自然神学II
文学部 - 哲学科
HPH54800
コース情報
担当教員: 長町 裕司
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 月2
形式: 対面授業
レベル: 200
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
レポート
授業内期末試験
授業期間中
その他
秋学期は,自然神学の存在理解(「実在の真景」)である〈創造〉を現代的に捉え直すと共により求心的なテーマ(良心現象の理解)へと進みつつ,宗教経験の根幹構造を問題化してゆく。15 ほどの参考文献のリストの中からブックレポート(3000字以上)を準備し,学年末には一人15分の口答試験(Orale)を行う。授業二回毎に,最後の20分間はグループディスカッションに当て,その内容をレスポンスペーパーとして提出することを重視する。 ※2017/5/31評価基準変更
詳細情報
概要
人間の自然本性と実存の根底に潜む「神の問題」を開明する本科目は,哲学的神論の可能性を20世紀以降の思惟の諸前提を踏まえて問いつつ,未だ自覚されていない「神秘‐内‐存在」としての人間の理解を深めるものである。その主要テーマは,(a)神秘理解の刷新 ― 理性と神秘の根元的関係(b)神概念の起源(c)思想史と現代における無神論(d)ヒューマニズムと宗教(e)ニヒリズムと神(f)良心現象と神(g)創造の現代的理解(h)宗教言語の問題(i)神の存在論証の正当性と有効性(j)宗教経験に接近するモデルとしての「超越論的経験」等,多岐にわたるが,宗教経験の構造と人間の精神的本性の理解を究明の焦点とする。秋学期には,(f) ~ (j) の各論が中心となるが,「創造の現代的理解」と「良心現象の自然神学的‐実存論的理解」を経て,〈宗教言語の問題〉と〈宗教経験の構造〉へと進み,「自然神学」という営みそのものの成立基盤へと立ち返ってゆく。
目標
秋学期の『自然神学 Ⅱ』では,自然神学による思惟から「実在全体の真景」を問題にする最も遠心的なテーマである〈創造の理解〉から始めて,人間的存在の自然本性と尊厳の急進的なテーマである〈良心現象〉へと進む。その上で,〈宗教的語りの構造〉を主題化し,〈宗教経験の開明モデル〉へと遡源する方向で授業が展開するので,最後の部分で『自然神学 Ⅰ』の基礎論基礎論へと回帰することになる。受講者各位は,自然神学によってそれぞれのテーマが人間的生の現実に密着してその根源的な力動性を開顕せしめることを自得すると共に,この思考の在り方が自らの生を生き抜く上で真実性を発揮することを自覚してゆくことを目標としたい。
授業外の学習
テキストである『旅する人間と神 ― 哲学的神学の素描 ―』 から授業で扱っているテーマに即して指示する当該箇所を熟読しておくことが準備となる。また,授業時に示唆する諸資料や参考文献を研究することは,受講者各自の勉学の発展に大いに益するであろう。
所要時間: 復習として95分,予習としても95分を目安とする。内容については授業時に指示する。
スケジュール
- 導入部・自然神学とは? ― 人間の「自然(本性)」理解と神秘理解 ―
- 「創造」を理解するための根本思想要因
- 「創造」の現代的理解(1)
- 「創造」の現代的理解(2)
- 創造論の思想的系譜
- 良心現象の分析という課題(良心の根本的意義について)
- 良心現象についての二つの近代的解釈(フロイトとフランクル)
- 実存論的良心概念について(ハイデガー)
- 良心現象と神問題の在り処
- 宗教言語について(1)
- 宗教言語について(2)
- 宗教経験を開明するモデルとしての〈超越論的経験〉
- 宗教経験の構造についての省察(〈超越論的経験〉と西田の〈純粋経験〉)
- 宗教経験における「経験」の概念 + 総括と学期末口答試問について
教科書
20世紀の後半に書かれた,国内で唯一の 「自然神学」 全般に亘る叙述であるが,目下絶版中。 授業時にプリントコピーにして受講学生に配布する。
『旅する人間と神 ― 哲学的神学の素描 ―』
著者: R. ロペス・シロニス
出版社: 中央出版社(サンパウロ) 1993年
参考書
以下に挙げる書籍は,授業で扱う諸テーマに関連するものの内,参考図書としての幾つかの例示である。
『識られざる神』(フランクル著作集 7 新装版)
著者: ヴィクトル・フランクル
出版社: みすず書房
『内面への旅 ‐ 宗教経験について ‐』
著者: D. ゼレ
出版社: 新教出版社
『近代形而上学の神』
著者: W. シュルツ
出版社: 早稲田大学出版局 1973年 / 新版 1986年