キリスト教思想史

文学部 - 哲学科

HPH50100

コース情報

担当教員: 長町 裕司

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 月3

形式: 対面授業

レベル: 200

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

20%

リアクションペーパー

20%

レポート

60%

その他

評価は,秋学期の末に学期末ポート(3000字以上)を Moodleの本コースの最終回の欄に設定される「学期末レポート提出」課題フォルダーに期限までに提出する。レポートの内容は,授業を通して キリスト教思想史上の三つの大きな時代確定の枠の中で,いくつかの重要なトピックとなる主題を巡って書くことを勧める。授業二回毎に,最後の20分間はグループディスカッションに当て,その内容をレスポンスペーパーとして提出することを重視するが,小グループのディスカションを各回に一名の学生にまとめてもらって,担当教員のメールアドレス : [email protected] に添付ファイルにして送信する。

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詳細情報

概要

2022年度秋学期のこの科目では,2000年以上に及ぶキリスト教思想史の断面図を以下の三つの主題設定の下に探求したい。―(1) 西欧の13世紀末~15世紀におけるキリスト教神秘主義の新たな段階(― ドイツのドミニコ会アルベルトゥス学派の内部からのドイツ神秘思想の成立と展開 ― a. スコラ学の遺産とマイスター・ディートリッヒ,マイスター・エックハルト及びハインリッヒ・ゾイゼ; b. ヨーロッパ近世の思考を準備するニコラウス・クザーヌスと神秘思想 ― )(2) 近代ヨーロッパにおける18世紀後半からの宗教哲学の胎動とキリスト教信仰理解(― 啓蒙主義及びロマン主義思潮の影響下での〈神への問い〉~ 理神論 Deismusと無神論 Atheismus 論争 ~ 汎神論 Pantheismus 問題と観念論的宗教哲学における,キリスト教信仰の〈哲学への止揚〉)(3) 20世紀中葉の第二ヴァティカン公会議前後におけるキリスト教事情と第二次世界大戦後のキリスト教思想の動向(― 第二ヴァティカン公会議を準備したキリスト教神学 ~新スコラ学の推進者と新たな宗教思想 ~ 20世紀の諸哲学思潮のキリスト教信仰理解への受容の問題)。これらの思想史的断面図は,キリスト教の自己理解にとって非連続面を形成しつつ創造的な刷新を生んだものであり,西洋哲学史との緊張を孕んだ連関の下に捉え直すことにしたい。

目標

ヨーロッパのラテン中世から今日のキリスト教の自己理解への変遷・深化を,キリスト教思想史における非連続性をもつ断面における思想史的ドラマから受講者各自が把握できるようになり,また今日的な精神状況の中でのキリスト教信仰理解のあり方を模索できるための背景を養えるようにしたい。そのため受講者には,キリスト教についての捉え方の刷新が要求されてくるが,それはまた自らが生きる歴史的現在からキリスト教の自己理解そのものを新たな問題視点から透察する枠組みを構築することとなり,人間の宗教性についての自覚的な覚醒を生むことにつながる。学期末レポートでは,上述の三部構成の授業内容から,各自が最も関心を有し焦点化できる主題設定の下での省察的叙述が求められる。

授業外の学習

各回の授業内容はそれぞれ独自の重みを持つので,その中心的な諸点を受講生各自が十全に吟味して自得できるように省察する時間を持ち,授業時に呈示される参考文献を活用して理解を深める努力を願う。

所要時間: 予習に80分程度,復習に110分程度の授業外学習を勧めるが,具体的には授業時に指示する。

スケジュール

  1. 導入部:キリスト教思想史を学ぶとは?キリスト教思想史の根本構図は可能か? ― 授業の進め方,学期末レポートについて,等。
  2. 中世後期(13世紀末から14世紀)における,キリスト教神秘思想の新たな段階(1)‐ アルベルトス・マグヌスとケルンのドミニコ会学派(フライベルクのディートリッヒという思想家について)
  3. 中世後期(13世紀末から14世紀)における,キリスト教神秘思想の新たな段階(2)‐マイスター・ディートリッヒを介しての,トマス・アクナスとマイスター・エックハルト
  4. ドイツ神秘思想の潮流とニコラウス・クザーヌス ― マイスター・エックハルトとドイツ神秘思想の影響史(ハインリッヒ・ゾイゼとヨハネス・タウラーからヤーコブ・ベーメ)の中でのクザーヌス
  5. 近代形而上学における「神への問い」とキリスト教的宗教哲学(1)― 18世紀の合理論における神問題(理神論 Deismusと無神論の起源)
  6. 近代形而上学における「神への問い」とキリスト教的宗教哲学(2)― 啓蒙主義の浸透と無神論論争(Atheismusstreit):初期フィヒテの『あらゆる啓示批判の試み』(1792)
  7. 近代形而上学における「神への問い」とキリスト教的宗教哲学(3)― キリスト教的文化闘争としての,ヤコービーとフィヒテの間での「ニヒリズム」論争 ,及びプロテスタント自由主義神学の勃興(F. シュライエルマッハー,等)
  8. 近代形而上学における「神への問い」とキリスト教的宗教哲学(4)― 初期ヘーゲルの宗教哲学的端緒とキリスト教的宗教哲学としてのドイツ観念論
  9. キりスト教思想における内在論的護教論 ― 19世紀におけるカトリック神学内部からの内在的護教論
  10. 世紀前半のキリスト教思想状況 ― 近代主義(Modernism)と反近代主義(Antimodernism)の葛藤 ~新トミズムとマレシャル(Joseph Maréchal, 1878 - 1944)学派 ―
  11. 世紀中葉の第二ヴァティカン公会議前後におけるキリスト教事情とキリスト教思想の動向(1)― 第二ヴァティカン公会議を準備したカトリック神学(A. リュバック,I. コンガール,K. ラーナー,等)
  12. 世紀中葉の第二ヴァティカン公会議前後におけるキリスト教事情とキリスト教思想の動向(2)― 第二ヴァティカン公会議のヴィジョン
  13. 世紀中葉の第二ヴァティカン公会議前後におけるキリスト教事情とキリスト教思想の動向(3)― 20世紀後半からの宗教思想と宗教哲学
  14. 第二ヴァティカン公会議以後におけるキリスト教事情とキリスト教思想の動向 ― 宗教多元主義の問題とアジア的霊性 + 全体の総括

教科書

以下の資料集以外には教科書としてのテキストは指定せず,授業時にレジュメのプリントを毎回配布するが,以下の参考文献にも目を通しておくことは,理解に大いに役立つ。

  • 『第二ヴァティカン公会議 公文書全集』

    著者: 南山大学 監修

    出版社: サンパウロ社 1986年/2011年

参考書

授業後半部に頻繁に使用する資料として,南山大学監修 『第二ヴァティカン公会議 公文書全集』(中央出版社 1986年,1800円)を入手することを極力勧める。更に以下の参考文献の内,キリスト教史全般を扱うものの中で思想的内容として指定する数章を特に読んでおくことを勧める。

  • 『キリスト教史 (7) 啓蒙と革命の時代』

    著者: L.J.ロジエ 著 / 上智大学中世思想研究所 編

    出版社: 平凡社ライブラリー 新書 1997年

  • 『キリスト教史〈8〉ロマン主義時代のキリスト教』

    著者: ベルティエ ド・ソーヴィニー,ヨセフ ハヤール著/ 上智大学中世思想研究所 編

    出版社: 平凡社ライブラリー 新書 1997年

  • 『試練に立つ神 : 無神論の歴史』

    著者: ゲオルク・ズィークムント

    出版社: エンデルレ書店 1972年

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