古典文学史D
文学部 - 国文学科
HJL55600
コース情報
担当教員: 津田 眞弓
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 火2
形式: 対面授業
レベル: 100
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
授業参加
リアクションペーパー
レポート
小テスト等
その他
くずし字学習アプリで,江戸時代の文字を学ぶ
詳細情報
概要
講義形式。 この授業の目的は,二つあります。 一つは,江戸の絵本を読み,古典文芸を学ぶ意味を考えることです。 テーマとなる「草双紙」は,江戸時代の江戸で,浮世絵と兄弟のように大量に制作されていた本で,文章が現在の日本語に近く最も読みやすい古典の一つです。元来は子供向けのジャンルでしたが,次第に知識層の読者も虜にし,読者層の広さでは江戸時代有数のジャンルといえましょう。従って,文にも絵にも江戸時代の世相・風俗・教養がたくさん盛り込まれていて,江戸時代を知るのみならず,日本人がかつてあたりまえに持っていた古典文学の知識を知ることができます。 二つには,電気もガスもプラスチックもない世界で生きていた人々の暮らしを垣間見ることです。洋服より遥かに再生が簡単な着物をきて,いろいろなものがめぐる循環社会に暮らす人々。幕末に来日した西洋人は,自分たちより素朴な生活をしている人々の幸福そうな様子を,驚きを持って様々書き残しています。草双紙は,そういう時代の日本人の記憶に満ちています。近代国家が作られる前の日本人はどういう人々だったのでしょうか? この講義では,こうした知識を学ぶと共に,絵巻物からマンガに至る,絵と文字が相互に響き合う日本文芸が持つ特質を理解します。ぜひ,17世紀から始まった紙面を自由にデザインする整版印刷の粋を極めた視覚メディアとしてのおもしろさを味わってください。 授業では,このジャンルの発生から18世紀末(天明期)を扱います。
目標
○大学生にふさわしいレポートの書き方を行う。 ○江戸文芸研究の基礎的な参考文献を理解し活用する。 ○江戸時代の古典籍・絵画・史料の情報収集,またその見方,取り扱いについて学ぶ。 ○江戸時代の衣食住について,基本的な知識を得る。
授業外の学習
○授業の復習 ○授業で取り扱った江戸時代の作品や関連作品・史料の調査 *さまざまな所蔵機関のインターネット上の古典籍公開画像より,学習・研究に必要な情報を取得して活用する *国会図書館,都立中央図書館へ行き,様々な情報を得る ○古地図を持って四谷を歩く ○江戸時代に通用した文字を読む ○江戸時代に成立した芸能の鑑賞
所要時間: 190分
スケジュール
- 授業について,学習で使う参考文献・アプリ・データベースについて *以下の計画は予定であり,授業の進捗によって変更することがある。
- 日本近世文学史概観――江戸時代に形成されるジャンルの確認,雅俗文学,文学と芸能
- 浮世絵史概観――草双紙と兄弟のように作られたメディアと,そこに描かれるもの
- 草双紙とは何か――草双紙を読むという行為:絵と文の表現法/絵巻・マンガと比較
- 世紀の草双紙――「赤本」の世界:桃太郞,猿蟹合戦,東海道,吉原,疱瘡(感染症)など
- 世紀前半の草双紙——「黒本」の世界:古典文学の吹き寄せ・一代記など
- 世紀中葉の草双紙——「黒本」の世界:敵討ち,男色,温泉縁起
- 世紀後半の草双紙——「黒本」から「黄表紙」へ:文人達の遊びとして 談義本・洒落本・狂歌・諸芸
- 世紀後半の草双紙——「黄表紙」の世界:うどんそば,お菓子
- 世紀後半の草双紙——「黄表紙」の世界:もてたい男たち,吉原,遊女
- 世紀後半の草双紙——「黄表紙」の世界:神と仏
- 「黄表紙」にみるジャンル意識——学問・文芸流行の反映として『草双紙年代記』・『御存商売物』・『稗史憶測年代記』ほか
- くずし字で草双紙を読む——翻刻・語釈・校訂の基本,くずし字アプリ
- 学習のまとめ・ふりかえり
- くずし字に関する課題についての報告
教科書
草双紙については電子ファイル等を配布します。
逝きし世の面影
著者: 渡辺京二
出版社: 平凡社,2005年
新日本古典文学大系 草双紙集
著者: 木村八重子ほか
出版社: 岩波書店,1997年
日本古典文学大系 59 黄表紙洒落本集
著者: 水野稔
出版社: 岩波書店,1958年
参考書
このほかのものは,授業内で適宜指示します。
定本武江年表 上・中・下
著者: 斎藤月岑/今井金吾
出版社: ちくま学芸文庫,2003〜2004
絵でよむ江戸のくらし風俗大事典
著者: 棚橋正博ほか
出版社: 柏書房,2004年
原色浮世絵大百科事典
著者: 日本浮世絵協会
出版社: 大修館書店,1980年