ミクロ社会学
総合人間科学部 - 社会学科
HSC54500
コース情報
担当教員: 浅野 智彦
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 金3
形式: 対面授業
レベル: 200
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 可
評価方法
レポート
100%
詳細情報
概要
この講義の狙いは次の二点である。第一に,自己やアイデンティティの構成をめぐる社会学的な諸理論を多元的自己の概念を補助線として検討すること。第二に,その理論を前提として現代的なアイデンティティ編成の具体的・歴史的な様相を実証的・経験的なデータを参照しながら検討することである。 教材提供や資料の掲示,課題提出には Moodle を使用するので,授業受講にあたっては,Moodle でコースの 登録を済ませておくこと(履修登録とは連動していないので,各自で別途登録が必要である)。
目標
この授業の目的は上記概要に対応して二つある。第一に,社会学の諸理論の中で「自己」と「社会」との関係に焦点を合わせるものを理解すること。第二に,この理論を用いて,現代社会における「自己」の諸様相について実証的・経験的に考える訓練をすること。理解と訓練の達成度は,後述の通り,学期末のレポートによって評価する
授業外の学習
この授業では,毎回,講義内容に即した参考文献をいくつか紹介する。それらの中から各自の関心と必要とに応じて選んだものを,授業後に読むことを推奨する。
所要時間: 190分
スケジュール
- 導入 講義の狙い,全体の構成,および講義の進め方について説明する。
- 「自己とは何か」とは何か 社会学において「自己」について問うということの意味を再検討する。
- 「自己とは何か」とは何か ジンメルとエリクソンの議論を紹介し,アイデンティティ概念の2つの側面を明らかにする。
- 自己とは関係である(1) G.H.ミードの自己論を紹介し,その中から後の自己論を規定する二つの流れのうち「対他関係論」を取り出す。
- 自己とは関係である(2) G.H.ミードの自己論から後の自己論を規定する二つの流れのうち「対自関係論」を取り出す。
- 自己とはパフォーマンスである(1) E.ゴフマンの議論を紹介し,ミードの中に見いだされた第一の流れがどのように展開されたかを追尾する。
- 自己とはパフォーマンスである(2) E.ゴフマンの儀礼論的相互行為論を紹介し,アイデンティティペグ,「隙間」,「パーソナル・アイデンティティ」などの概念からゴフマンの自己論を再構成する。
- 中間考察 ここまでの議論を整理し,自己現象に内在するパラドクスを確認する。なおこの回以降の講義は,受講者からの反応を考慮していくぶん変更される可能性がある。
- 自己とは自己準拠システムである N.ルーマンの社会システム論を紹介し,自己準拠およびゼマンティクの概念に注目し,ルーマンの自己論を再構成する。
- 自己とは物語である 社会構成主義の考え方を紹介し,そこから自己を物語としてみる論が引き出されていく理路を示す。
- 自己とは再帰的プロジェクトである 現代社会における自己のあり方の特徴をギデンズ,バウマン,ベック等を参照しながら検討する。
- 自己とは加速する自己改造である ギデンズらの再帰的自己論以降の議論としてアンソニー・エリオットの議論を概観する。
- 現代社会の自己意識 現代日本についての実証的なデータを用いて,今日の自己意識やアイデンティティについて検討する。
- 総括 これまでの講義内容を踏まえて,質疑応答・ディスカッションなどを行う。
教科書
特に教科書は指定しないが,参考文献を各回の講義で紹介する。
参考書
項目別に重要な参考文献は各回の講義で紹介する。ここに示すのは全体を通して関連のある文献である。
『自己語りの社会学』
著者: 小林多寿子・浅野智彦編
出版社: 新曜社,2018年
『〈若者〉の溶解』
著者: 川崎賢一・浅野智彦編
出版社: 勁草書房,2016年
『「若者」とは誰か 増補新板』
著者: 浅野智彦
出版社: 河出書房,2015年