労働法 I*
法学部
LAW51710
コース情報
担当教員: 富永 晃一
単位数: 2
年度: 2024
学期: 1クォーター
曜限: 火1, 金1
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 可
評価方法
レポート
授業内期末試験
授業期間中
小テスト等
その他
各回について小テスト(Moodleを利用)を実施し,評価対象とする。 授業内期末試験は,授業期間中にオンライン(Moodle)で回答していただく形式とする予定である(詳細は授業ないしコースサイト(Moodle)で伝える。短答式試験とする)。 レポートは,具体的な事例を法的に分析し,設問に回答する形式を予定している(自宅等で取り組み,提出期日までに提出する形式である) 【重要】「出席状況」について,小テストを期限内に回答していない場合,不受講(欠席)とカウントする(実際には受講したが,小テストが不回答の場合も欠席と推定するので,ご留意されたい)。不受講が5回以上の場合には,単位を付与しない【重要】。 「その他」について,授業中の質疑応答等により,受講者の理解促進等に大きく貢献したと認められる場合に限り,一定限度で加点することがある(上記100%の枠外)。
詳細情報
概要
本講義は,我が国の労働法をテーマとして,労働法を構成する法分野とその規制にあり方についての基礎的な知識と,新しい労働問題等の法的な背景について,主として講義形式で解説し,履修者に考える機会を提供することにより,雇用問題を総合的・多角的に検討する能力,雇用問題の法的な解決に資する提言をする能力,法的な思考枠組を現実の雇用問題に応用する能力等の養成を目指す。 上記は,法学部の「教育研究上の目的」にいう「社会に生起するさまざまな問題について法的に考える力」,「人材養成の目的」にいう「現代社会に対応できるような法的思考能力や問題分析能力」等を備えた人材の養成という目的に沿ったものであり,またカリキュラム・ポリシー上の「法的な基本知識や思考枠組を修得し,広い視野と柔軟な思考をもって問題の分析や解決にあたる」力(法学部),「問題の法的解決に資する力」(法律学科),「問題を法的及び政治学的に設定し考察するための基礎的な方法論の修得」(国際関係法学科),「日本法に対する素養や思考枠組の養成」(地球環境法学科)等に資するものである。 労働法Ⅰでは,個別的労働関係法のうち,労働法総論,募集・採用,賃金,労働時間,休暇休業等の部分を主にカバーする(対象とするトピックの詳細については,下記講義スケジュールを参照)。 集団的労働関係法については主として労働法Ⅱで扱うことになるが,労働法Ⅰでも労働組合法や労働組合法上の労働者,労働組合,労働協約等の基礎的な概念について扱い,個別的労働関係法のなかでも人事権や解雇,労働条件変更等の内容は労働法2で扱われる。両科目にこのような密接な関連性があることから,労働法Ⅱもあわせて同一年度に履修することを強く推奨する。
目標
本講義とDPとの関係は上記に明示したとおりであり,具体的な目標は下記の①~③のとおりである。 ①雇用社会で働く上で必要となる労働法の基礎的な知識を習得する。 ②雇用社会の法的問題を認識・発見できるようになる。 ③雇用社会の種々の法的問題を検討・分析し,法的又は法政策的な対処策を提案できるようになる。
授業外の学習
【予習】(所要時間:各回60分程度)。 ・授業で使用するスライドの冒頭の「内容」及びシラバス記載の疑問や各回の予習目標について,参考テキスト等で調べて自分なりの予想をつけてみる。 ・授業の参考資料(判例等の資料)を読んでおく。 【復習】(所要時間:各回130分程度) ・上記の自筆ノート・メモ等と配布資料を利用し,講義内容を要約してみる。また,再度体系的なテキストを使用して確認する。 ・Moodleの小テストに取り組み,解説を読んで知識を確認する。 ・事前に抱いていた疑問点が解消されたか確認する。授業後に残った疑問点について は,再度体系的なテキストを使用したり,担当教員に質問したりして解消を図る。
所要時間: 190分
スケジュール
- 【注意】※以下は予定であり,授業の進捗状況により各テーマの予定を変更することがありうる。 「ガイダンス,労働法の意義と歴史・労働法の体系」 ・予習:参考書等で労働契約(雇用契約)の特徴により生じた問題と,それに対する労働法上の対処について調べておく。 ・復習:資料等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:労働契約(雇用契約)の特徴により生じた問題とその理由,労働法上の対処,労働法の体系について説明できるようになる。
- 「労働契約・雇用契約とその他の役務提供契約」「労働条件の決定枠組み」 ・予習:参考書等で労働契約(雇用契約)と委任・請負の異同を調べる。民法91条・92条,労契法12条・13条,労組法16条を読み,強行法規,労働協約,就業規則,個別合意の優先劣後関係(労働条件の決定枠組み)について調べる。 ・復習:資料等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:労働契約(雇用契約)と委任・請負の異同,強行法規,労働協約,就業規則,個別合意の優先劣後関係(労働条件の決定枠組み)について説明できるようになる。
- 「労働法上の当事者(1)(労働者)」 ・予習:民法623条,労契法2条・6条・労基法9条・労組法3条を読み,労働者概念の異同について配布資料・参考書等で調べる。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:労働者の概念について説明できるようになる。
- 「労働法上の当事者(2)(使用者)」 ・予習:民法623条,労契法2条・6条・労基法10条を読み,使用者概念の異同について配布資料・参考書等で調べる。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:使用者の概念について説明できるようになる。
- 「個別的労働法総論」「採用(1)募集,採用内定,採用,試用」 ・予習:労働基準法と労働契約法の性格と法執行の手法(刑事罰か民事裁判か等)について確認する。採用段階での差別禁止,プライバシー保護につき,配布資料・参考書等により法律上の問題を調べる。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:個別的労働関係法の規制枠組み,採用段階への法規制について説明できるようになる。
- 「採用(2)採用,試用,契約締結上の過失等」「労働契約上の権利・義務(1)労働契約上の権利義務の概観」 ・予習:労働契約の成立時点について調べ,内定取消や内々定取消,使用期間後の本採用拒否についてどのような判例法理が展開されているか調べる。労働契約上の権利・義務(特に労働者の基本的義務)について,参考書等で確認する。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:内定や試用への法規制,労働契約上の権利・義務について説明できるようになる。
- 「労働契約上の権利・義務(2)労働契約上の各権利義務」 ・予習:労働契約上の権利・義務(特に労働者の付随義務)について配布資料・参考書等を読み,法律上の問題を調べる。労基法5-7条,16-18条を読み,意義を確認しておく。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:労働契約上の権利義務について説明できるようになる。
- 「労働憲章」「賃金(1)賃金の体系,賃金請求権」 ・予習:賃金の定義(労基法11条)を参考書等で確認する。ノースウェスト航空事件について,配布資料・参考書等を読み,で法律上の問題を調べる。配布資料を読み,法律上の問題を調べる。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:労働憲章,賃金の概念について説明できるようになる。
- 「賃金(2)賃金への法規制」「賃金(3)賞与・退職金」 ・予習:賃金支払いの4原則(労基法24条)を参考書等で再度確認する。労基法25~27条,115条を読み,賃金に関する労基法上の規制と消滅時効を確認する。賞与・退職金に関する判例を読む。配布資料を読み,法律上の問題を調べる。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:賃金に関する法規制について説明できるようになる。
- 「労働時間(1)労働時間の概念,労働時間規制の原則と例外」 ・予習:関係判例と参考書等により,労基法上の労働時間についての判例の判断枠組みについて調べる。労基法32条,34~37条を読み,労基法上の法定労働時間,休憩,法定休日に関する規制とその例外(労基法33条,36条)について確認する。配布資料を読み,法律上の問題を調べる。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:労働時間に関する法規制について説明できるようになる。
- 「労働時間(2)割増賃金,変形労働時間制等」 ・予習:労基法37条を読み,割増賃金に係る規制について確認する。参考書等により,弾力的な労働時間規制・みなし労働時間規制等に関する規制について調べる。配布資料を読み,法律上の問題を調べる。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:時間外労働等に関する法規制について説明できるようになる。
- 「労働時間(3)裁量労働時間制,適用除外等」 ・予習:参考書等を読み,裁量労働時間制と,労働時間規制の適用除外について確認する。・復習=資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ・目標:裁量労働制等の柔軟な労働時間規制,年次有給休暇に関する法規制について説明できるようになる。
- 「休暇・休業(1)年次有給休暇」 ・予習:年次有給休暇について関係条文(労基法39条,136条)を確認し,参考書等で制度の概要を確認する。配布資料を読み,法律上の問題を調べる。配布資料を読み,法律上の問題を調べる。 ・復習:資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。
- 「休暇・休業(2)産前産後休業,育児休業・介護休業(後半)」「期末試験(授業内試験)」 ・予習=産前産後休業,育児休業・介護休業について主な関係条文(労基法65条,均等法9条3項,育児介護休業法5条・6条,11条・12条等)を確認する。配布資料を読み,法律上の問題を調べる。 ・復習=資料・授業時のメモ等を再読し,不明点につき参考書等で確認する。 ※学期末試験として授業内試験(短答式試験)を実施する。また,レポートを出題する(両方とも,授業期間中にオンラインで実施予定。短答式試験・レポートともに,授業時間外の時間帯に受験可能)。
教科書
・教材はオンラインで配布予定であるため,特定の教科書は指定しない。授業外の予習・復習のため有用な文献については,参考書の欄に挙げている(詳細について開講時に述べる)。
参考書
参考書欄に紹介したもののほか,初めて労働法を学ぶ場合には労働法の概要を把握するのに適したテキストが有用である(受講上,必須ではない。詳細について開講時に述べる)。また資格試験等を想定する場合には,下記に紹介する判例集も有用である(必須ではない)。なお,多数の法改正がなされているため,下記参考書や判例集等については,開講までに改訂版が出版された場合,当該最新の改訂版を使用することが望ましい(参考書についても同様)。 ・原昌登『コンパクト労働法(第2版)』新世社,2020 ・森戸英幸『プレップ労働法(第7版)』(弘文堂,2023) ・大内伸哉『最新重要判例200〔労働法〕第7版』(弘文堂,2020)
労働法(第12版)
著者: 菅野和夫
出版社: 弘文堂,2019
労働法(第5版)
著者: 荒木尚志
出版社: 有斐閣,2022
労働法(第10版)
著者: 水町勇一郎
出版社: 有斐閣,2024