メディアと文化IIa(コミュニケーションと技術)
文学部 - 新聞学科
HJN67500
コース情報
担当教員: 仁藤 雅夫
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 火2
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
リアクションペーパー
レポート
詳細情報
概要
人工衛星とデジタル技術を使って,地上波放送にはない多様な放送の実現を目指した有料多チャンネル放送を中心に,ベースとなる技術,制度的対応,事業形態,競合状況,多チャンネル放送ならではのコンテンツ,視聴者の視聴動向,直面する課題などを学習し,動画配信サービスが大きく台頭する中での多様性のある放送の在り方を探求していく。 多チャンネル放送(スカパー)の事業企画段階から携わってきた講師(仁藤)自身の経験をもとに,市場ゼロからの事業立ち上げや生き残りをかけた激しい競争など企業の悪戦苦闘も紹介します。 授業後半では,サブスクリプション・ビジネスの特徴や主要なパラメータについて解説し,サブスクビジネスへの理解を深めます。 質問や意見,知りたいことなどを把握するための授業後にリアクションペーパーを提出していただき,次週の授業時に質問への回答や追加の説明などを行っていきます。
目標
小さいながらも一つの新たな放送メディアである「有料多チャンネル放送」がどのように構想され,実現にたどり着き,そして競争にさらされていったか,現在どのような課題に直面しているかを事業の現場の視点で見ることによって,ビジネスとしてのメディアの実態を理解すること。 巨大資本やグローバルに事業展開する企業による動画配信サービスが益々拡大して可処分時間を奪っていくなか,多様性のある放送の今後の姿を考える視座を得ること。
授業外の学習
第10回授業の際にレポートの課題を提示し,第13回の授業時にレポートを出していただく予定です。 また,それぞれの授業の最後にその授業に関連した簡単なクイズを出すことがありますので,次週までに自分なりの答えを考えてみてください。
所要時間: 190分
スケジュール
- (以下は予定であり,授業の進捗状況により各テーマの回数や順序は変更することがありえます) 「イントロダクションと衛星について」 イントロダクションとして授業の狙いや全体像。 多チャンネル放送の主要な伝送媒体となる衛星について,衛星通信のしくみや歴史,特徴,利用例など。
- 「通信自由化と民間衛星通信ビジネスの苦難のスタート」 競争政策導入のベースとなった「通信の自由化」について。 その狙いと新たに参入した通信事業者の歩んだ道筋を概観。特に日本初の民間衛星通信事業の過酷なスタート。
- 「映像のデジタル化とプラットフォーム」 デジタル化の意味と意義。プラットフォームという業態と基本的な機能と設備。プラットフォームと二面性市場。放送制度に関する郵政省(当時)との大議論。
- 「デジタル多チャンネル放送の起業(1)」 現存する当時の「企画書」のなかから構想段階での市場調査と需要予測のしかた,需要予測は当たったのか? デジタル化の関する郵政省(当時)のスタンスとメーカーや地上波放送局の反応。
- 「デジタル多チャンネル放送の起業(2)」 パーフェクTVの事業化決定から苦難の連続だった事業立ち上げ。 初期のチャンネルラインナップで見るコンテンツの多様性。直ちに強力なライバル登場。
- 「プラットフォームの競争と統廃合の歴史(1)」 DirecTV事業モデルの脅威。JスカイBの派手な登場。 多チャンネル放送プラットフォームの三つ巴の闘いと統合可能性の模索。スカパーの誕生。
- 「プラットフォームの競争と統廃合の歴史(2)」 DirecTVとの一騎打ちと加入者統合交渉の実態。DirecTVの日本撤退。 新たな衛星軌道位置で繰り返された競争と統合。
- 「多チャンネル放送のコンテンツ(大型コンテンツ)」 プラットフォームが獲得に関与した大型コンテンツ。 セリエA,FIFA日韓W杯,南アW杯,Jリーグ,パラスポーツなど多チャンネルならではのチャレンジ。
- 「多チャンネル放送のコンテンツ(オリジナルコンテンツ)」 放送事業者のオリジナルコンテンツ制作の動向と衛星放送協会「オリジナル番組アワード」受賞作品の紹介し,多チャンネル放送のオリジナルコンテンツに触れる。
- 「衛星放送の現状と課題」および春学期のレポートの課題提示 日本の衛星放送の全体像と現況,および抱えている課題を総務省資料や多チャンネル放送研究所の報告書などを参照しつつ解説。 春学期のレポートの課題を提示。
- 「プラットフォーム事業と衛星事業の垂直統合」 通信と放送の接近。巨大な通信事業と背中合わせの脅威。 スカパーとJSATの垂直統合の狙い。その後大きくなった「宇宙事業」という柱。
- 「サブスクリプション・ビジネス」 サブスクビジネスの特徴やその時代的背景。サブスクモデルの主要なパラメータ。 サブスクビジネスの本質とユニークなサブスクビジネスの例。成功例や失敗例。
- 「絶滅した放送サービス」この回に授業アンケートを実施 デジタル多チャンネル放送の誕生から四半世紀。この四半世紀で現れては消えていった様々な放送サービスのチャレンジと挫折。その失敗の原因は? 今は亡き放送を悼む。
- 「レポートの講評と春学期の総括」 提出していただいたレポートにおける様々な意見の共有と全体講評。 春学期の総括。
- 第10回の授業で提示されたレポート課題に対し,自分なりの考えをまとめて第13回授業の際に提出。第14回授業で発表できる準備をしておく。
教科書
テキストは指定しません。
参考書
書籍情報はありません。