メディアと社会Vb(テレ・コミュニケーション論)

文学部 - 新聞学科

HJN68900

コース情報

担当教員: 元橋 圭哉

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 木3

形式: 対面授業

レベル: 300

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

10%

授業参加

20%

リアクションペーパー

20%

授業内期末試験

授業期間中

50%

その他

*授業における出席状況や理解度の確認,質問や意見の把握を目的として,授業終了後に「リアクションペーパー」を提出していただきます。リアクションペーパーの書式,提出方法は授業で指定します(大学所定の用紙でなく,メール等で提出してもらうことを想定)。必ずしも長文の感想・質問・意見等を記述する必要はありませんが,少なくとも学生番号と名前は記載してください。 *授業テーマや内容についての質問や意見がある場合,遠慮無く,授業中に随時,積極的に発言していただくことを歓迎します。上記リアクションペーパーとして提出していただいても結構です。すべての質問や意見に答えられるかどうかわかりませんが,重要な質問・意見には(個人を特定しないように配慮したうえで)後日の授業で,回答・コメントします。

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詳細情報

概要

みなさんは普段何気なく使っているGoogleやLINEなどのインターネットのサービスがなぜ「無料」で提供されていると思いますか?広告料で運営されているから!そうです。でもそれだけが理由ではありません。動画配信やSNSなどデジタル・サービスの事業構造は従来のテレビや新聞,雑誌のそれとは大きく異なります。インターネットのサービスは日進月歩の〜いや秒進分歩,とさえいえる〜デジタル技術によって,双方向で大量の情報やデータがリアルタイムにつながっており,集積されたビッグデータが新たな価値を生みビジネスの源泉になっています。従来のマスメディアとは異なる機能をもち,ユーザーのニーズや特性に合わせた便利なサービスや豊富なコンテンツが提供され,それに最適化されたビジネスモデルが定着しています。 半面,フェイクニュースによる混乱やサイバーテロ,個人情報の漏洩・悪用など社会や個人に重大な影響を与える,デジタルゆえの難しい課題も顕在化しています。 スマートフォンの登場から15年あまり。つまり,学生の皆さんが生まれたころ,いまのようなスマートフォンやそれを活用したサービスはまだありませんでした。インターネットが一般の人に普及しはじめたのも30年ほど前からです。 放送事業者はかつてインターネットの存在を過小評価し,あるいは敵視し,スマートフォンが普及しはじめてからもその位置づけを(テレビに次ぐ)「セカンド・スクリーン」と認識していましたが,もはや多くのユーザーにとってスマートフォンは「ファースト・スクリーン」です。いまや情報やエンターテイメントを提供し,享受する手段として,「インターネット」は 「放送」をしのぐ存在になっています。テレビ放送に替わり,スマートフォンのサービスがユーザーの時間と財布とハートをしっかりとグリップしているのです。放送とインターネットは,その技術的な特徴・コンテンツが届けられる仕組みが大きく異なり,それぞれ得意・不得意があり,相互補完的な関係の強化が求められています。一方で,SNSの浸透による影響力の拡大や,GAFA=Google, Apple, Facebook(*2021年秋,社名をMetaに変更), Amazon=やそれにNetflixやX(旧Twitter)等を加えた,グローバルなインターネット・ビジネスのプラットフォームが覇権を強め,それらの功罪も議論になっています。 放送局とその関連会社で放送サービスのデジタル化やインターネットサービスの拡充に関わってきた講師(元橋)の視点から,デジタル時代のメディアやコミュニケーション・ツールの公共性や,健全な情報空間の在り方を考えていきます。 授業では,急激かつグローバルに進化するデジタル・メディアやインターネットの最先端サービス,ビジネスの特徴やその課題を理解するため,国内外のできるだけビビッドな事例やトピックを取り上げ,少し技術的な仕組みや背景についても説明していきます。講師自身もいわゆる文科系の出身ですが,今日のデジタル分野のサービスの理解や課題解決には従来の文科,理科の枠を超えた 総合的な対応が必要になります。好奇心や関心があれば理解できるよう,技術的なこともできるだけわかりやすく解説していくつもりです。

目標

(1)皆さんが日常的に使っている(もはや生活に無くてはならない存在になっている)スマートフォンやインターネットについて,どういう仕組みで情報・コンテンツが届くのか,というデジタル・コミュニケーションのベーシックな仕組みから, (2)デジタル・プラットフォームと呼ばれるグローバルなビッグテック企業の戦略,インターネット社会が抱える課題,などを大づかみで理解すること,そして, (3)「社会」と「デジタル・メディア」,「ユーザー」と「インターネット」のあるべき関係性や,これからのメディアやコミュニケーション・ツールの公共的な役割と意義を考える視座を得ること,を目標にします。

授業外の学習

特に必要ありませんが,日ごろのテレビ放送や動画配信の視聴,Webブラウジング(閲覧),SNS利用など各種のメディア,コミュニケーション・ツールとの接触の中から,疑問に思うことや考えることを,授業に臨むうえでの問題意識としてほしいと思います。 今日のメディア自体がそうであるように,この授業もできるだけ双方向のコミュニケーションを図りたいと考えています。受講する学生のみなさんからの質問や意見は大歓迎です。しかし,それが皆さんの負担になることはけっして本意ではありません。いまのところ,授業最終回で理解度確認と評価のための授業内試験を行う以外に途中の授業で課題・レポートの提出を課す予定はありませんが,授業中やリアクションペーパーで質問や意見が多く表明されることを期待しています。

所要時間: 特に定めませんが,授業1 回あたり190 分以上が目安となります(日常の放送や動画の視聴,Web/SNS利用もこの授業の「学習」といえます)

スケジュール

  1. 第1回:プロローグ/放送とインターネットの関係〜全体オリエンテーション〜 この授業のねらいとするところ=「放送」と「インターネット」が,敵対から相補・協調に向かっていった経緯や,放送・インターネットそれぞれの特徴や問題点の所在,デジタル・ビジネスやデジタル社会のダイナミックな動向やその課題など,この授業で扱う全体像=を俯瞰的に概説します。 *なお,2回め以降は,概ね下記のようなテーマ設定・順序で授業を進めていきますが,できるだけデジタル・メディア業界やインターネット・サービスの最新のニュースやトレンドを反映したいと考えていますので,場合によってはテーマが複数回にわたったり,統合・分散したり,順序が前後することもありえます。あらかじめご了承ください。
  2. 第2回:「放送」が視聴者まで届けられる仕組みと,そのことに起因する意義や価値,そして 「放送」がそのシステム上,抱える課題について。
  3. 第3回:「インターネット」の基本原理と,インターネットのコンテンツやサービスがユーザーまで届けられる仕組み。その価値,放送との差異,課題について。
  4. 第4回:そもそも「デジタル」とは何か?〜基本的な仕組み,音楽・写真・動画など身近なデジタル機器やサービスの背景と今後のデジタル社会の進化のありようについて〜
  5. 第5回:放送の高度化,デジタル化の意義や4K・8K放送などデジタル時代の放送メディアの可能性と課題について。 高付加価値コンテンツの制作と流通,コンテンツの囲い込み,(スポーツ等の)放送権の高騰など,デジタル化による様々な波及効果・影響,課題についても触れていきます。
  6. 第6回:デジタル技術やインターネット技術の活用で可能になった映像表現の高度化と多様化について。 新しい映像演出やコンテンツ表現の実例を,その背景となっている事情とともに,映像で紹介します。
  7. 第7回:AI(人工知能)・IoT(Internet of Things:あらゆるものがインターネットにつながること)時代のメディアのあり方について。 Exponential(指数級数的)な技術の進化の中で,変わる(変えるべき)役割,変わらない(変えてはいけない)役割は何か。
  8. 第8回:デジタル・プラットフォームの功罪について。 デジタル・コミュニケーションの基盤となり映像・音楽コンテンツや先進的で多様なサービスの提供で中核的な役割を果たしているGAFA=Google, Apple, Facebook(*2021年〜:Meta), Amazon=やNetflix, X(旧Twitter)など「プラットフォーム」といわれる存在(事業体)によるサービスの意義・ベネフィット,成長の背景,顕在化する課題など。
  9. 第9回:インターネット社会の課題1〜個人情報や知的財産権の保護と活用〜 社会基盤としてのインターネットに求められる「安心」・「安全」。 インターネットのエシカル・ ユース(善用)に向けた国際的な議論の現状と課題。
  10. 第10回:インターネット社会の課題2〜サイバーセキュリティ〜 インターネット・ベースの社会システムの進化とその課題。とくに,誰もが被害者に,そして(意図しないままに)加害者にもなりうる身近なサイバーセキュリティの現状と課題について。
  11. 第11回:インターネット社会の課題3〜健全な情報空間をどう確保していくか〜 誰もが発信者になり,膨大な情報が飛び交って,一見“豊か”であるかのように見える現代の情報環境の中で,情報の「信頼性」,「質」,「多様性」をどう担保し,どのように「分断・対立」を回避し抑制していくのか。なぜフェイクニュースやフィルターバブルが起きるのか?2024年の米大統領選などで起きることを実例に,SNS(ソーシャル・メディア)社会の光と影,功罪を考えます。
  12. 第12回:欧米テレビ業界のダイナミックな変化 GAFAなどデジタル・プラットフォームの台頭で守勢に立たされてきたアメリカやイギリスの伝統的テレビメディアは積極的にデジタル技術を活用した新サービスを立ち上げたりメディア企業どうしの合従連衡や事業再編を進めるなど,攻めの姿勢を見せている。欧米テレビの「現在地」から何が見えてくるのか?どんな教訓が得られるのか?
  13. 第13回:どうする?どうなる?日本の放送メディア。 放送番組のインターネット配信の拡充など,日本のテレビ業界もようやくネット対応に本腰を入れ始めたかに見える。果たしてプレゼンスを維持,拡大していくことはできるのか?課題や死角はないのか?放送とインターネットの20年あまりの攻防と最新の状況を踏まえ,今後のテレビメディアの在り方を考える。
  14. 第14回:(授業内試験) *授業時間の冒頭で課題(設問)を提示し,授業時間内で回答を提出していただきます。具体的なやり方,特別な事情がある場合の対応などは(12月初旬ころに)授業の中でお知らせします。

教科書

教科書は指定しません。参考文献については授業内でお知らせします。

    参考書

    • 参考文献,参考資料については授業内でお知らせします。

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