西洋倫理思想史I

文学部 - 哲学科

HPH55300

コース情報

担当教員: 長町 裕司

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 木4

形式: 対面授業

レベル: 200

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

20%

授業参加

15%

リアクションペーパー

10%

レポート

55%

その他

学期末レポートは,倫理思想家のテキスト読解によるテーマの内容について(3000字以上)のレポートが課題となる。ほぼ毎回,授業時間の最後の15分程度は,授業で扱ったテーマのトピックとなる重要点についてグループディスカッションを実施し,話し合われた諸ポイントをリアクションペーパーで提出し,出席と併せて評価に加える。

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詳細情報

概要

本講義は西洋の倫理思想の系譜及び現代に至るまでの展開を把握することを目的とするので,2500年の歴史を持つ西洋の倫理思想の流れを通観しつつ,同時に「よく生きられる生」の倫理的熟慮にとっての今日的な問いと問題状況への展望を併せて浮き彫りにしてゆく。2022年度の春学期は,日本社会の緊急事態の状況に鑑み,夏期休暇の終わりの時期に行う集中講義の形式に変更し,19世紀末から20世紀に亘っての西洋倫理思想の展開のみに限定する。特に ①生の哲学と倫理(ニーチェ,ベルクソン) ②実存主義哲学の倫理思想(ヤスパース,ハイデガー,マルセル,レヴィナス) ③現象学派からの価値倫理学(マックス・シェーラー,ディートリッヒ・ヒルデブラント) ④言語分析哲学からのメタ倫理学(エイヤー,スティーブンソン,ムーア,ヘアー) ⑤ ハンス・ヨナスから開拓された 〈地球環境〉 と 〈未来世代〉 へと向けられた責任論理,そして ⑥20世紀後半以降の正義論のルネッサンス(ジョン・ロールズとその後の正義論争)等を中心に前世紀独自の問題状況を把握したい。

目標

今学期は,西洋の20世紀に新たに展開した倫理思想とメタ倫理学及び正義論のルネッサンスの問題史に限定し,受講者が二つの世界大戦前後にどのように倫理思想史上の潮流が変遷してゆくかをしっかりと捉えることを目標とする。われわれにとって時代的にも精神状況においても近接する前世紀の倫理思想史の〈うねり〉を視野に納めることは,秋学期の「西洋倫理思想史Ⅱ」で今日(21世紀の)倫理の状況を考察する上でも前提となるであろう。

授業外の学習

以下に呈示したテキスト 小坂国継 / 岡部英男(編・著)『倫理学概説』 (ミネルヴァ書房 2005年)より扱っているテーマの当該箇所を前もって熟読しておくことが先ず求められる。授業時に配布する資料や呈示された参考文献を授業後にさらに研究することは,各自の勉学意欲に委ねられる。

所要時間: 予習に80分以上,復習に110分強の授業外学習が推挙される。

スケジュール

  1. 導入部:西洋倫理思想史の展開相(時期区分?)― 今日,倫理を考えることと西洋倫理思想を学ぶことの意義 ― 教科書について ― 授業の進め方,グループ発表 ― 学期末レポートについて ~ 生の哲学と倫理 (ニーチェと西洋の道徳意識)
  2. 生の哲学と倫理 2 (アンリ・ベルクソンの『道徳と宗教の二源泉』)
  3. 実存哲学と倫理 :カール・ヤスパース/マルティン・ハイデガーと倫理
  4. エマニュエル・レヴィナスにおける倫理の理解,および現象学的価値倫理学:マックス・シェーラー/ ディートリッヒ ・フォン・ヒルデブラント
  5. 分析的言語哲学からのメタ倫理学(1):情緒主義の問題(エイヤー,スティーブンソン
  6. 分析的言語哲学からのメタ倫理学(2):G. ムーアの直覚主義と〈自然主義的誤謬〉の問題
  7. 分析的言語哲学からのメタ倫理学(3):R. M. ヘアーの指令言語の問題(『道徳の言語』)
  8. ハンス・ヨナスの 『責任という原理 ― 科学技術文明のための倫理学の試み ―』 (1979)について (1)
  9. ハンス・ヨナスの 『責任という原理 ― 科学技術文明のための倫理学の試み ―』 (1979)について (2)
  10. ハンス・ヨナスの 『責任という原理 ― 科学技術文明のための倫理学の試み ―』 と ルートヴィッヒ・ジープのコスモス倫理学
  11. ハンス・ヨナスの 『責任という原理 ― 科学技術文明のための倫理学の試み ―』 と 現教皇 フランシスコの回勅 『ラウダト・シ』
  12. 世紀後半の正義論論争(1) - その端緒:ジョン・ロールズの『正義論』
  13. 世紀後半の正義論論争(2) - その展開:普遍主義 vs 共同体主義及び自由尊重主義の論争(M. サンデル,R. ノージック 等)
  14. 世紀後半の正義論論争(3)― 政治的正義の理念の基礎づけ(O.ヘッフェ)+ 今学期全体の総括

教科書

今日の倫理学の諸問題領域の解説も含む,西洋倫理思想史の諸系譜と諸理論を明快に呈示する。巻末の資料集は,多くの哲学者の倫理思想の理解にとって重要なテキスト抜粋の豊富な邦訳集。

  • 『倫理学概説』

    著者: 小坂国継 / 岡部英男(編・著)

    出版社: ミネルヴァ書房 2005年

参考書

以下に幾つか挙げた近年出版された参考書は,今日の問題状況において倫理思想史を見直す上で,比較的に手に入りやすい文献である。

  • 『倫理学案内 ― 理論と課題 ― 』

    著者: 小松光彦 / 樽井正義 / 谷 寿美 (編)

    出版社: 慶応義塾大学出版会 2006年4月

  • 『現代倫理学事典』

    著者: 大庭 健,井上 達夫,川本 隆史, 加藤 尚武 (編)

    出版社: 弘文堂 2006年12月

  • 『倫理学の地図』

    著者: 篠澤和久 / 馬淵 浩二(編)

    出版社: ナカニシヤ出版 2010年3月

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