哲学演習II(倫理)B

文学部 - 哲学科

HPH21600

コース情報

担当教員: 長町 裕司

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 水2

形式: 対面授業

レベル: 200

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

20%

授業参加

25%

レポート

55%

その他

和訳テキスト(以下に表示)は,5800円もして高価なので,本演習で使用する 重要な Chapter をコピーして参加者全員に配布する。毎回2名が組みになってレポーターを担当し,授業時にその回の内容のプレゼンターションを行った後,みんなでのディスカションを司会する。

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詳細情報

概要

文学部哲学科の倫理学コースの演習であることに鑑み,2024年度秋学期にはアラスデア・マッキンタイア(Alasdair MacIntyre, 1912 - )の有名な著書 『美徳なき時代 』(After Virtue. A Study in Moral Theory, 1981; 邦訳は 篠崎 榮 訳 みすず書房 新装版 2021年)に取り組んで,その主要部から講読し,今日の倫理の在り方・方位・課題を大いにディスカッションしつつ,共に真剣に考えるゼミナールとしたい。この著書の著者マッキンタイアは,今日の徳倫理学ルネッサンス(再興)の導火線となったカトリック系の倫理哲学者で,スコットランド生まれであるがアメリカの幾つもの大学で教授職を歴任し,多数の著書を通して20世紀終わりから今世紀の倫理思想上の議論に貢献してきた。彼の倫理哲学的構想は,共同体主義(communitarianism)の陣営に属すると評価されがちだが,本人は自らを現代におけるアリストテレス- トマス主義の発展継承者に位置づける。21世紀の倫理を議論するために現状を鋭く洞察する上での西洋倫理思想史を通しての査定を踏まえ,根本的な問題の次元を暴き出す手法がとられているので,参加者の意欲的かつ積極的な発言とディスカションを期待する。

目標

このゼミナールを通して,本哲学科2年次生の〈倫理学コース〉選択者各自が倫理についての総合的な哲学的思考の在り方を自らに問う態度を深めると共に,哲学的論議のディスカッションの仕方を更に発展させることが目標となる。今回取り上げるテキストは,様々な考察を必要とする複合的な熟慮が倫理の追究において要求されてくるので,学期末レポートでは各自が自立的な考えを表明できるよう,この到達目標向けて毎週の演習内での論議に積極的に加わることが何よりも大切である。

授業外の学習

哲学演習Ⅱでは,演習参加者各自がより一層テキストの哲学的内実とを徹底的に理解すると共に,自らの根本関心に即したテーマへと向けて自分の思考を練磨してゆくことが求められる。レポートを提出する際には,更によくテキストを読解した上で,自らの思考を表現できるよう十分な省察の時間と努力が求められる。倫理思想の系譜及び倫理学の今日の状況については, 篠澤和久/ 馬渕浩二編 『倫理学の地図』(ナカニシヤ出版,2010年3月)等の良き参考文献が道案内となるので,意欲のある学生諸君には参照することを勧める。

所要時間: 復習として70分程度,予習として120分程度を目安とする。内容は授業時に示唆する。

スケジュール

  1. .導入: アラスデア・マッキンタイアの思想的境涯と『美徳なき時代』という本の問題構制 ~ 授業の進め方と毎回のレポーター担当,学期末レポートについて,等 +『美徳なき時代』 第 1 章 pp. 1 - 6 : 〈一つの不穏な思いつき〉について
  2. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 2 章 〈今日の道徳的不一致の本性と情緒主義の主張〉pp. 7 - 17
  3. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 2 章 〈今日の道徳的不一致の本性と情緒主義の主張〉pp. 17 - 28
  4. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 3 章 〈情緒主義〉pp. 29 - 44
  5. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 4 章 〈先行文化と,道徳の正当化という啓蒙主義の企て〉pp. 45 - 54
  6. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 4 章〈先行文化と,道徳の正当化という啓蒙主義の企て〉pp. 54 - 63
  7. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 5 章〈なぜ啓蒙主義の企ては失敗せざるをえなかったのか〉pp. 64 - 77
  8. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 6 章〈啓蒙主義の企ての失敗がもたらした諸結果〉pp. 78 - 97
  9. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 9 章〈ニーチェかアリストテレスか?〉pp. 134 - 147
  10. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 12 章〈アリストテレスの徳論〉pp. 179 - 189
  11. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 12 章〈アリストテレスの徳論〉 pp. 189 - 201
  12. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 14 章〈諸徳の本性〉 pp. 222 - 237
  13. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 14 章〈諸徳の本性〉 pp.237 - 249 +第 15 章〈諸徳,人生の統一,伝統の概念〉 pp. 250 - 255
  14. マッキンタイア 『美徳なき時代 』 第 15 章〈諸徳,人生の統一,伝統の概念〉 pp. 255 - 276

教科書

西洋の倫理学の諸構想と伝統を踏まえつつも,その倫理学の問題の立て方が時空的に狭く限定された限りでの〈隣人倫理〉であることの限界を批判的に考察し,〈責任〉という理念の根元的な基礎へと回帰しつつ,「倫理とは何であるか」の問いに正面から肉薄する倫理学の新たな構想。今日の倫理を考える上ですでに古典的となりつつある必読の書。

  • 『美徳なき時代 』

    著者: アラスデア・マッキンタイア著/ 篠崎 榮 訳

    出版社: みすず書房 1993年8月 初版 / 新装版 2021年 11月

参考書

英語圏での徳倫理学のルネッサンス動向からの研究が盛んであるが,以下に例示するのはこの傾向からの一端である。

  • 『倫理思想史概説』(上)(下)

    著者: アラスデア・マッキンタイア著/ 訳

    出版社: 九州大学出版会,1966年

  • 『徳倫理学について』

    著者: ロザリンド ハーストハウス(著)/土橋 茂樹(訳)

    出版社: 知泉書館,2014年10月

  • 『 ケンブリッジ・コンパニオン : 徳倫理学』

    著者: ダニエル・C・ラッセル(編)/立花幸司 [監訳] 他

    出版社: 春秋社,2015年9月

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