囲などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 即時取得制度の意味,要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 即時取得制度における盗品・遺失物の例外則について,その趣旨,要件・効果を,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  18. 所有権,相隣関係,所有権固有の取得原因 【予習範囲】安永136―180頁 【講義内容】 ① 物権の典型である所有権について,その意義・内容,限界(範囲)などを説明する。そのうえで,相隣関係に関する民法上の規律およびこれに関連する判例を解説する。 ② 民法が定める所有権固有の取得原因を解説する。 【到達目標】 ① 所有権の内容やその範囲,および民法上・行政法規上の制限などを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 相隣関係について民法が定めている規律の概要を正確に理解し,自ら説明できるようになる。袋地の所有者は,どのような場合にどのような要件の下で隣地通行権を有するかを,条 文を参照しながら説明することができる。 ③ 民法が定める所有権固有の取得原因(無主物先占,遺失物拾得,埋蔵物発見,添付など)について,それぞれの制度趣旨,要件・効果などを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  19. 共有 【予習範囲】安永181―225頁 【講義内容】 共同所有の形態の概要を説明したうえで,その典型例である「共有」に関する規律を説明する。はじめに,共有の意義・機能,および共有持分に関する問題を説明する。また,共有物の使用・収益・処分に関連する民法上のルール,およびこれに関連する判例法理や学説の議論を紹介する。さらに,共有物分割に関する民法上のルール,およびこれに関連する判例法理や学説の議論を解説する。(264条の2以下の新設規定の解説を含む) 【到達目標】 ① 共同所有の諸形態(共有・合有・総有)の意味,共通点,相違点を正確に理解し,自ら説明できるようになる。さらに,「共有」の意味・社会的機能について正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 共有持分の意義持分割合,持分の処分の効果,持分権に基づく共有者相互または第三者に対する引渡請求等,さらに,共有物の使用・収益・処分などに関する民法上のルールを,判例・学説の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 共有物分割につき,その意義,制限,および具体的な分割方法などに関する民法上のルールを正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 所有者不明土地管理命令等に関する規律(264条の2から14にかかる規律)の内容を正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  20. 占有1 【予習範囲】安永243―271頁 【講義内容】 占有制度の概要,意義,および占有に付与される効力の概要を説明する。そのうえで占有の成立要件,占有の態様・性質,占有の承継,消滅事由などについて解説する。さらに,占有に付与される民法上の効果のうち,即時取得・取得時効を除くもの(推定機能,果実収取権,損害賠償の範囲,費用償還請求権,占有訴権など)について,その意義・要件,具体的効果を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ説明する。 【到達目標】 ① 占有に関する民法上の諸制度を鳥瞰し,その制度趣旨を理解する。さらに,占有の成立要件を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 占有の態様・性質の区別,意味,それぞれの要件・効果上の相違点を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 占有の承継取得について,その意味,要件および効果を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 占有の推定機能について,その意味,規律目的,要件・効果を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑤ 占有者の果実収取権について,その意味,規律目的,要件・効果を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑥ 占有者の損害賠償義務の範囲に関する民法上の規律につき,その意味,規律目的,要件・効果を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑦ 占有訴権について,その意味・機能,各類型,および類型ごとの請求要件・効果などを,正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  21. 占有2(取得時効に関する諸問題) 【予習範囲】佐久間399―407頁,安永203―231頁,安永63―69頁 【講義内容】 占有の効果のひとつである取得時効制度について,その意味,制度目的,要件・効果などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ解説する。そのうえで,関連問題として,時効による物権の取得を第三者に対抗するために登記が必要かをめぐる,判例法理を解説する。 【到達目標】 ① 取得時効制度の概要,適用範囲,および正当化根拠に関する学説の議論を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 取得時効の完成要件を,判例・学説上の理論状況(とくに,所有の意思の有無をめぐる民法上の制度および判例法理など)をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 取得時効と登記の問題についての判例の諸準則,およびこれに対する学説上の評価を正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  22. 担保物権総論/抵当権1 【予習範囲】安永287―315頁 【講義内容】 担保物権の意義,分類・種類,およびその通有的性質・効力を概観する。そのうえで,担保物権の代表例である抵当権を解説する。 抵当権の意義・性質,社会的機能,設定方法と公示に関する民法上の規律を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ説明する。さらに,抵当権の効力のおよぶ範囲について条文・制度趣旨,要件・効果などを詳説する。 【到達目標】 ① 担保物権法の概要を鳥瞰できるようになる。 ② 担保物権の意義・分類・種類およびその性質・効力を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 抵当権の意味・性質,社会的機能を正しく理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 抵当権設定契約をめぐる問題,および抵当権を設定できる目的物の範囲,被担保債権の範囲について,民法上の条文の意味,規律目的,要件・効果などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑤ 抵当権の公示方法(対抗要件)にかかる法律上の制度を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑥ 抵当権の効力が及ぶ目的物の範囲(付加一体物,従物,果実,分離物など)について,民法上の条文の意味,規律目的,要件・効果などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  23. 抵当権2 【予習範囲】安永316―349頁 【講義内容】 ① 抵当権の効力の及ぶ範囲に関連して,抵当権の物上代位の問題を扱う。物上代位の意味,規律目的,要件・効果を判例・学説上の理論状況をふまえつつ詳説する。 ② 抵当不動産の所有・利用をめぐる問題に関連して,抵当権の侵害に対して抵当権者に与えられる救済手段を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ解説する。 【到達目標】 ① 抵当権の物上代位の意味,規律目的,具体的に問題となる場面を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 物上代位の対象となりうる債権の範囲(売買代金債権,賃料債権,転貸賃料など)を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 物上代位権行使の具体的な手続を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 物上代位権行使の要件,とくに中心的要件である「差押え」要件について,その趣旨をめぐる判例法理および学説の理論を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑤ 物上代位と債権譲渡,相殺,転付命令,その他類似の問題などが衝突する場面に関する判例法理および学説の理論を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑥ 設定者または第三者による抵当権侵害に対し抵当権者に付与される救済手段(抵当権に基づく妨害排除請求や損害賠償請求)について,その趣旨,要件・効果などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  24. 抵当権3 【予習範囲】安永349―378頁 【講義内容】 抵当権に関連する民法の規律のうち,抵当不動産の利用に関連するものを扱う。具体的には,抵当権に対抗できない賃借権等,利用権の保護,代価弁済および抵当権消滅請求につき,条文・法制度の意味,規律目的,要件・効果を,判例および学説の理論状況をふまえつつ解説する。 【到達目標】 ① 抵当不動産の賃借人保護の制度(387条,395条など)について,その条文の意味,規律目的,要件・効果などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 代価弁済および抵当権消滅請求の制度について,その意味,規律目的,社会的機能,要件・効果などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  25. 抵当権4 【予習範囲】安永349―378頁 【講義内容】 法定地上権につき,条文・法制度の意味,規律目的,要件・効果を,判例および学説の理論状況をふまえつつ解説する。 【到達目標】 ① 法定地上権の意味,規律目的,社会的機能,要件・効果,その他これに関連する解釈問題を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  26. 抵当権5 【予習範囲】安永378―420頁 【講義内容】 ① 抵当権の処分の問題および抵当権の消滅の問題を扱う。前者につき,転抵当,抵当権の譲渡・放棄および抵当権の順位の譲渡・放棄,変更に関して,その意義・制度目的,要件・効果などを,後者につき,抵当権の消滅事由(抵当権の消滅時効など)を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ説明する。 ② 共同抵当および根抵当の意味,制度目的,各要件・効果,その他これに関連する解釈問題などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ説明する。 【到達目標】 ① 転抵当の意味,制度目的,設定要件,対抗問題,およびその効果を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 抵当権の譲渡放棄および抵当権の順位の譲渡放棄について,その意味,制度目的,要件・効果を正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 抵当権の消滅事由,とくに抵当権固有のそれ(抵当権の消滅時効など)につき,その意味・規律目的,要件・効果などを判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 共同抵当の意味,制度目的,要件・効果,および利害関係者間(後順位抵当権者相互間や物上保証人との関係など)での利益調整にかかる問題を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ⑤ 根抵当の意味,制度目的,要件・効果などを判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  27. 抵当権以外の典型担保 【予習範囲】安永421―441頁,505―545頁 【講義内容】 抵当権以外の典型担保物権を取り扱う。具体的には,質権,留置権,および先取特権につき,それぞれの意味,制度目的,社会的機能,設定(発生)要件・効果などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ解説する。 【到達目標】 ①留置権とはどのような性質の担保物権であるかを,具体例を挙げて説明することができる。留置権の成立要件とその効果について,具体例に即して説明することができる。 ②先取特権とはどのような性質の担保物権であるか,とくに,一般先取特権,特別先取特権は,それぞれどのような性質・効力を有する担保物権であり,どのような種類の先取特権があるかを,条文を参照しながら説明することができる。先取特権における物上代位とはどのような制度かを,具体例に即して説明することができる。 ③質権とはどのような性質の担保物権であるかを,具体例を挙げて説明することができる。
  28. 非典型担保 【予習範囲】安永402―442頁 【講義内容】 非典型担保が必要とされる理由やその社会的機能を説明したうえで,譲渡担保,所有権留保について,それぞれの意味,制度目的,法的性質,要件・効果,利害関係者間での利益調整の問題などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ解説する。 【到達目標】 ① 譲渡担保(流動集合動産譲渡担保を含む。以下同じ)の意味,制度目的・社会的機能,法律構成などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ② 譲渡担保の設定要件・対抗要件,譲渡担保権の効力,譲渡担保権者と設定者または第三者との関係,譲渡担保権の実行手続と清算,その他これに関連する解釈問題を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ③ 所有権留保の意味,制度目的,社会的機能,法律構成などを,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。 ④ 所有権留保の設定要件・公示問題,買主および留保売主の権利・法的地位,所有権留保の実行,その他これに関連する解釈問題を,判例・学説上の理論状況をふまえつつ正確に理解し,自ら説明できるようになる。
  29. 期末試験(定期試験期間中) 【到達目標】本科目で扱った事項につき,条文・法制度の意味,規律目的,要件・効果,およびこれらに関連する判例法理や学説上の理論に関する基本的な知識を身につけ,かつ,この知識を具体的な紛争(事案)にあてはめて解決を図りうるだけの応用力,法的思考力を取得すること。(期末試験は,以上の点を確認・評価するものとする)

教科書

教科書1,2,3を用いて講義を進めるので,毎回の講義に六法とともに必ず持参すること

  • 『民法の基礎1 総則 第5版』

    著者: 佐久間毅

    出版社: 有斐閣 2020年

  • 『講義 物権・担保物権法 第4版』

    著者: 安永正昭

    出版社: 有斐閣 2021年

  • 『民法判例百選Ⅰ 総則・物権 第9版』

    著者: 潮見佳男・ 道垣内弘人編

    出版社: 有斐閣 2023年

参考書

  • 『民法総則(第9版)』

    著者: 四宮和夫・能見善久

    出版社: 弘文堂 2018年

  • 『民法の基礎2 物権 第3版』

    著者: 佐久間毅

    出版社: 有斐閣 2023年

  • 『担保物権法 -- 現代民法3 第4版』

    著者: 道垣内弘人

    出版社: 有斐閣 2017年

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