担保物権法

法学部

LAW50600

コース情報

担当教員: 小山 泰史

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 月3

形式: 対面授業

レベル: 200

アクティブラーニング: なし

他学部履修:

評価方法

リアクションペーパー

10%

定期試験

定期試験期間中

90%

その他

この授業は,すでに物権法を履修済みであることを前提とする。民法の条文の構造上,担保物権の規定(295条)以下は,物権法の各論にあたり,177条以下の物権変動の知識を当然の前提とする。過年度の場合,物権法の既履修者が少なく,授業の際に物権法の前提知識から詳論せざるを得ず,進行に支障を生じた。物権法を履修済みの上,履修して欲しい。また,債権譲渡や弁済などの知識も必要であるため,春学期に同じ教員が担当する債権法総論Ⅰの履修も推奨される。なお,債権法総論Ⅰと担保物権法は,同じ教科書を使用する予定である。 なお,第1回~第14回までの授業の進行はあくまで目安であり,シラバスと構成を変えたり,授業の進度を速めたりすることもあり得るので,注意されたい。

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詳細情報

概要

本科目では,第二編・物権編のうち,担保物権の部分(295条~398条の22),第三編・債権編のうち,保証の部分(446条~465条の5)を扱う。これらの部分を理解するためには,民法総則Ⅰ・Ⅱ(1条~174条の2),債権総論と各論Ⅰの一部(412条~422条,399条~411条,423条~445条,466条~520条521条~724条),物権法(175条~294条)の内容を理解していることが求められる。この点で,本科目は,民法の財産法(1条~724条)の応用科目という位置づけを有する。講義では,抵当権,質権,先取特権などの典型担保を中心に説明し,あわせて譲渡担保・仮登記担保といった非典型担保についても概説する。 なお,「弁済による代位」は本来債権法総論Ⅰの範囲であるが,民法392条の共同抵当と密接に関係するため,2024年度に関しては担保物権法で扱う。 本来,担保とは,債務の弁済ないし不履行時の賠償が(それがない場合よりも)より確実となる法的効果を期待できる方途のことをいう。担保物権法を理解するためには,物権・契約の知識が必要不可欠であり,債権を回収する手段を規律した民事執行法の規律内容も踏まえて理解を深める必要がある。

目標

民法典の定める典型担保,特に抵当権について,物権総論の民法177条との関係,その権利の性質と効力,抵当権に基づく物上代位,物権的請求権や法定地上権など,担保物権固有の要理について,民事執行法の定める権利実現の手続と併せて理解できるようになること。また,民法典に規定のない非典型担保,とりわけ譲渡担保について,判例法理の概要を理解でき説明できるようになることが,この授業の到達目標である。

授業外の学習

授業の理解度の確認のため,簡単なレポートの提出を求めることがある(任意提出)。特に,担保物権法固有の問題ではなく,その理解の前提をなす物権法の知識をレポートで確認することを目的とする。 また,内容が複雑であるため,Moodleを通じて配布されるレジュメに示された,テキストの該当頁と関連条文について,予習が期待される。教科書として掲げた書籍のうち,授業各回の内容に関連する箇所を読んできて下さい。その際,教科書・参考書に掲載されている最高裁判例については,判例百選でその事案と判旨を確認しておくこと。 復習にあたっては,授業で取り扱われた法制度等について,その要件効果,制度趣旨,判例の示した解釈論などを説明できるか確認しし,うまく説明できない場合箇所には教科書等に立ち返り,知識の定着と整理を図るように努めて下さい。

所要時間: 190分

スケジュール

  1. 担保物権法序論 抵当権(1):抵当権の意義等 ・質権との対比
  2. 抵当権(2):抵当権の設定等,:抵当権の効力(1)・目的物の範囲 ・抵当権設定契約,被担保債権の範囲,対抗要件 ・質権との対比 ・付加一体物,果実,分離物
  3. 抵当権(3)・抵当権の処分 ・転抵当,抵当権譲渡・放棄,抵当権の順位の譲渡・放棄,抵当権の順位の変更,第三者弁済,代価弁済,抵当権の実行序説
  4. 抵当権(4):抵当権の実行・優先弁済権の実現・第三取得者との関係 ・抵当権の実行,他の担保権者との優先関係,一般債権者の立場での権利行使の制約 ・担保不動産競売,抵当権消滅請求
  5. 抵当権(5):抵当権の効力(2)・物上代位(1) ・物上代位の意義,物上代位の目的債権
  6. 抵当権(6):抵当権の効力(3)・物上代位(2) ・物上代位の目的債権(続),担保不動産収益執行,付・動産売買先取特権に基づく物上代位
  7. 抵当権(7):抵当権と利用権(1):抵当権の侵害 ・抵当権の侵害の意義,抵当権に基づく物権的請求権・損害賠償請求権
  8. 抵当権(8):抵当権と利用権(2)・賃借権との関係 ・抵当権と賃借権の優劣,旧短期賃貸借制度とその廃止,明渡猶予制度,抵当権に明渡請求と実行時の明渡猶予制度
  9. 抵当権(9):抵当権と利用権(3)・法定地上権 ・法定地上権制度の意義,法定地上権の要件と内容,抵当権設定時における所有者の同一性,抵当権設定時における建物の存在,再築建物のための法定地上権の成否
  10. 抵当権(10)・共同抵当・根抵当権 ・共同抵当とその意義,設定と公示,共同抵当における同時配当・異時配当,弁済による代位との関係
  11. 抵当権(11):根抵当権 ・根抵当の関する規律の概要
  12. 非典型担保(1) ・不動産譲渡担保,動産譲渡担保,流動動産譲渡担保
  13. 非典型担保(2)・質権 流動債権譲渡担保,所有権留保,質権
  14. 法定担保物権 留置権・先取特権

教科書

指定された教科書以外の担保物権法の教科書を使ってもよいが,レジュメの参照頁は指定テキストのみ示すので注意すること。特に授業内で示す設例は,指定テキストに示されたものを多用する。また,民法判例百選Ⅰも,判決の事案と判旨の部分を授業中に参照するので,必ず購入すること。

  • 『民法Ⅲ 債権総論・担保物権[第4版]』

    著者: 内田貴

    出版社: 東京大学出版会・2020年

  • 『民法判例百選Ⅰ総則・物権〔第9版〕』

    著者: 潮見佳男・道垣内弘人編

    出版社: 有斐閣・2023年

参考書

  • 『講義 物権・担保物権法〔第4版〕』

    著者: 安永正昭

    出版社: 有斐閣・2021年

  • 『担保物権法〔第4版〕』

    著者: 道垣内弘人

    出版社: 有斐閣・2017年

  • 新ハイブリッド民法2 物権・担保物権法

    著者: 小山泰史・堀田豊臣・工藤祐巌・澤野和博・藤井徳展・野田和裕

    出版社: 法律文化社・2023年

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