自然神学I

文学部 - 哲学科

HPH54700

コース情報

担当教員: 長町 裕司

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 月2

形式: 対面授業

レベル: 200

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

15%

リアクションペーパー

15%

レポート

30%

その他

春学期と秋学期連続して履修することが,極力薦められる。評価は,春学期の末には小レポート(2000字程度)を担当教員のMoodle上のコースに設定するレポート提出欄に提出する他,7月末に各受講学生が口頭試問(Orale)を受ける必要がある(各15分)。詳しくは授業開始後に説明する。

40%

詳細情報

概要

人間の自然本性と実存の根底に潜む「神の問題」を開明する本科目は,哲学的神論の可能性を20世紀以降の思惟の諸前提を踏まえて問いつつ,平均的日常性においては自覚されていない「神秘‐内‐存在」としての人間の理解を深めるものである。その主要テーマは,(a) 神秘理解の刷新 ― 理性と神秘の根元的関係(b) 神概念の起源(c) 思想史と現代における無神論(d) ヒューマニズムと宗教(e) ニヒリズムと神(f)生における意義への欲求と神(g) 良心現象と神(h) 創造の現代的理解(i) 宗教言語の問題(j) 神の存在論証の正当性と有効性(k)宗教言語の問題(l) 宗教経験に接近するモデルとしての「超越論的経験」及び「純粋経験」等,多岐にわたるが,宗教経験の構造と人間の精神的本性の理解を究明の焦点とする。『自然神学 Ⅰ』では,主に上記(a)~(f)のテーマを取り扱う。

目標

「自然神学 Ⅰ」では,自然神学に固有な問題圏域がどのように開かれるのか,そしてキリスト教啓示神学とは一線を画するこの思考の道がどのような探求であるのかを受講者が自得することが第一の目標となる。〈自然神学基礎論〉であると共に,無神論やニヒリズムの問題史,また現代のヒューマニズムを考察するので,思想史的な理解も幾分か必要とされる。

授業外の学習

指定テキスト(R. ロペス・シロニス 『旅する人間と神 ― 哲学的神学の素描 ― 』)の中で次回の授業に該当する箇所数ページを熟読して準備してくることが求められる(このテキストは,目下絶版なので,必要なページをコピーしてテーマ毎に 受講学生全員に配布する)。さらには,参考資料や呈示された参考文献を受講者各自が次回の授業までに反復・復習・吟味を重ねることは,授業内容の十全な理解に大いに益する。

所要時間: 復習に80分程度,予習に110分程度を目安とする。内容については授業時にその都度示唆する。

スケジュール

  1. 導入部:自然神学とは? ― 人間の「自然(本性)」理解と「神秘‐内‐存在」―
  2. 「神」という言葉についての省察 (Karl Rahner の『神というささやかな言葉』)
  3. 「神秘概念」の再吟味 ― 理性と神秘の関係規定 ―(1)
  4. 「神秘概念」の再吟味 ― 理性と神秘の関係規定 ―(2)
  5. 神観念の起源の究明(1) : H. Lubac を中心とする20世紀半の「新しい神学」
  6. 神観念の起源の究明(2) : R. Otto と宗教現象学 ― 〈聖なるもの〉の概念 ―
  7. 無神論の諸形態 - 思想史における無神論と現代の無神論 (1) : 18・19世紀の無神論問題
  8. 無神論の諸形態 - 思想史における無神論と現代の無神論 (2): 20世紀以降の無神論
  9. 無神論的ヒュマニズムとニヒリズム
  10. J. P. サルトルの戯曲 『蠅 』についての検討とグループディスカション
  11. .意義現象と神(1) ― V. フランクルの諸著作より ―
  12. 意義現象と神(2): 意義の開示構造の哲学的考察
  13. 意義現象と神(3): 意義体験と宗教性
  14. 総括 ― 自然神学を通して開かれる神的なるものの理解

教科書

20世紀の後半に書かれた,国内で唯一の 「自然神学」 全般に亘る叙述であるが,目下絶版中。 授業時にプリントコピーにして受講学生に配布する。

  • 『旅する人間と神 ― 哲学的神学の素描 ― 』

    著者: R. ロペス・シロニス

    出版社: 中央出版社 1993年

参考書

以下に挙げる書籍は,授業で扱う諸テーマに関連するものの内,参考図書としての幾つかの例示である。

  • 『聖なるもの』

    著者: ルドルフ・オット― 著 / 久松英二 訳

    出版社: 岩波書店(岩波文庫 青 811 - 1)

  • 『ニヒリズム』( 西谷 啓治 著作集 第8巻)

    著者: 西谷 啓治

    出版社: 創文社 1986 / 1990 年

  • 『自然と神 ― 自然の神学へ向けて ―』

    著者: W. パネンベルク

    出版社: 教文館 1993年

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