時事問題研究特殊IIa(国際)
文学部 - 新聞学科
HJN53800
コース情報
担当教員: 澤田 克己
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 水1
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
授業参加
リアクションペーパー
レポート
その他
授業参加に関する評価では,グループごとのプレゼンテーションを主とするが,他グループのプレゼンテーションに対する質問や意見などの表明も重視する。
詳細情報
概要
現代社会で人を動かす大きな力として注目されるのがナラティブである。日本語で「語り」や「物語」と訳されたり,「ストーリー」と言い換えられたりもする。私たちはナラティブという形式で世界を認識し,自分や他者,それぞれの関係を定義している。 ナラティブは唯一絶対のものではなく,個々人やそれぞれの集団が各々のストーリーを語り,それに依拠して行動し,時に衝突する。メディアはそれぞれのナラティブを伝達し,時に増幅する役割を果たす。典型例がナショナリズムに関連したナラティブである。特に戦争や紛争,冷戦終結後に世界各地で起きている「記憶の戦争=歴史認識の衝突」に関する各国メディアの報道は分かりやすい例となりうる。 本講義では,ナラティブやナショナリズムとメディアの関係を取り上げる。各グループは4つのテーマのうち一つを割り当てられ,調査研究した結果を授業でプレゼンテーションする。準備にあたっては,テーマとなっている事象が各国のメディアでどのように語られているのか,なるべく多くの視点を集める。特定のナラティブがある社会で支配的とみなせることもあれば,多様なナラティブが並立する場合もある。それを勘案したうえで,それぞれのナラティブはどういう歴史・社会的な背景から出てくるのかを探求する。他の受講者との質疑応答の時間も取り,教員による補足と合わせて理解を深められるようにする。 教員は,朝鮮半島情勢や日韓関係をはじめとした国際報道に20年以上携わってきた新聞記者としての取材経験や分析に基づいて講義を進める
目標
人間の感情を強く揺さぶる力を持つナラティブの特性を理解し,それに躍らされて思考停止に陥ることのないようにするリテラシーを養う。
授業外の学習
普段から意識して複数のメディア報道に接するよう努め,複眼的な思考力を養う。関心のあるテーマに関する新聞各紙の社説を比較・検討することを勧める。 予習:授業で取り上げるテーマに関し,多様な視点から取り上げたメディア報道や各種論考を比べて読む。それぞれで異なっている点と共通している点を整理し,そうした違いや共通点がなぜ出てくるかを書き出す。 復習:講義やプレゼンテーションの内容を踏まえ,予習として行った整理を改めて見直し,修正を加える。
所要時間: 190分
スケジュール
- ガイダンス(授業の進め方とグループ別に割り振られる4つのテーマについてのおおまかな説明,教員の自己紹介)
- ナラティブとは何か
- 犠牲者意識ナショナリズムと集合的記憶
- パブリック・ディプロマシーと認知戦
- ナショナリズムとメディア
- ウクライナ戦争のナラティブ(1) 4グループによるプレゼンテーション
- ウクライナ戦争のナラティブ(2) 発表に対する質疑応答と教員による補足
- ガザ攻撃を巡るナラティブ(1) 4グループによるプレゼンテーション
- ガザ攻撃を巡るナラティブ(2) 発表に対する質疑応答と教員による補足
- 戦狼外交と歴史戦(1) 4グループによるプレゼンテーション
- 戦狼外交と歴史戦(2) 発表に対する質疑応答と教員による補足
- 嫌韓と反日のナラティブ(1) 4グループによるプレゼンテーション
- 嫌韓と反日のナラティブ(2) 発表に対する質疑応答と教員による補足
- 総括
教科書
特に指定しない。 事前に読むべき資料があれば,そのつど指定する。
参考書
人を動かすナラティブ
著者: 大治朋子
出版社: 毎日新聞出版・2023年
犠牲者意識ナショナリズム
著者: 林志弦(澤田克己訳)
出版社: 東洋経済新報社・2022年