憲法基礎*

専門職学位課程法学研究科

LWS10100

コース情報

担当教員: 巻 美矢紀

単位数: 4

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 月3, 木2

形式: 対面授業

レベル: 700

アクティブラーニング: あり

他学部履修: 不可

評価方法

授業参加

10%

定期試験

定期試験期間中

50%

中間試験

授業期間中

20%

小テスト等

20%

その他

法科大学院の成績評価基本原則による。 授業参加10% 小テスト20% (2回実施。第1回は5月中旬,第2回は7月上旬に実施予定。詳細はTKCに掲示する。出題は,簡単な記述式と短答式を予定。)

0%

詳細情報

概要

近代憲法は,「権利の保障」と「権力の分立」を不可欠の要素とする。これら2つの原理は,その後,さまざまな現代的変容をこうむることになるが,今なお,憲法の根幹をなす基本原理である。この授業では,それを意識しつつ,かかる憲法として位置づけられる日本国憲法について解説する。限られた時間数から,「権利の保障」にウェイトを置き,しかも,細部の議論については割愛せざるをえないが,できる限り具体的な事例との関係で説明しつつ,体系的な視点も示し,原理の理解が深まるように努めたい。 授業冒頭で,前回の復習として,10分程度の質疑応答を行う予定である。

目標

○判例および学説について,問題の所在や基本的なポイントなどを説明することができる。 ○比較的簡単な事例問題につき,判例・学説をふまえた分析・検討を行うことができる。

授業外の学習

予習として,教科書の該当項目,判例百選の該当判例の<事実の概要>及び<判旨>を読み,レジュメに目を通して,よくわからない部分を意識化して,授業に臨む。 復習として,レジュメをベースに,教科書や百選を利用して学説や判例のポイントを確認整理する。さらに,短答式の問題に取り組み,比較的簡単な事例問題にも挑戦してみる。 *授業で扱えなかった項目については自学すること。 その他,TKCを通じて適宜指示する。

所要時間: 予習:30分,復習:160分

スケジュール

  1. 人権総論(1) 人権の主体 人権総論として,外国人や団体(法人)の人権主体性について説明する。 〔到達目標〕 ○人権の主体について,関連判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  2. 人権総論(2) 人権の適用範囲および限界 人権総論として,私人間における人権の効力,および公務員関係などの特別な法律関係,人権の限界について説明する。 〔到達目標〕 ○人権の私人間効力,特別な法律関係,「公共の福祉」について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  3. 幸福追求権 憲法13条前段の「個人の尊重」の体系的な位置づけについて説明するとともに,プライバシー権などの「新しい人権」の法的根拠となる,憲法13条後段の幸福追求権について説明する。 〔到達目標〕 ○日本国憲法の憲法上の権利について体系的な理解をする。 ○「新しい人権」の法的根拠,保障範囲・程度,限界について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  4. 法の下の平等① 憲法14条1項の「法の下の平等」について説明する。 〔到達目標〕 ○「法の下の平等」の意味について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  5. 法の下の平等② 憲法14条1項の「法の下の平等」および憲法24条について,近年の判例を中心に説明する。 〔到達目標〕 ○憲法14条1項の「法の下の平等」および憲法24条に関する,近年の判例の基本的なポイントを理解する。
  6. 思想・良心の自由 人権各論として,内面的な精神活動に関する一般的保障規定と解されてきた,憲法19条の思想・良心の自由について説明する。 〔到達目標〕 ○思想・良心の自由の意義,保障内容,制約類型,限界について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  7. 信教の自由 人権各論として,精神的自由のうち宗教に関する特別規定とされる,憲法20条の信教の自由について説明する。 〔到達目標〕 ○信教の自由の意義,保障内容,制約類型,限界について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  8. 政教分離 人権とは区別される,客観法としての政教分離について説明する。 〔到達目標〕 ○政教分離原則の意義,法的性格,内容,政教の結びつきが許される限界について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  9. 表現の自由① 人権各論として,外面的な精神活動に関する一般的保障規定と解されている,憲法21条の表現の自由について,意義,事前抑制と検閲との関係,明確性の理論などを説明する。 〔到達目標〕 ○表現の自由の意義について,人格価値や民主制と関連づけて説明できる。 ○表現の自由に関する,事前抑制と検閲との関係,明確性の理論について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  10. 表現の自由② 表現の自由について,内容規制/内容中立規制二分論,内容規制のうち定義づけ衡量が妥当すべきものなどを説明する。 〔到達目標〕 ○内容規制/内容中立規制二分論について,内容および根拠などの基本的なポイントを理解する。 ○扇動に関するブランデンバーグ原則などの定義づけ衡量について,位置づけおよび内容などを理解する。
  11. 表現の自由③ マスメディアの自由など,表現の自由の現代的展開について説明する。 〔到達目標〕 ○表現の自由の現代的展開としての,「知る権利」やアクセス権,報道の自由や取材の自由,放送の自由について,判例や主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  12. 集会・結社の自由,通信の秘密,学問の自由 人権各論として,集会・結社の自由(憲法21条1項),通信の秘密(憲法21条2項),学問の自由(憲法23条)について説明する。 〔到達目標〕 ○集会・結社の自由,通信の秘密,学問の自由それぞれの意義,保障内容,限界について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  13. 経済的自由(1) 職業の自由 人権各論として,経済的自由の一つである,憲法22条1項の職業の自由,および複合的性格を有する居住・移転の自由について説明する。 〔到達目標〕 ○職業の自由の意義,保障内容,制約類型,限界について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。 ○居住・移転の自由の,複合的性格,限界について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  14. 経済的自由(2) 財産権 人権各論として,経済的自由の一つである,憲法29条の財産権について説明する。 〔到達目標〕 ○財産権の意義,保障内容,限界,および損失補償について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  15. 人身の自由と刑事手続上の諸権利 人権各論として,憲法31条以下で保障される,人身の自由と刑事手続上の諸権利について説明する。 〔到達目標〕 ○奴隷的拘束・苦役からの自由の意義,保障内容,限界について,関連する具体的事例や判例を踏まえつつ説明できる。 ○適正手続の意義,保障内容,行政手続への妥当性について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。 ○憲法の定める被疑者および被告人の権利について,関連する法律や判例を踏まえつつ説明できる。
  16. 国務請求権,社会権(1) 生存権 人権各論として,国務請求権,および社会権のうち,憲法25条の生存権について説明する。 〔到達目標〕 ○裁判を受ける権利,国家賠償請求権などについて,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。 ○生存権の意義,法的性格,保障のあり方(憲法25条1項と2項の関係に関する議論を含む)について,裁判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  17. 社会権(2) 教育を受ける権利,労働基本権 人権各論として,社会権のうち,憲法26条の教育を受ける権利,28条の労働基本権について説明する。 〔到達目標〕 ○教育を受ける権利の意義,保障内容,教育決定権の所在について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。 ○労働基本権の意義,保障内容,限界(公務員に対する制限,労働組合の統制権の限界)について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  18. *中間テスト 〔到達目標〕 ○人権に関する比較的簡単な事例問題につき,判例・学説をふまえた分析・検討を行うことができる。
  19. 参政権と統治の基本原理 人権各論として,参政権について説明するとともに,統治総論として,統治の基本原理について概説する。 〔到達目標〕 ○参政権の意義・内容,選挙権の法的性格,選挙の基本原則について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。 ○権力分立の意義,歴史的経緯,現代的変容の基本的なポイントを理解する。 ○国民代表の意味,選挙制度について,関連法律や判例をふまえつつ,主要な学説の基本的なポイントを理解する。 ○政党の意義および性格について,関連法律や判例をふまえつつ,主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  20. 国会① 統治各論として,国会の地位などについて説明する。 〔到達目標〕 ○憲法41条に関する国会の地位の解釈について,主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  21. 国会② 統治各論として,二院制や議院の権能,および国会議員の地位や権能などについて説明する。 〔到達目標〕 ○両院制の意義,国会と議院のそれぞれの権能,国会議員の特権について,基本的な知識を身につけるとともに,解釈に関する主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  22. 内閣① 統治各論として,政治体制の分類や憲法65条「行政権」の意味などについて説明する。 〔到達目標〕 ○議院内閣制などの政治体制について,基本的な知識を身につけるとともに,憲法65条の「行政権」の意味,独立行政委員会の合憲性について,主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  23. 内閣② 統治各論として,内閣の組織や権限などについて説明する。 〔到達目標〕 ○内閣の組織と権能について,基本的な知識を身につける。 ○衆議院の解散権の所在と限界について,主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  24. 裁判所① 統治各論として,憲法76条1項の「司法権」の意味および限界について説明する。 〔到達目標〕 ○憲法76条1項の「司法権」の意味および限界について,判例および主要な学説の基本的なポイントを理解する。
  25. 裁判所② 統治各論として,裁判所の組織と権能,および司法権の独立などについて説明する。 〔到達目標〕 ○裁判所の組織と権能について,基本的な知識を身につける。 ○司法権の独立の意義や内容について理解する。 ○傍聴の自由や裁判員制度(陪審制および参審制を含む)について,国民の司法参加あるいは表現の自由と関連づけながら,判例をふまえつつ説明することができる。
  26. 憲法保障と違憲審査制 統治各論として,憲法保障,とりわけ違憲審査制について説明する。 〔到達目標〕 ○憲法保障の意義や類型,その具体的な制度について理解している。 ○違憲審査制の意義や類型を理解したうえで,制度の異同や特質を踏まえつつ,日本国憲法の定める違憲審査制を説明できる。 ○日本国憲法の定める違憲審査制の対象,判断や判決の方法,判決の効力について,具体的事例や判例を挙げつつ説明することができる。 ○日本国憲法の定める憲法改正について理解する。
  27. 地方自治,財政,国法の諸形式 統治各論として,地方自治(第8章),財政(第7章),国法の諸形式(特に条約)について説明する。 〔到達目標〕 ○地方自治の意義,憲法92条の「地方自治の本旨」の意味について,歴史的沿革を踏まえながら説明することができる。 ○憲法上の地方公共団体,地方公共団体の組織ないし機関について,判例を踏まえつつ説明することができる。 ○地方公共団体の事務,条例制定権の範囲や限界について,地方自治法や判例を踏まえつつ説明することができる。 ○財政民主主義や租税法律主義の意義や内容について,判例を踏まえつつ説明できる。 ○予算の法的性格,その増額ないし減額修正の可否,決算の意味について理解する。 ○憲法89条の意義や内容について,具体的事例を挙げ,判例を踏まえつつ考察できる。 ○条約の意味,成立手続などについて理解する。
  28. 象徴天皇制と平和主義 憲法総論として,日本国憲法の特殊性を示す,天皇制(第1章)と戦争放棄(第2章)について説明する。 〔到達目標〕 ○象徴天皇制につき,象徴の意味,国事行為,皇室の経済などについて説明できる。 ○憲法9条について,制定経緯,政府見解や主要な学説,および関連判例の基本的なポイントを理解する。
  29. 期末試験 〔到達目標〕 ○判例および学説の基本的なポイントや,近年の議論状況の概要についても説明することができる。 ○憲法に関する比較的簡単な事案につき,判例・学説をふまえた分析・検討を行うことができる。

教科書

テキストは授業で使用する。

  • 『憲法学読本〔第3版〕』

    著者: 安西文雄=巻美矢紀=宍戸常寿

    出版社: 有斐閣・2018

  • 『憲法判例百選Ⅰ・Ⅱ〔第7版〕』

    著者: 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿編

    出版社: 有斐閣・2019

参考書

授業やTKCを通じて,適宜,参考文献を示す。

  • 『憲法〔第7版〕』

    著者: 芦部信喜〔高橋和之補訂〕

    出版社: 岩波書店・2019

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