文献講読IＡ(ドイツ語)

概要

本年度の春学期には,20世紀以降のドイツ芸術哲学の展開の中で,ドイツ語の文献理解に習熟してゆくという意味からも,今日における中央ヨーロッパの芸術理解にとって刺戟的な論稿をテキストとする。 先ず,M. ハイデガーによる1935/36年の有名な講演「芸術作品の根源」に先だっての1931 / 32 年 フライブルク大学冬学期講義 : Vom Wesen der Wahrheit. Zu Platons Höhlengleichnis und Theätet の中の一節〈Seinsentwurf in Wissenschaft und Kunst(学問と芸術における存在の投企)〉を取り上げて,1930年代後半以降の中期・後期の《転回の思惟》以前の芸術の理解を洞見しておくことにする。 続いて,西南ドイツのフライブルク大学の正教授を務め,ハイデガー・ガダマーおよび哲学的解釈学研究の今日における第一人者と言える Günter Figal (1949 - 2024)の芸術論集 Kunst. Philosophische Abhandlungen より Ist die Kunst metaphysisch ? (「芸術は形而上学的なのか ?」2012年)に取り組み,20世紀以降の芸術哲学的省察から開かれる思索的境地を検討したい。 最後に H. G. ガダマーの晩年の論稿 Der Kunstbegriff im Wandel(変遷の中での芸術の概念,1995年)を読解して,概念史的診断を通して明るみ化する芸術哲学上の哲学的解釈学の成果を問題化することにする。 今学期の授業時間に未だ余裕があるようならば,残りの数回で G. Boehm の 近年の著書 Wie Bilder Sinn erzeugen. Die Macht des Zeigens(いかに図像は意味を産出するか ー 指示することの力 - ,2007年)より導入部(Einführung)をテクストとして21世紀に新たに展開する芸術哲学上の問題脈絡を照射できるよう,ドイツ語の文献読解力を磨いてゆくよう心掛けたい。

目標

哲学的文脈におけるドイツ語に次第に慣れてゆくと共に,18世紀後半～20世紀のドイツの文芸史の広い問題脈絡に照らし合わせて主題となっている事柄を理解することが目標となる。 文学部哲学科の3・4年次生のドイツ語文献講読では,哲学的ドイツ語に習熟してゆく発展段階として,単に邦訳する能力だけではなく,ドイツ語を通して哲学的問題を思考する力を養うようにする。 学期末の課題レポートでは,授業時に扱ったテキストのドイツ語及び内容の読解力・理解力とともに,テキストに内在的なテーマを巡っての今日的状況についての考察と展望を論述できることが到達目標となる。

授業外の学習

毎回授業で扱うテキストにおける邦訳の重点,構文法と共に思考過程を復習して自得することを必ず心がけられたい。この復習を通しての地道な自習が積み重なって初めて,ドイツ語の能力が一段上へと高められてゆく。更には,毎回の授業でドイツ語邦訳を担当する数名以外の受講者全員が,テキストの数パラグラフを研究し,試訳を用意することが語学の発展にとって何よりも大切である。

所要時間: 復習に70分程度予習に120分程度を目安とする。内容については授業時に指示する。