文献講読IＢ(ドイツ語)
文学部 - 哲学科
HPH53200
コース情報
担当教員: 長町 裕司
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 金2
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
レポート
その他
毎回数名が担当で,ドイツ語テキストの邦訳と内容のまとめの呈示(Praesentation)を行う。使用テキストは,授業開始時に授業参加者全員に教員がコ ピーして配布する。毎回の授業時における,ドイツ語邦訳担当も一定の評価に加える。
詳細情報
概要
2024度秋学期には,サブタイトルにある通り,西洋哲学史の諸潮流の中で潜伏せるテーマ領域の診断を,20世紀以降より今日に至るまでの現象学的思惟の展開における論稿を講読してゆくことによって着手したい。 先ず,今年(2024年1月)に逝去されたフライブルク大学哲学部のG. フィガール( Günter Figal, 1949 - 2024) の小論稿 Dualität und Inkarnation.Phänomenologisch - hermeneutische Überlegungen (「二極性と受肉。現象学的 - 解釈学的諸省察」は,2014年刊行の『キリスト教と哲学。移行における統一』に寄稿されたものだが,極めて啓発的で斬新的な開明を現象学および哲学的解釈学の思惟の遂行から切り開いていており,最初に読解してみたい。続いて同じ論文集の中で J.- Luc Marion (1946 - )によるドイツ語での寄稿 Die Frage nach dem Unbedingten(「無条件なるものへの問い」)は,〈神への問い〉を現象学的に究明する上で哲学の伝統を診断し再解釈し直す極めて内容豊かな論稿であり,じっくりと取り組むことにする。 進行上授業回数に余裕があるようであれば,2014年刊行の別の論文集『超越の諸形姿。現象学的一概念の諸変容』への同じくJ.- Luc Marionのドイツ語による寄稿である「非還元的なるもの(Das Unreduzierbare)」に挑戦してみることにしたいが,ここでも神への問いと神の理念が厳密に現象学的に考究されてゆく。
目標
20世紀以降の哲学の諸潮流に触れつつドイツ語の読解力を一段と進展させることが秋学期のこの授業での到達目標である。そのために,今日の世界状況においての新しい世代である君たちにも接近し易く,関心をもてるテーマのテキストを選択している。 文学部哲学科の3・4年次生のドイツ語文献講読では,哲学的ドイツ語に習熟してゆく発展段階として,単に邦訳する能力だけではなく,ドイツ語を通して哲学的問題を思考する力を養うようにする。
授業外の学習
毎回授業で取り扱うテキスト箇所のドイツ語原文を担当者(各回 数名)以外に各自が邦訳を試み研究してくることが大切。ドイツ語特有の構文法に更に習熟してゆくため,授業で留意を促された箇所を絶えず復習してゆくことがドイツ語能力の発展のために不可欠である。更には,毎回の授業でドイツ語邦訳を担当する２名以外の受講者全員が,テキストの数パラグラフを研究し,試訳を用意することが語学の発展にとって何よりも大切である。
所要時間: 復習には60分程度,予習には130分程度を目安とする。内容は授業時に指示する。
スケジュール
- 〈導入部〉 20世紀ドイツ哲学の根本動向について / 授業の進め方 / レポートの内容について,等。テクスト講読(１)‐ Günter Figal, Dualität und Inkarnation. Phänome-nologisch - hermeneutische Überlegungen, S. 175 - 176.
- テキスト講読(２)‐ Günter Figal, Dualität und Inkarnation. Phänome-nologisch - hermeneutische Überlegungen, S. 176 - 178.
- テキスト講読(３)‐ Günter Figal, Dualität und Inkarnation. Phänome-nologisch - hermeneutische Überlegungen, S. 178 - 180.
- テキスト講読(４)‐ Jean - Luc Marion, Die Frage nach dem Unbedingten,S. 21 - 24.
- テキスト講読(５)‐ Jean - Luc Marion, Die Frage nach dem Unbedingten,S. 24 - 27.
- テキスト講読(６)‐ Jean - Luc Marion, Die Frage nach dem Unbedingten,S. 27 - 30
- テキスト講読(７)‐ Jean - Luc Marion, Die Frage nach dem Unbedingten,S. 30 - 33.
- テキスト講読(８)‐ Jean - Luc Marion, Die Frage nach dem Unbedingten,S. 33 - 36.
- テキスト講読(９)‐ Jean - Luc Marion, Die Frage nach dem Unbedingten,S. 36 - 39.
- テキスト講読(１０)‐ Jean - Luc Marion, Die Frage nach dem Unbedingten,S. 39 - 41.
- テキスト講読(１１)- Jean - Luc Marion, Die Frage nach dem Unbedingten,S. 42 - 45.
- テキスト講読(１２)- Jean - Luc Marion, Das Unreduzierbare, S. 313 - 316.
- テキスト講読(１３)- Jean - Luc Marion, Das Unreduzierbare, S. 316- 320..
- テキスト講読(１４)- Jean - Luc Marion, Das Unreduzierbare, S. 320- 323..
教科書
この秋学期の「ドイツ語文献講読 ⅠB」で精選した三つのドイツ語論稿のテクストは,それぞれに特徴を有する思考形式とテーマ設定からの追究が見いだせる。ドイツ語の Stil(様式)もそれぞれに異なっているので,原典での読解力を養う上で役立つと思われる。
Dualität und Inkarnation. Phänomenologisch - hermeneutische Überlegungen, in : Jean - Luc Marion / Walter Scweidler ( Hrsg.), Christentum und Philosophie. Einheit im Übergang, S. 175 - 180.
著者: Günter Figal
出版社: Verlag Karl Alber, München / Freiburg, 2014
Die Frage nach dem Unbedingten, in : Jean - Luc Marion / Walter Scweidler ( Hrsg.), Christentum und Philosophie. Einheit im Übergang, S. 21 - 47.
著者: Jean - Luc Marion
出版社: Verlag Karl Alber, München / Freiburg, 2014.
Das Unreduzierbare, in : Michael Staudigl / Christian Sternad (Hrsg.), Figuren der Transzendenz. Transformation eines phänomenologischen Grundbegriffs (Orbis Phaenomenologicus, Perspektiven . Neie Folge 30) S. 313 - 323.
著者: Jean - Luc Marion
出版社: Königshausen&Neumann, Würzburg 2014
参考書
以下に挙示するのは,この秋学期の文献講読ⅠB(ドイツ語)で扱うテキストの哲学者の思考形態,根本問題,思想内容をさらに発展的に理解しようとする受講生のために参考になるものである。決して専門勉強の二次文献でも最新の研究を紹介するものではない。
『現象学の根本問題 (現代哲学の根本問題 8)』
著者: 新田 義弘/小川 侃(編)
出版社: 晃洋書房,1978年11月
『フランスの現象学〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス 911)』
著者: ベルンハルト・ヴァルデンフェルス(著)/
出版社: 法政大学出版局, 2024年1月
『現代思想2001年12月臨時増刊号 総特集=現象学 知と生命』
出版社: 青土社,2001年12月